ドクター転職ショートストーリー

とある女医の転科(上)

2013年08月15日 コンサルタントH

D先生と初めてお会いしたのは平成24年の12月だった。大学医局に属されながらいくつかの外勤先で勤められていた。

医師としての経歴は、元々循環器内科として専門医まで取得し、その後透析にも興味を持ち透析の医局に入局して勤務されていた。

透析専門医を取得するための論文などはそろっていたが、試験を受けていなかったためまだ透析の専門医は取得されていなかった。

日程上、専門医を取れるのが翌年の秋だが、それまで医局に居続けても自身のキャリアにプラスになるものが見出せないのでどのようにすれば良いか?医師免許を取得されてから既に20年近く経っているということもあり、少しの時間も無駄に出来ないという思いも強く、転職の相談というよりは進路の相談という形で面談させて頂きました。

その面談の中で、D先生は何に興味があるのか?将来どんな医師になりたいのか?転科は?クリニックが良いのか?病院勤務が良いのか?開業は?等とまずは興味があるものとやりたいことをノート1ページに入りきらないほどヒアリングし書き殴った。

そのヒアリングした内容を一つ一つ検討し、それを実現するためには何が必要か?どのようなメリットとどのようなデメリットがあり、結果どのような自己実現に繋がるか2人で懸命に話し合った。

その中で、今まで外来などで患者様を診ていて、糖尿病に対して非常に興味を持たれているということが分かり、どうせやるのであれば糖尿病の専門医が取れる医療機関でしっかりと勉強したいという結論に達した。

ただ、糖尿病の専門医が取れる施設に入職するに当たりいくつかの問題があった。
というのも、D先生の出された条件が非常に厳しいものだったからだ。
① 当直・オンコール無し
② 週4日勤務
③ 勤務する曜日の指定
④ 病棟管理はしない
⑤ 地域限定
⑥ 指導体制がしっかりしているところ
⑦ 常勤医師としての勤務
⑧ 7か月後の勤務開始

この条件で探してみたが、専門医を取得できるような医療機関であれば当然病棟管理や当直などの業務が必須だ。

かなりの高いハードルであった。

まずは、糖尿病の専門医が取得できる施設に片端から連絡をし、検討できるか確認をしたが、ものの見事に全滅した。

その旨をD先生に伝えると、このままでは大学の内分泌代謝科に入るしかないとかなり落胆されていた。

自分よりも年下の医局員に研修医並みの扱いを受けるのではないか。都合の良いように扱われてしまうのではないか。と。

D先生の落胆されている顔を見て、この先生を救うことが出来るのは自分だけなのだからもう一度チャレンジしてみようと心に誓った。

今度は病院の担当者ではなくグループ病院の本部の責任者に対して一斉に連絡をした。病院の担当者では持っていない情報を本部の責任者であれば持っているかもしれない。との思いがあったからだ。

その中でも、週4日勤務という部分や当直が出来ないという部分がネックになり、ほとんどの責任者の方が検討することはできないとの結論に至られた。

ただその中で、あるグループの責任者の方が、一度会ってみたいと仰って頂けたので早速面談のセッティングを行った。

面談は順調に進み、先生も乗り気になって頂いたところで問題が起こってしまった。というのも、その検討して頂いている病院の糖尿病の指導医が退職されるということが判明したのだ。

D先生が入職する頃には後任の指導医を入職出来るように動きます。と言って頂いたものの、確証があるわけでもなく、そのまま話を進めていくことが難しくなり、この話は無くなってしまった。

D先生も乗り気になっていただけに私も気落ちしましたが、私よりもD先生の方が落胆されているのは間違いないので精一杯明るく振る舞うようにして、近くのレストランでD先生と作戦会議を開き、1つ提案をさせてもらった。

D先生は循環器の専門医も持っているので、一般内科+循環器内科も診ながら勤務することは出来るか?という内容だった。

D先生も出来れば糖尿病だけを勉強したいという気持ちはあったが、現実問題として病院からOKが出なければすべてが水泡に帰してしまうので、この提案に賛同して頂き、また改めて病院に対して打診を行った。

次へ続く

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