「医師として」メインタイトル
医師は引退のない職業。ゆえに現役にこだわる医師が多い。
60代?70代?まだまだやれる。
今回はそんな医師のプライドと面談先の病院長の熱意がぶつかる、
実際にあった転職秘話。
 

第1話
「現役医師」としてのこだわり
(前編)

 一 65歳、麻酔科希望
 今回ご紹介させて頂くDr.は、当社サイトに新しくご登録下さった先生で、私が担当させて頂くこととなりました。

 登録の際ご記入頂いた内容は、年齢が65歳で麻酔科をご希望ということくらい。正直なところこの時点では、定年を迎えられたことでもあり、通勤に便利なエリアでの嘱託勤務といった、ゆとりある職場をお求めになっておられるのかなと思っていました。
 ところが後日、詳細をお聞きするための面談において、私の考えは大きな間違いであったと気づかされる事になるのです。
面談
 二 現役医師としてのプライド
 最初の面談の日。先生のご経歴をお伺いした私は、驚きを禁じ得ませんでした。先生の前職は、関西でも有数の救命救急センターを持つ病院の麻酔科部長だったのです。先生はそのご経歴からは想像もできないほど温和なお人柄でした。加えて、語り口調もたいへん穏やかな方でしたので、ご経歴を伺った後でさえ、やはりゆとりある勤務をご希望なのだろうという先入観を拭いきれませんでした。そこで私は、あらかじめ用意してきた求人票をお見せしようとカバンから取り出しました。ところが次の瞬間、先生の口から思いもかけない言葉が発せられたのです。

 「私はご覧の通り定年を過ぎた身です。だからといって、『雇ってあげよう』という感覚の医療機関に行きたくはありません。希望する条件・設備・環境など、きちんと主張させて頂けるところを求めます。それに適うだけの仕事を、まだ私は充分やれます!」

 それは数分前まで私が思っていたのと、まるで正反対のお言葉でした。その時の真剣な眼差しは、穏やかな物言いとは似つかわしくないほど、凛とした輝きを放っていました。
 私は手にしていた求人資料をそっとしまいました。先生の静かな迫力のおかげで、私はご希望の真意を感じ取ることができました。
 
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