ドクター転職ショートストーリー

オンコール(下)

2015年10月01日 コンサルタントO

Dr.から休みに対しての希望をお伺いした時に、「今の勤務先を退職した際には有給休暇を利用し、尚且つ、次の勤務まで2~3ヶ月くらい間を空ける事は出来るでしょうか」とのご質問をされました。

「今まで奥さんを旅行に連れて行ってあげた事がないので、60歳を目の前にして少し旅行に行きたいといのが唯一の希望なのです」との事でした。

もちろん、全く問題のないご要望でした。

しかし、この要望なら別に転職までせず夏季休暇、年末年始休暇、有給休暇や国内であれば通常の週末休みを利用すれば問題ないのではと、再度お伺い致しました。

そうすると「オンコールがあるので、今まで旅行に行くことは無理でした。昨年も365日出勤致しました。」とお答えが返ってきて私は驚愕致しました。

「365日ご出勤されたのですか?」「はい。365日です。」と何度も繰り返しやり取りしたことを記憶しております。

私は、どんな劣悪な労働環境なのかと思い、その院内でのオンコール体制についてお伺いしてみました。

よくよく聞いてみると、元から365日オンコールで呼び出されるようなシステムを病院が強要していた訳ではなく、Dr.自身が一般内科という比較的守備範囲の広い科目だということと、Dr.の人の良さが手伝い、周りから頼まれたものを引き受けて来た結果、現在のようなシステムのレールの土台作りがなされてしまったご様子でした。

確かに、誰もが頼みやすそうな人柄のDr.です。

そして、頼まれて引き受けた以上は中途半端な事は出来ないという責任感が手伝い、365日オンコール及び出勤体制という勤務形態が出来上がったのでした。

私の手元にあった求人の大半が患者さまの急変時のオンコールが当初は無いと言っても、他の科のDr.から頼まれるケースも考えられました。

そこで、手元の求人の中から整形外科病院での内科求人をご提案させて頂きました。

整形外科系疾患で入院されている患者様に対しての身体管理が主な職務です。

当然の事ながら、入院患者は全て整形外科系ですので容態が急変するという事はほとんど考えられません。ほとんどのDr.が敬遠される当直も、この病院では上記の理由により俗に言う寝当直ですので、当直応募者が殺到するくらいです。

その内容を説明させて頂くとDr.は大変その求人に興味を持たれ、入職意思を固めて頂くまでに長い時間は必要ありませんでした。

その後Dr.は、整形外科病院に勤務するのであればリハビリテーション等も覚えておかないと・・・と、新たな領域までご興味を示されるほどでした。

今度は新しい分野へのご興味で休みが取れなくなるのではと、Dr.と笑い話をしている際のDr.の表情は、初めてご面談した際に感じた、どこかしら疲れた表情ではなく、力がみなぎった表情でした。

現在、Dr.は念願の休暇を取られてご夫婦でご旅行中です。

出発前にお話しをさせて頂いた際に、「先生、携帯電話は置いて行って頂いて大丈夫ですよ」とお話しをさせて頂きましたら、笑いながら「そうさせて貰います」と解放感にあふれた口調でおっしゃられました。

60歳を目の前にしての転職。

Dr.もさる事ながら、奥様にも喜んで頂けたのなら幸いでございます。

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