医師の仕事・働き方・キャリアプランについて

日本社会を支える仕事!産業医について詳しく解説

労働安全衛生法が改正され2015年12月からストレスチェック制度がスタートしたことで、あらためて産業医の存在がクローズアップされています。長時間労働や過労死が社会問題となり、ストレスによるメンタルヘルスの不調を抱える人も増えています。こうしたなか企業内の労働環境の安全性や衛生面の改善にあたる産業医の必要性は、いっそう高まっているといえるでしょう。

産業医とはどんな医師のことを指すのか?

産業医とはどんな医師のことを指すのか?

産業医とは、事業場において労働者の健康管理に関しプロの立場から指導や助言を行う医師のことです。病院で患者を診察する一般の医師と違い、企業内で病気ではない労働者を対象に予防医療に努めます。治療にあたることはなく、労働災害を未然に防ぐことが使命となります。そのため医療知識だけでなく、関係する法律や労務内容に関わる知識、労働者の相談に応じるためのコミュニケーション能力や適切な改善を図るためのコンサルタント能力などが求められます。

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産業医の主な仕事と毎日の過ごし方

産業医には大きく分けて専属と嘱託の2つの形態があります。労働安全衛生法によって、事業場の規模に応じて産業医の選任が義務付けられています。常駐の従業員数1000人以上の事業場には専属産業医を置く必要がありますが、従業員数50人~1000人未満の場合なら嘱託産業医で良いことになっています。
専属産業医の場合は企業の正社員となるため、1社員として企業の規定に従って就労することになるでしょう。
一方嘱託産業医の場合は開業医などが兼業であたっているケースが少なくありません。また複数の企業と契約を結んでいる産業医もいます。そのような場合は1日のうちにいくつかの事業場を回りながら、職場巡視や現場パトロール、安全衛生委員会への出席や個人面談などをこなしていくことになるのです。専属産業医は人気が高く都市部のオフィス企業の産業医は狭き門です。一方で地方の大規模工場などの求人は比較的多くなっています。

希望者はどうやったら産業医になれるの?

産業医になる方法は1つではありませんが、当然医師であることが前提となります。日本医師会認定産業医制度に基づく基礎研修を受講する方法では、必要な単位を取れば「認定産業医」の資格が得られ産業医の要件を満たすことが可能です。また、産業医学大学で必要な課程を修了して卒業するという方法や労働衛生コンサルタント試験に合格する方法などもあります。認定産業医の資格は有効期間が5年で産業医学生涯研修を受講して資格を維持することになります。
他の医師と同じく産業医にも専門医制度があります。これまでは日本産業衛生学会が資格の認定を行っていましたが、国が進める専門医制度の改正に伴って産業医の専門医についても第3者機関である一般社団法人日本専門医機構が認定を行うことになりました。専門医の資格取得は難易度が高めではあるものの、就業や企業の信頼向上に非常に役立つでしょう。新しい専門医制度には流動的な部分も残っており、今後の展開から目が離せません。

産業医は企業の健康を守る重要な仕事

労働者不足が深刻化する時代を迎え、労働者の健康を守ることはこれまで以上に重要になっています。特に労働者のメンタルヘルスの不調への対処は急務です。ストレスチェック制度が義務付けられたことで産業医のニーズはこれまで以上に高まり、特に精神科系の産業医を求める企業が増加しています。
産業医の活躍の場はストレスチェックや健康診断の実施、作業場の巡視や安全衛生委員会への出席などにとどまらず、人材採用や退職者マネジメント、労務トラブルの解決など広い分野をカバーしており、たいへんやりがいのある仕事です。ときには労働者やその家族の人生に大きく関わることもあり、対処を誤れば大問題に発展するリスクも低くありません。冷静な判断力とコミュニケーション能力を持ちバランス感覚に優れた産業医を確保することは、企業にとって重要な課題となっているのです。まさに産業医は企業の健康を守る大切な仕事といえるでしょう。

2022.6.22 掲載
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