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「治す」と「防ぐ」を両立した医療へ
医療法人社団 葵会 川崎南部病院

プロフィール

川崎南部病院

川崎南部病院

 川崎市川崎区は川崎市内の区の中で唯一、海に臨んでいる。1128年に平間寺(川崎大師)が創建されるなど、古くから神社や仏閣の門前町として賑わいを見せていた地域であるが、本格的な発展は徳川家康が東海道の整備を行い、1623年に東海道五十三次の宿場町として川崎宿が設置された以降だと言われている。1872年に日本最初の鉄道として開業した現在の東海道本線に川崎駅が設置され、川崎は東京と横浜をつなぐ街として、さらに発展した。この地域は現在も川崎市内の中心的な商業地であるとともに、京浜工業地帯の中核となっている。多摩川沿いや臨海地区は大規模工場地帯であり、繁華街はJR川崎駅東口と京急川崎駅前が中心である。
 川崎南部病院は川崎市川崎区田町に2013年4月に開設されたばかりの病院である。以前は川崎社会保険病院として地域住民に親しまれていたが、医療法人社団葵会グループが譲渡を受け、生まれ変わった。
 今回は川崎南部病院の森脇稔院長にお話を伺った。


森脇稔 院長

森脇稔 院長プロフィール

1953年に鳥取県米子市で生まれる。1979年に順天堂大学を卒業し、順天堂大学外科学教室に入局する。1980年に済生会川口総合病院に勤務を経て、1981年に順天堂大学医学部外科学教室専攻生となる。1982年に石和町立峡東病院(現 笛吹中央病院)、1983年に越谷市立病院に勤務を経て、1983年に順天堂大学医学部外科学教室専攻生となる。1985年に順天堂大学医学部外科学教室助手を経て、1986年に越谷市立病院に医長として勤務する。1987年に順天堂大学医学部外科学教室助手を経て、1988年に鳥取大学医学部附属病院第1外科に勤務する。1989年に順天堂大学医学部外科学教室助手を経て、1990年に東部地域病院に医長として勤務する。1998年に国際親善総合病院に外科部長として勤務する。2007年に順天堂大学医学部附属静岡病院外科教授に就任する。2013年4月に川崎南部病院に院長として着任する。
日本外科学会指導医、専門医、認定医、日本消化器病学会専門医、日本消化器外科学会専門医、認定医、臨床腫瘍学会暫定指導医、日本臨床外科学会評議員など。日本癌治療学会、日本胃がん学会、日本大腸肛門病学会、日本内視鏡学会、日本乳がん学会、日本肝胆膵学会、日本腹部救急学会、日本外科連合学会、日本食道学会、日本緩和医療学会にも所属する。


病院の沿革

 川崎南部病院の前身は川崎社会保険病院で、1948年10月に開設した。日本冶金株式会社の診療所を買収したものである。健康保険川崎病院という名称で、病床数は11床だったという。当時、社会保険病院は国の医療政策の実験的な性格を持ったもので、医療上の課題を抱えた地域に開設されていた。その中で、川崎社会保険病院は京浜工業地帯の中核となる石油化学コンビナートや鉄鋼関連の工場が集積する埋立地に建設された。

 その後、高度成長を経て、公害が大きな社会問題となる。川崎市は川崎喘息で知られ、川崎社会保険病院でも従来の肺結核治療と並び、喘息治療の必要性から呼吸器センターを開設したほか、1972年には健診センターも開設した。

 1994年からは病院の建て替え工事が進み、1998年に308床の病院となった。そして、2001年には介護老人保健施設と健康管理センターも完成する。

 「川崎市は高齢化が進んでいたので、療養病床が不足していたのです。そこで川崎社会保険病院は川崎市からの委託を受ける形で、308床のうち100床が療養病床、50床が回復期リハビリテーション病床でした。6病棟のうち3病棟が療養病棟だったのですね。」

 しかし、川崎社会保険病院は2006年頃から赤字の累積が進んでいく。政府は社会保険料や年金保険料で整備された全国63病院について、自治体や民間への売却か廃止を進める方針を打ち出し、独立行政法人である年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)に保有させた。このうち2病院は公立病院に統合されるなどしたが、川崎社会保険病院は売却されることになった。

 2011年12月に厚生労働省が川崎社会保険病院を民間譲渡対象に選定したのを受け、RFOは譲渡条件として、病床数308床の確保、譲渡後1年以内の救急指定病院としての認定、訪問診療、訪問看護事業の継続などを提示した。そして、2012年5月、入札資格を得た3法人で一般競争入札が行われ、医療法人社団葵会が約60億円で落札した。

 そして、森脇院長が新院長として着任し、2013年4月に川崎南部病院がオープンした。一方で、介護老人保健施設のサンビューかわさきは「葵の園・川崎南部」として、健康管理センターは「川崎南部健康管理センター」としてリニューアルした。

 「着任にあたっては完結型の医療を行いたいというコンセプトに共感しました。葵会は療養型病院で成功を収めてきたグループで、高齢者医療のノウハウを持っています。しかしながら、急性期病院は千葉県柏市に千葉・柏たなか病院があるぐらいなんですね。一方で、私は大学病院から来ましたから、急性期医療に慣れています。私の経験をお役に立てればと思い、着任しました。」

 葵会は1978年に広島県で開設された医療法人社団で、現在、病院、介護老人施設、がんPET健診センター、クリニック、グループホーム、居宅介護支援事業所、学校、保育施設、ホテルなどを含め、全国に82施設を有するグループである。全病院の病床数は3400床、介護老人施設の定員数は4900人に上る。

 川崎南部病院は開設以来、1カ月半で3つの病棟を開くなど、ハイペースで体制作りが進んでいる。地域の医療ニーズに応えるために、高齢者医療に傾注し、内科、外科、整形外科、リハビリテーション科、精神科、心療内科、歯科口腔外科を標榜する。また、ニーズの高い小児科外来も再開する。2013年秋には緩和ケア病棟も開設予定となっている。

 「医師の確保はグループ内の異動もありましたし、大学病院も近いので、そこまで苦労はありませんでしたが、看護師や薬剤師の確保は大変ですね。スタッフが揃えば救急を行います。二次救急までは診られる病院にし、地域の開業医の先生方のご負担を軽減できればと思います。老健や健診センターが併設されている強みを活かし、急性期の患者さんを療養病床に、そして老健や在宅にという完結型の医療を目指していきます。そのためには手術がきちんとできる急性期病院としての体制を整えないといけません。地域の病院として、病診連携を進めていきたいと思っています。」

2013.06.01掲載 (C)LinkStaff

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