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愛の心を高め、『愛の病院』を実践

病院の特徴

1.総合診療科

 総合診療科は内科系の救急診療などに対応している。2018年度の救急車受け入れ台数は10564台と1万台を超え、そのうち4410台が総合診療科となっている。

 「高齢化が進み、合併症のある高齢の患者さんが非常に増えてきました。例えば、発熱や肺炎で救急に来られた方がもともと心臓や腎臓機能が悪いというように、どこの診療科が主体なのか区別がつかない場合があります。熱が出たといっても、感染症もあれば、悪性リンパ腫やリウマチということもあり、診断がつかないことが多くあります。そのため、人間を全体として診ないといけないということで、総合診療科が必要なのです。当院の総合診療科は近隣の開業医の先生方からも好評をいただいています。」

 武蔵野赤十字病院の総合診療科の礎となったのは東京医科歯科大学第二内科(当時)の武内重五郎教授の教えだという。

 「私も第二内科出身で、武内教授に内科を徹底的に叩き込まれました。武内教授の外来につくと、貧血を調べて、黄疸を調べて、リンパ腺を触って、胸の音を聴いてととにかく早いんです。書いて書いてと言われるので、必死で書いていました。教授回診ではばーっと病棟を回ったあとでケースカンファレンスがあります。そこでは要点を短く言わないといけません。ここで全身くまなく、かつ端的に言う訓練ができました。『心電図はどうだ』と言われて間違っていても怒られません。『次、次』と言われたら、間違っていたということです(笑)。当院でも時間通りに会議やカンファレンスが始まりますから、この文化は引き継がれていますね。武内教授の第二内科では2年目まで内科全体を診させて、3年目でようやく消化器、循環器、呼吸器、内分泌といった専門に進ませるんです。このような教育は当時としては早い方で、今となっては内科全体を診た経験が活きています。それが当院の強みである総合診療に繋がっていますし、総合診療ができる人材がいるのは大きいです。現在は若手医師の教育の場にもなっており、特に後期研修で総合診療を学ぶことで、鑑別診断や感染症など、内科医としての基礎を習得してほしいと思っています。」
 

2.消化器科

 武蔵野赤十字病院は東京都の肝疾患診療連携拠点病院に指定されているが、肝臓の診療を最前線で引っ張ってきたのが泉院長である。消化器科では一般的な診療はもちろん、肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、肝がん、肝硬変合併症などに対する新規治療薬の開発試験も多く取り組んでいるほか、都内の医療機関と連携したうえで肝臓移植も行っている。

 「私が当院に来た頃はまだC型肝炎が見つかる前のことでしたが、とにかく肝硬変や肝臓がんが多かったんです。その原因も分からず、漢方薬とミノファーゲンしかないところに重症な患者さんが大勢来られるのは何かがきっと見つかるのではと思い、肝臓に久しく取り組んできました。もちろん救急病院ですから、毎晩のように吐血や下血の患者さん、黄疸の患者さんがいらっしゃるので大変でしたが、そのような中で私は医師の仕事は臨床医として興味のあることがないと続かないものだと考えてきました。忙しいだけでは続かないし、潰れてしまいます。そこへC型肝炎が見つかり、今まで分からなかったものがほとんどC型肝炎だと分かり、インターフェロン治療ができるようになったのです。それからインターフェロン治療で治る人が増えていきました。一方で、肝臓がんも手術ができなかったら1年以内に亡くなる人が多く、1年生存する人は2割だったんです。そこで始めたのがラジオ波焼灼術です。これでがんが綺麗に焼けるので、治せたのだという充実感を得ました。このときに突然アメリカからライブデモをしろというファクシミリが来たんです。メールがない時代だから、ファクシミリなんですよ。当時の院長も背中を押してくれたので、アメリカでの1例目となるライブデモを行いました。」

 ここから消化器科には若手医師が集まるようになったのだという。

 「ラジオ波焼灼術を勉強したいという、モチベーションの高い医師が次々に来てくれたことが私にとって大きな経験になりました。人は楽しく働けるものがあれば一生懸命働ける、給料が安いというのは問題ではないと身をもって体感しました。給料を少し上げるのではなく、一流の医療をして、学会があったり、論文を書くことが大事です。C型肝炎やラジオ波焼灼術は面白くて幸せなことでしたが、若手とそれを分かち合えたことが良かったです。若手が『自分はこう思う』と言ったことに積極的に取り組ませ、『どこかに勉強に行きたい』と言ったら、行かせていました。若手の力が結集したら、ものすごく大きなものになるのだと味わえたことが病院運営にも活かせています。若手のやる気を引き出すと、救急などの専門外のことも喜んで診てくれるようになります。彼らは時間を無駄にせず、切磋琢磨して頑張っていました。肝臓以外でも胃がんの内視鏡治療は最初から行っていましたし、大腸も同様です。ESDも多いですね。研究や学会発表に関しては、肝臓の論文が続々と出ていますので、循環器科や呼吸器科にも良い影響を及ぼしています。」
 

3.循環器科

 15人の常勤医師がおり、虚血性心疾患については夜間や休日でも対応しているほか、頻脈性不整脈にはカテーテル心筋焼灼術を積極的に行っている。

 「冠動脈をステントで広げると、ずっと抗凝固剤を飲まないといけないので、出血のリスクが伴い、がんになったときに困るわけですが、当院はステントを入れるかわりにレーザーを使って広げています。また、ダイヤモンドバックも使用し、動脈硬化でコレステロールがくっついたところを削り取っていますので、ステントを入れないで済むのです。これで抗凝固剤を飲まなくてよくなりました。循環器科ではこのように新しい治療を行っていますので、当院の大きな特徴になっています。初期研修を終えたばかりの医師もよく来てくれています。」
 

4.外科

 武蔵野赤十字病院は地域がん診療連携拠点病院であり、北多摩地域の消化管、肝胆膵のがん診療の中心的役割を果たしている。また、救命救急センターでもあるため、外科では24時間体制で腹部救急疾患の治療に当たっている。外科の年間手術件数は約1000件で、うち胃がん、大腸がん、肝・胆・膵がん患者さんの手術が約35%を占めている。

 「2019年2月にダ・ヴィンチを導入しました。日本の第一人者である東京医科歯科大学の絹笠祐介教授にご指導をいただき、直腸がんの手術を行っています。直腸の手術をすると神経機能が麻痺したり、人工肛門にならざるをえなかったりしますが、これが非常に少なくなったので、患者さんにはメリットが大きいです。前立腺、胃、婦人科系の腫瘍などもダ・ヴィンチを使っています。当院のがんの手術数は非常に多く、大学病院を入れても、東京で5位ぐらいではないでしょうか。」
 

5.地域周産期母子医療センター

 地域周産期母子医療センターではハイリスクの妊婦搬送受け入れ体制を持ち、母体の救命救急への対応を行っている。医師と助産師が妊娠から出産、育児までをケアし、母子ともに安全で快適な環境を整備している。

 「最近は分娩年齢が上がっており、35歳以上の出産が40%を占めています。高齢であっても出産はいいことですし、特に中央線沿線の三鷹や武蔵小金井では分娩件数が増加しているんです。しかし、分娩年齢が上昇すると、合併症が多くなり、ハイリスクとなります。大出血や不整脈、腎臓狭窄があると、個人の診療所では対応が難しいので、病院での分娩が望まれます。特に無痛分娩での大出血は大変ですので、血液型が判明する前に輸血できるO型の血液を常に置いておかなくてはいけません。緊急の『グレードA』という宣言が出ると、そこから麻酔して帝王切開して20分以内に赤ちゃんを出します。麻酔科医、内科医、救急医が集まり、子どもを出して、出たあとは新生児科が診ます。どんなことが起こってもいいように、血液型や麻酔を準備するためのシミュレーション訓練を普段から行っています。後期研修でも人気がありますね。産婦人科では腹腔鏡手術も多いですし、ゲノム医療にも関心が高まっています。」

6.救命救急センター

 武蔵野赤十字病院は三次救急施設であり、救命救急センターには救命救急の専従医が10人ほど在籍し、24時間体制で診療にあたっている。2017年度の救命救急センター総入院患者数は1431人で、平均在室日数は6.9日となっている。

 「昔は交通事故による多重外傷が多かったのですが、シートベルト着用の徹底とエアバッグの装備が進んだ結果、今は減っています。現在は内臓疾患での重症が圧倒的に多いです。10人の専従医で24時間体制での三次救急、集中治療室に30床、ICU、HCUもあるのはきついのですが、よくやってくれています。二次救急についてはほかの内科医や診療科で診ていますが、何かあったら救命救急が必ず応援に来てくれるというのは非常に心強いですね。当院は皆の仲がいいことが一番の売りですから、『全科の垣根を低くして、皆で診ようよ』という雰囲気です。赤十字の病院として、災害救護にも一生懸命取り組んでいます。」

2019.10.01 掲載 (C)LinkStaff

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