医師の仕事・働き方・キャリアプランについて

#106 大がかりな手術には欠かせない!麻酔科医の仕事や役割

麻酔科は外科手術では欠かせない重要なポジションです。麻酔科医を題材にした医療漫画なども描かれており、麻酔科に興味を持っている人も多くいるでしょう。ここでは麻酔科の通常時・手術時の仕事内容や扱う薬品、麻酔科医になるための方法などをまとめます。

大がかりな手術には欠かせない!麻酔科医の仕事や役割

麻酔科医の仕事は?どうすればなれるのか

麻酔科医の仕事は「手術中の患者への麻酔」と「手術前後の患者の診察」です。前者の詳細は次の段落でまとめます。ここでは後者について書きます。
手術前に麻酔科医は必ず患者の診察をします。交通事故などの急患ではできませんが、入院して手術する患者の場合、入院直後など早い段階から診察を続けます。患者の様子を見ながら当日に投与する麻酔薬・筋弛緩剤・降圧薬などの使用量をイメージするのです。必要を感じたら、麻酔科医が追加の検査を要求することもあります。たとえば超音波診断などですが、内科医・外科医などが必要と感じなかった検査でも、麻酔科医から見たら必要なことがあるからです。
手術が終わった後も、患者が順調に回復しているかを見守ります。特に全身麻酔をする時は患者の気管に管を挿入しますが、これによって声帯が圧迫されて喉が痛むことがよくあるので、喉の状態の経過観察も行います。その他、筋弛緩剤を投与した患者に対しては、その後遺症のしびれなどが起きていないかもチェックします。
麻酔科医になるには、まず医大を卒業して国家試験に合格し医師免許を取得します。その後、他科の医師は「初期臨床研修」で2年間あらゆる科を回りますが、麻酔科はすぐに麻酔の専門研修に入ります。2年の専門研修が終われば麻酔科標榜医になります。この後さらに3年間の研修を受けると麻酔科専門医の受験資格が得られます。この試験に合格すれば正式な麻酔科専門医となります。合計すると最短の場合は高校卒業後11年で麻酔科専門医になれるわけです。

手術時の麻酔科医の働き方について

手術時に麻酔科医がこなす役割は主に3つで「呼吸管理・循環管理・疼痛管理」です。呼吸管理は主に人口呼吸です。全身麻酔をすると患者は自分で呼吸ができなくなります。そのため人工呼吸用の管を口に挿入して、空気の出し入れを行います。管は金属の道具で前歯に強く当たるものです。義肢やぐらついている歯が抜けることもあるので、麻酔科医は細心の注意を払って挿入します。
循環管理は手術のピーク時の作業です。眠っていても患者の体には防衛本能があるため、皮膚を切られると反応します。心拍数や血圧が急激に上がるのです。この時に麻酔科医は、降圧剤などを用いて血圧を下げます。逆に下がり過ぎた時には昇圧剤を使うなど、患者の体を常に観察しながら安定状態をキープします。
疼痛管理は「患者の痛みが想定外に大きかった時」に行います。これは全身麻酔でも局所麻酔でも同じです。麻酔薬・鎮痛薬を追加するなどして患者の痛みをなくします。逆にさほど麻酔が必要ないと感じられた時には予定より投与量を減らすなど、リアルタイムの調整を行います。これら3つの管理業務を通して、麻酔科医は手術中の患者を一時も怠ることなく見守っています。

麻酔科医が取り扱う薬品いろいろ

麻酔科が取り扱う薬品は、全身麻酔・局所麻酔で分かれます。以下「標準麻酔科学 第5版」(医学書院、2006)の内容をもとにまとめます。
全身麻酔は大別して2通りで、吸入麻酔と静脈麻酔に分かれます。吸入麻酔は患者の気道経由で投与するものです。現代で広く用いられる吸入麻酔薬は「亜酸化窒素・イソフルラン・セボフルラン」などがあります。静脈麻酔薬で広く用いられるものは「プロポフォール」です。プロポフォールが広まる前は、ケタミン・チオペンタールなどが使用されていました。
局所麻酔は投与法が全身麻酔よりも多くなっています。「表面麻酔・伝達麻酔・湿潤麻酔・硬膜外麻酔・脊髄くも膜下麻酔(脊麻)」という5つの方法があります。
硬膜外麻酔・脊髄くも膜下麻酔の薬品で広く使用されるのは「ブピバカイン」です。硬膜外麻酔は「ロピバカイン」もよく使われます。その他の3つの方法では「リドカイン」が広く用いられます。

麻酔科医は手術の成功に関わることも

麻酔科医の仕事は手術の成否にも関わる重要なものです。執刀する外科医がどれだけ優秀でも、麻酔科医が患者の血圧をコントロールできなければ手術は失敗します。たとえば必要な血管切開をした時、患者が大量に出血してしまうなどのトラブルが起きるのです。逆に麻酔科医の血圧管理が完璧なら、経験の浅い若手医師なども安心して施術ができます。
麻酔科医はこのように人命にも関わるやりがいの大きな仕事です。医師免許取得後すぐに専門の研修を積めるという点で「自分の専門分野を早く極めたい」という医師にも向いているでしょう。手術では縁の下の力持ちとして力を発揮しますが、そのようなポジションが好きな人は特に、麻酔科医の道に進むことを検討してみるのもいいでしょう。

2022.11.1 更新
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