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優しさのあふれる病院をめざして
プロフィール

深谷赤十字病院
埼玉県深谷市は埼玉県北西部に位置し、東京の都心部から70km圏にある。JR高崎線、秩父鉄道の駅があるほか、関越自動車道花園インターチェンジが設置されるなど、交通の要衝となっている。深谷市出身の著名人といえば渋沢栄一である。渋沢栄一は1840年に深谷市血洗島の農家に生まれ、近代の日本経済の立役者として、大きな足跡を残した。2021年にはNHKの大河ドラマ「青天を衝け」の主人公となり、2024年からは新1万円札の顔となるなど、深谷市での盛り上がりも期待される。
深谷赤十字病院は埼玉県北部で唯一の公的な総合医療機関であり、三次救急、地域がん診療連携拠点病院、地域災害医療センター、地域医療連携拠点病院、地域周産期母子医療センターといった機能を有している。25診療科、一般病床468床、感染症6床の474床を持ち、地域の健康を守っている。
今回は深谷赤十字病院の伊藤博院長にお話を伺った。

伊藤 博 院長 プロフィール
1945年に千葉県柏市で生まれる。1981年に千葉大学を卒業後、千葉大学第一外科(現 臓器制御外科)に入局し、千葉大学医学部附属病院で研修を行う。1982年に大宮赤十字病院(現 さいたま赤十字病院)、1983年に松戸市立病院(現 松戸市立総合医療センター)、1984年に国保匝瑳市民病院、1985年に千葉県がんセンター勤務を経て、1991年に千葉大学医学部第一外科助手に就任する。1994年に米国コロンビア大学、1995年に米国マウントサイナイ医科大学に在外研究員として留学する。1997年に千葉大学医学部第一外科講師、2002年に千葉大学大学院医学研究科臓器制御外科学助教授(現 准教授)に就任する。2005年に深谷赤十字病院に副院長として着任、2013年から深谷赤十字病院院長。
千葉大学医学部臨床教授、群馬大学医学部臨床教授、日本外科学会特別会員など。日本外科学会外科認定医・専門医・指導医、日本肝臓学会認定肝臓専門医、日本肝胆膵外科学会指導医・名誉指導医、日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本消化器外科学会消化器外科専門医・消化器外科指導医、日本消化器病学会認定消化器病専門医、日本臨床外科学会評議員、日本臨床腫瘍学会暫定指導医、身体障害者福祉法第15条指定医(肝臓機能障害)、臨床研修指導医、医師臨床研修制度研修管理委員会委員長研修修了、緩和ケア研修会修了、難病指定医、肝炎医療研修会受講など。
病院の沿革

- 1950年
- 深谷町11カ村深谷病院組合の公立深谷病院を日本赤十字社埼玉県支部が移管を受け、深谷赤十字病院として開設する
(内科、外科、放射線科、病床数60床) - 1977年
- 現在地に全面移転し、新病院で診療を開始する(病床数300床)
- 1977年
- 埼玉県知事から救急病院として指定告示される
- 1989年
- 新館棟などの増改築工事が完成し、388床となる(一般350床・伝染38床)
- 1990年
- 第三次救命救急センターとして承認される
- 1992年
- 救命救急センターの運営を開始し、438床となる(一般400床・伝染38床)
- 1997年
- 地域災害医療センターの指定を受ける
- 1998年
- 地域周産期母子医療センターの認定を受ける
- 1999年
- 深谷赤十字訪問看護ステーションを併設する
- 2002年
- 立体駐車場1期工事が完成する
- 2003年
- 臨床研修病院に指定される
- 2003年
- 新病棟が完成し、506床となる(一般500床・感染6床)
- 2004年
- 外来・管理棟が完成し、新外来棟で診療を開始する
- 2004年
- 新病院拡充整備竣工式を挙行する
- 2005年
- 638台の立体駐車場が完成し、拡充整備が完了する
- 2005年
- (財)日本医療機能評価機構から認定を取得する(Ver.4.0)
- 2006年
- 地域がん診療連携拠点病院に指定される
- 2007年
- 地域医療支援病院に指定される
- 2007年
- 脳死による臓器提供を実施する
- 2008年
- DPC算定を開始する
- 2010年
- (財)日本医療機能評価機構から認定を取得する(Ver.6.0)
- 2012年
- 電子カルテを導入する
- 2013年
- 脳死による臓器提供を実施する
- 2014年
- 健診業務を再開する
- 2014年
- 週休二日制を導入する
- 2015年
- ベーカリーカフェを開業する
- 2015年
- MRI装置(3テスラ)、ガンマカメラ装置、治療用CT装置を導入する
- 2015年
- (財)日本医療機能評価機構から認定を取得する(3rdG:Ver.1.1)
- 2016年
- 放射線診断科・放射線治療科を新設する
- 2016年
- 院内保育所を開設する
- 2016年
- 埼玉県多様な働き方実践企業「プラチナ+(プラス)」に認定される
- 2016年
- 総合診療内科を新設する
- 2016年
- DSA装置(Inova IGS630)を更新し、稼働を開始する
- 2017年
- デュアルエナジー64列マルチスライスCT(RevolutionHD GSI)を更新し、稼働を開始する
- 2017年
- 3Dマンモ装置(Senographe pristina)を更新し、稼働を開始する
- 2017年
- マンモグラフィー検診施設画像認証を更新する
- 2018年
- FPDシステムを稼働し、一般撮影装置を更新する
- 2019年
- 緩和ケア病棟を新設する
深谷赤十字病院は日本赤十字社埼玉県支部3番目の病院として、病床数60床、内科、外科、放射線科の3科でスタートした。前身は深谷町11カ村深谷病院組合が設立した公立深谷病院で、日本赤十字社埼玉県支部がこれの移管を受けたのだという。
「場所は深谷駅の反対側だったそうです。公立深谷病院はこのあたりの11の村が共同で持っていた病院で、結核を中心に診ていました。そして深谷町が深谷市になったことがきっかけとなって、日本赤十字社埼玉県支部に移管となったようです。1950年の開設ですから、2020年はちょうど70周年になります。」
深谷赤十字病院は診療科や病床数を増やし、発展していく。そのため、院内が手狭になってきたことから、1977年に現在地に全面移転を行った。そして、平成になって、第三次救命救急センター、地域災害医療センター、地域周産期母子医療センター、地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院など、次々に特定機能の認定を受けていった。それらに合わせて、2004年に現在の建物へ生まれ変わった。
「病院の歴史の中で2回の建て替え、そのうちの1回はこの敷地内での建て替えを行ったのです。1977年から2004年までは27年しか経っていないのですが、その頃は当院に限らず、どの病院も経営資金が潤沢だった時代でした。しかし、今は人口の減少もあり、ダウンサイジングを行う必要が出てきました。」
深谷赤十字病院ではダウンサイジングを段階的に進めてきた。2019年に緩和ケア病棟を新設したのもその一環だ。
「7:1看護基準が始まったことがきっかけで、ダウンサイジングを始めました。まずは病床利用率を見直しました。一般的な急性期病院ですと、平均在院日数は12日から13日ですが、当院は9日台です。これは都心の病院よりも短いと思います。ただし、平均在院日数を短くすると、病床利用率は下がります。しかし、当院では帰せる患者さんは帰っていただき、回転率を高めました。そのため、病床利用率を経営指標から外したのです。あくまでも新入院の患者数と診療単価にこだわった目標設定をしています。緩和ケア病棟については30床の病棟を一つなくして、20床でオープンしました。今後も地域の皆様に信頼していただけるよう、『優しさのあふれる病院』を目指していきたいと考えています。」