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優しさのあふれる病院をめざして

運営・経営方針

1.運営・経営方針

 日本赤十字社は女性の福利厚生に関して、積極的に取り組んでいることを受け、深谷赤十字病院でも就業制度を見直すなどの改革を重ねた結果、埼玉県で制定している「多様な働き方実践企業認定制度」でプラチナプラスの事業所に選ばれた。プラチナプラスに選ばれたのは3000社近い事業所の中で4事業所しかなかったという。また、深谷市からも「深谷市女性活躍等推進事業所認証制度」の第1回の認定を受けている。

 「この取り組みは院内保育所の再開がきっかけだったんです。院内で統計をとったところ、院内保育所はそこまでニーズがなかったのですが、やはり必要だろうということで再開しました。この結果、育児休暇からの早期復帰が促進しました。日本赤十字社全体が労務環境改善に積極的です。産休、育休はもちろん、時短勤務制度もありますし、週に3日の勤務でも常勤扱いになります。」

 伊藤院長の就任以来、大きな方針転換があった。

 「以前はコストを抑えていたのですが、ちょうど医療機器が古くなっていたこともあって、私は方針転換を図りました。高コスト、高稼働です。モノを買い、人も増やすけれども収益を上げることを目指しました。分母も分子も大きくしたわけです。100人以上のスタッフが増えましたが、10億円以上の収益増となっています。人やモノへの投資をしないと、医師のモチベーションが下がり、医療レベルを維持できなくなります。分相応かどうかは分かりませんが、地域の唯一の公的病院としての信頼を集めるためには必要なものだと思っています。」

 働き方改革についても伺った。

 「本来は働く環境の中でのストレス因子による負荷を排除して、改善していくことだったはずの働き方改革がオフの時間にゲームしているというのでは休み方改革だろうという気持ちもあります(笑)。医師の場合は裁量権もプライドもあるので、そこを規制するのは難しいですね。働き方改革のために業務が手薄にならないようにしたいです。当院では6年ほど前から薬剤師による定期処方代行入力をしたり、医師以外の多職種、他職種を活用したワークシェアリングやタスクシフティングを行っており、医師の時間外労働時間は減っています。外科の負荷因子は緊急手術や呼び出しですが、内科の負荷因子は医師数の関係からほかの疾患を担当することなんですね。そこで多くの科をローテートする初期研修医が活躍できれば、各科の敷居が低くなり、相互協力が進んで、全科の医師の負担が軽減されると考えています。」

 ほかに運営や経営の方針について、伺ってみた。

 「救命救急センターには救急車が1台も来ない日もあれば、20台来る日もありますが、どのような日であっても必要とされるスタッフ数は変わりません。しかし、地域の公的病院としての責務を果たすためには不採算部門も担っていかなくてはいけないのです。私は職員に対し、利潤追求が第一だとは言っていません。公的病院として、様々なニーズに対応していきます。最近は消費税の影響もあって経費がかさみ、厳しい状況ですが、単価や稼働率は上がっています。一般企業では選択と集中を進めていますが、燻っていた部門が伸びることもありますし、多様性がないと潰れる時代です。医療にはその原理は持ち込めません。ただし、犬に噛まれても当院で診るのかといった問題はあります(笑)。全ての疾患を当院で診ていたら、地域全体の一次救急、二次救急のレベルが低下しますし、若手医師が育たなくなります。民間の小規模病院でもヘルニアや虫垂炎などの手術ができる体制を地域で作ることが求められます。当院としてはどこを自前でしていくのかを考えないといけません。人材のアウトソーシングにも消費税がかかります。消費税分を上回る収益を上げられるように、これからも経営努力を行っていきます。」
 

2.地域連携

 深谷赤十字病院では地域連携の取り組みとして、年に1回、地域連携の会を開催している。

 「地域医療支援病院の要件に紹介率65%があります。さらに、紹介状なしで来院される方には5500円の初診料がかかるようになったので、一時は来院数が減ったのです。しかし、当院としては変化球を使わず、開業医の先生方と顔の見える関係を作っていきたいと思っています。」

 地域の親子を病院に招く親子ふれあい病院体験も好評だ。

 「地域の子どもさんたちが将来、当院のサポーターになってくれるかもしれませんし、スタッフになってくれるかもしれません。赤十字に勤めたいなと思ってくれる人が出てくるといいですね。未来への投資は早く始めるに越したことはありませんし、これからも続けていきたいイベントです。赤十字の院長は誰もが裁量権を持って、それぞれ工夫しているので勉強になるし、意識も高まります。私もトップとして旗を振っていきますよ(笑)。」
 

3.今後の展開

 医療は地域の人口やニーズにディペンダントする産業です。当院ではニーズがどこにあるのか、時代の変化を常に見極めてきました。その結果がダウンサイジングであり、緩和ケア病棟の新設でした。この地域は今後15年で1割の人口が減ると言われています。隣の熊谷市も私が当院に着任した2005年には23万人近くの人口がありましたが、今は20万人を切っています。人口推計は当たるものなので、それをもとにプランを思い描いていかなくてはいけません。地域の人口が高齢化していきますので、療養施設は増えるでしょうが、当院はあくまでも高度急性期医療に特化した病院でありたいです。埼玉県からも高度急性期医療施設として期待されていますので、適切なダウンサイジングを行いつつ、人やモノを確保し、サスティナビリティのある病院を目指して、政策医療をはじめとする医療を行っていきます。

2020.03.01 掲載 (C)LinkStaff

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