「医師として」メインタイトル
前回のあらすじ
64歳のその先生が出された転職についての希望は、年齢から受ける
印象からはかけ離れた積極的なものだった。それもそのはず、
先生は社会人生活の後44歳で医師になった「卒後20年目」で、
その経験値に相応しい職場と働き方を求めていたのだった。
 

第8話
使命~自ら選んだ医師の世界~
(後編)

 四 決断
先生には苦しい時に助けてもらいました
持参した病院を一通り見終えた先生が座席に深く座りなおし私に対してご自身の経歴、医療に対する思い、医師としての思いを話し始めてくれました。
先生との面談終了後、私は先生のご希望に沿う医療機関の選定を始めました。先生のご希望に沿う為には、各病院の求人の有無を確認するだけでなく、募集の背景、患者層、運営体制、入職後の役割など様々な事を確認し、その上で報告をしなければいけないと自分に言い聞かせていた為、時間はかかりましたが候補の病院があれば都度先生に報告し、お考えをお聞かせいただきました。
先生は決して早期に転職をしたい訳では無く『現在の求人の状況が知りたい』と当初話されていた通り情報収集が目的でしたが、月に2~3回、時には経過報告だけの私からの電話に対し、その都度対応して頂き、様々な事をお話しいただきました。

先生と知り合い、電話をさせて頂く関係になってから約半年を過ぎたころ先生から驚きの内容の電話がかかってきました。
先生からの電話の内容は「今勤めている病院も医師が徐々に充足しつつあるんです。医師の充足に伴い患者様もようやく安定してきましたわ。仕組みも出来上がって、誰が赴任してきても直ぐに馴染むことが出来ると思います。こうなったら後は若い方々で盛り上げてほしいと思います。実は…リンクさんにとっては突然な話しなんでしょうけど、私はこの病院を退職する事にしましてん。理由は先ほど伝えた内容と、次の誕生日で65歳になるんですけど、ここで一旦けじめをつけて、今後の自分のあり方を考えようと思ってますねん。」との事でした。

本来であれば切れ目なくお勤めが出来るように直ぐにでも次の病院のご提案をさせて頂きたい所ですが、半年近くお付き合いをさせて頂き、先生のお考えや性格を少しでもわかっているつもりの私は次の病院のご提案の話をしませんでした。

むしろ、私は先生に「本当にお疲れ様でした。一旦静養を取って頂き、その間に今まで私が先生にご報告させて頂いた病院の事なども含めゆっくり考えてください。」とお伝えすると先生から感謝のお言葉と、「常勤として復帰する際は頼りにしている」との旨のお話しを頂きました。

数か月後、先生はお誕生日を迎えた月に予定通り退職されました。
 
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