ドクター転職ショートストーリー

継承から一転 転職を選択した想い(下)

2017年02月01日 コンサルタントM

A先生に気に入って頂いた医療機関との面接前日になって、先生より、転職相談自体をキャンセルして欲しというお申し出に、私は理解できず、もう一度直接お会いし、先生の真意を聞きたいと面談の機会を頂きました。

転職相談キャンセルの真相は、私から提案したクリニックへ面接に行くこと、実家のクリニックから出ていくことを意を決して親御様に話をされたそうです。
親御様は、A先生の決意を冗談ではなく、本気であることに初めて気づき、何回か話し合いの末、親御様から謝罪があり、結果として、A先生に診療所を継承して欲しいと嘆願されたのだと言う事でした。

私はてっきり、他社紹介会社を通じて、どこか別の医療機関で話がまとまったのかと思い、何とか提案しているクリニックにご縁をつくる為の理由を考えておりましたが、事情が事情だけに、何も言い返せず、先生のご決断を尊重しました。
先生からは、転職は無理になったが、アルバイトは日程が合えば、お手伝いさせて頂きますと、ご縁を繋ぐお言葉を頂き、転職相談は終了致しました。

2ヶ月後、私宛に、突然A先生より連絡が入りました。
以前は、私の面目をつぶしてしまい、申し訳ありませんでしたという謝罪から始まり、再度転職相談をお願いしたいというオファーでした。
事情を聴くと、再び診療方針について、親御様と言い争いになり、昨日時点で実家の診療所を退職したとの事でした。
私は、あまりにも唐突で、衝動的なA先生の行動に、本当にお辞めになったのですかと3回ほど聞き返したことを記憶しています。

A先生の意志は固く、二度と実家の診療所には戻らないと、力強く返答されましたので、全力で先生の新天地をお探しすることを力説し、加えて、今回は私だけに任せてもらえないかという勝手な申し出に、快く応じて頂きました。

A先生のご希望条件は、以前と変わりは有りませんでしたが、正直、急を要する状況下で、直ぐに見つける事が困難で有ることは分っていましたので、最近のクリニックの求人内容の傾向として、外来中心ではなく、訪問診療中心の為、そのような職務内容であれば、高額の求人がご提案できますという私からの提案も二つ返事で承諾頂きました。

そうはいっても、診療報酬の改定後、施設主体の訪問診療の診療報酬は、以前に比べ1/3に減額になっており、希望年俸2,000万円という求人は、簡単にはございませんでした。

しかし、普段よりお付き合いをしているN病院に、A先生のご事情、スキルを含め検討を頂けるかどうかの確認をすると、Drにお会いしてみないと何とも言えないが、検討は出来ますと嬉しいお返事を頂きました。

N病院の求人内容は、関連のクリニックの管理医師として、健診及び産業医活動と施設主体の訪問診療に加え、本院の病院にて内科外来及び内視鏡検査を担うことで、A先生の希望年俸にお応えできるというものでした。

早速、A先生に求人内容を説明すると、ご興味をお持ち頂き、即面接の段取りをする事となりました。

N病院の面接では、院長とA先生の出身大学が同じということもあり、意気投合され、翌週には入職という、異例の速さで契約が成立しました。

A先生がご入職後、N病院からは、本当に人柄良く、一生懸命仕事をされる先生を紹介してもらえて喜んでおりますとお言葉を頂きました。

恐らく、A先生の心の中では、言い争って飛び出してきた親御様に対し、見返すつもりでがむしゃらに仕事をされているのだと思います。

私は今回のことで、親子でさえ診療方針に食い違いが出てくること、そうなる事で実家の診療所を継承することの難しさをA先生を通じて垣間見れたように思います。
A先生にとって実家の診療所を継ぐという約束された将来を振り切り、出ていくというご決断は決して容易ではなかったと思います。
それだけに私自身、コンサルタントとして、全力でご縁をつくりたいという思いが強くなった次第です。

恐らく、A先生はこのままどちらかの医療機関に雇われるという立場ではなく、ご自身での開業も視野に入れ、仕事に励まれていらっしゃると思います。

これからもA先生のご活躍をお祈り申し上げております。

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