医師の仕事・働き方・キャリアプランについて

医師会の役割と加入する意義とは

診療報酬改定のニュースなどでも出てくるため、一般の人でも日本医師会という名前を聞いたことがあるかもしれません。医師であればほとんどの方が知っているでしょう。しかし、日本医師会に加入している人は全医師の6割ほどです。医師会に加入していない方は、医師会の役割と加入意義をきちんと理解した上で加入するかしないかをもう一度検討してみましょう。

医師会の歴史と役割

医師会の歴史と役割

医師会は医師の職能団体で「医道の高揚、医学及び医術の発達並びに公衆衛生の向上を図り、社会福祉を増進すること」を目的としています。医師資格を持っている人が任意で加入できます。日本医師会の他に、47の都道府県医師会と約920の郡市区医師会がありますが、いずれも独立した機関です。
日本医師会は、1916年に北里柴三郎博士が設立した大日本医師会が母体となっています。1919年に、医師会令公布によって道府県医師会、郡市区医師会が法的に整備され、それに伴って大日本医師会の法整備の声も強まります。そして、1923年に医師法が改正されて法定の日本医師会が誕生しました。1942年に第二次世界大戦の影響で一度解散し、翌年の1943年に新生日本医師会が設立されます。戦後、GHQによる戦争協力者の公職追放が医師会の役員にも適用されて役員が大きく入れ替わったことをきっかけに、1947年に新生社団法人日本医師会となりました。2013年には公益社団法人に認定されています。
医師会の社会的な役割は、日本医師会であれば日本の医療・福祉・保険を推進させること、国際的な医師会に参加して世界の医療団体との関係を深めることなど、都道府県医師会や郡市区医師会ならその地域の医療を発展させること、課題の解決などです。

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日本医師会と地方の医師会の活動内容の違い

日本医師会と地方の医師会の活動内容の違い

日本医師会は国に対して医療政策に関わる進言をしたり、生命倫理に関する問題を解決したりと幅広い活動を行っています。都道府県医師会は医療事故への対応や行政との折衝を行い、郡市区医師会は医療の現場に立ち、予防医療や在宅医療などの地域医療発展のために活動しています。また、すべての医師会はそれぞれが独立法人なので、地域のニーズに応じて独自の判断で活動を行います。例えば、看護師不足に悩まされている地域でその地域の医師会が看護学校を設立して新たな看護師の教育に力を入れる、民間では採算が取れないような臨床検査センターといった施設を運営して医療の発展に貢献するデータを集めるなどです。
日本医師会から都道府県医師会へ、都道府県医師会から郡市区医師会へと通知が行き、その通知に従ってどの地域でも共通の活動を行う場合もあることから上位組織と下位組織に明確に分かれているように見えますが、実際の活動は各医師会の方針によって特色があるのです。この点が行政機関のような上意下達組織とは異なります。ただ、活動範囲が日本医師会は日本全体、都道府県医師会は各都道府県、郡市区医師会は各地域であることは行政機関と変わりありません。

会員区分からわかる加入の意義

会員区分からわかる加入の意義

日本医師会の会員はA(1)会員、A(2)会員(B)、A(2)会員(C)、B会員、C会員に区分されています。A(1)会員は病院や診療所の開設者・管理者・それに準ずる者、A(2)会員(C)は医師法に基づく研修医、A(2)会員(B)はA(1)会員・A(2)会員(C)以外の会員、B会員はA(2)会員(B)のうち医師賠償責任保険(以下、医賠責)に加入していない者、C会員はA(2)会員(C)のうち医賠責に加入していない者、と決められています。A(2)会員(B)、B会員はほとんどが勤務医です。A(2)会員(C)とC会員は少なく、A(1)会員とA(2)会員(B)+B会員がそれぞれ約半数を占めています。つまり、日本医師会の構成は開業医と勤務医が半々ということです。ただ、開業医と勤務医ではもちろん勤務医の方が人数が多いので、勤務医の加入割合は開業医より低いことが分かります。これは、開業医の方が医師会に所属して得られるメリットが大きいことが原因の一つです。また、会費の面から見てみるとB会員はA(2)会員(B)より年額5万4000円(医賠責の保険料分)安く、平成28年12月1日時点ではA(2)会員(B)が約3万8000人に対してB会員は約4万3000人となっています。極端な差はありませんが、勤務医は医賠責に入るメリットよりも保険料を支払うという負担を重要視している人が多いようです。
ちなみに、平成30年度からは会費が変わり、A(2)会員(B)は30歳超は1万4000円、30歳以下は4万3000円、A(2)会員(C)は1万8000円減ります。B会員とC会員の会費は減らないので保険料が減ったということです。会費の改正以前は、開業医であれば医師会に加入する意義は大きく、勤務医は会費に比べて小さいという状態でしたが、勤務医の会費が減ることによってメリットの方が大きいと感じる人が増えるかもしれません。勤務医であっても名指しで訴えられるケースが増えていることからも、加入の意義は高まっています。

2022.6.20 掲載
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