医師の仕事・働き方・キャリアプランについて

#103 責任重大な仕事…人工透析の詳細について

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日本は世界で特に人工透析の患者が多く、透析先進国・透析大国といわれています。人工透析の需要は今後も変わらず高いと見なされているため、人工透析の技術を修得したいと考えている医師もいるでしょう。ここでは人工透析の概要や必要な資格などをまとめます。

責任重大な仕事…人工透析の詳細について

人工透析の目的は?患部や症状は何か

人工透析の目的は衰えた腎臓の代わりに血液をろ過することです。血液は体をめぐる過程で老廃物を蓄積します。この老廃物をろ過して尿を作り、体の外に排出するのが腎臓の役目です。この腎臓の機能が低下した状態を腎不全といいます。腎不全は尿の異常・高血圧・むくみなどの諸症状の原因となります。特に末期は尿毒症を引き起こし、全身けいれんなどの重篤な症状につながります。
腎不全には「急性腎不全」と「慢性腎不全」の2通りがあります。急性腎不全は症状が急激に現れるため気づきやすく、適切な治療により完治しやすいのが特徴です。一方の慢性腎不全は症状が出るまでに時間がかかるため、気づいた時には完治できないレベルまで進行していることがあります。腎機能が完全に回復しない限り、その患者は人工透析に頼って生活することが必要です。慢性腎不全がさらに末期になると、人工透析でも血液をろ過しきれないことがあります。その場合には腎臓の移植手術が必要です。

人工透析に必要な機器や手順

人工透析に必要な機器は大別すると2通りで「血液透析装置」「腹膜透析装置」となります。「全国腎臓病協議会」によれば、透析患者の約97%が血液透析を受けています。そのため、人工透析で使用する機器もほとんどは「血液透析装置」になると考えてください。
血液透析装置の操作手順は、まず患者の腕に針を刺します。次にポンプで血液を吸い上げてダイアライザーに送ります。ダイアライザーでは血液の中の「老廃物・過剰な水分」を排出します。この作業のために透析液が必要なため「透析液供給装置」を使って常時補給します。ダイアライザーでのろ過が完了した血液は、再び注射針を通して患者の体に戻されます。
腹膜透析装置の操作手順は、まず患者の腹膜にカテーテルという太い管を挿入します。患者がお腹を出して、そのお腹に太い管を刺すイメージです。この管から透析液を腹膜の中に送ります。腹膜には多数の毛細血管が走っており、この血管の中の老廃物や過剰な水分を透析液が吸収します。その透析液を体外に排出すれば血液のろ過が完了します。腹膜透析は「太い管をお腹に刺す」というのがデメリットです。皮膚に跡も残りやすいですし、患者の体への負担も大きくなります。血液透析の注射針では対応できない重篤な症状で適用される療法です。

人工透析には資格がいるの?

人工透析の仕事には臨床工学技士の資格が必要です。国家試験に合格すればこの資格を取得できます。国家試験の受験資格を得るには、臨床工学技士養成課程がある4年制大学を卒業するか、短大・専門学校のいずれかで所定の課程を修了することが必要です。臨床工学技士と関連する資格には臨床検査技師、看護師、診療放射線技師があります。これらの養成校を卒業している人は、1年間専門科に通うだけで臨床工学技士の受験資格を得ることができます。
臨床工学技士の合格率は、旺文社教育情報センターが平成29年4月28日に公表したデータによれば81.9%です。前年の合格率より9.3%上がったと報告されていますが、今後もこの高い合格率が維持されるかは未知数です。大体70%~80%程度の合格率と考えるといいでしょう。医療関係の国家資格としては合格率が高い方だといえます。

人工透析の資格は医師の幅を広げる

人工透析の資格を持つと、2つの点で仕事の幅が広がります。1つは透析専門クリニックに就職・転職できることです。もう1つは腎臓科・泌尿器科の仕事に入職しやすくなることです。他の科からの転科を考えている医師にとってもプラスになります。
今後の日本は少子高齢化により「透析患者の増加に対して臨床工学技士の数が追いつかない」という問題が起こる可能性が高くなっています。医師、あるいは医師になろうとしている人は、人工透析の資格も取っておくと今後さらに社会から必要とされるでしょう。医師としてのキャリアアップを考えている人や、他の科のスキルも修得したいと考えている人には、臨床工学技士の資格取得もいい選択肢の1つといえるでしょう。

2022.7.12 更新
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