ドクター転職ショートストーリー

医師としての人生(下)

2015年08月01日 コンサルタントK

後日、各医療機関へ先生の匿名情報をもとに、先生の想いや人となりを説明し、面談の段取りを行うことにしましたが、自身のクリニックがある為、面談の日程の調整には多少時間が掛かりました。
数カ所の面談を行う予定だった事と、所在地が離れていた事で、1ヶ月以上の調整を必要とすることになりました。

面接は、最初の面談から1ヶ月がたった10~11月の間に行われる事となりました。
どの医療機関との面接も宿泊を伴う形で理事長や院長、事務方を交えての和やかな会談となりました。
各医療機関との面談後、先生は非常に悩まれた様子でした。
どの地域も医師不足に悩まされ、地域住民の方に充分な医療の提供が出来ない状況が続いている現状を、目の当たりにされたからです。

各医療機関からは、『是非先生にお越し頂きたい』と、地域住民の方の為に頑張りましょうと連絡が入っており、先生もその想いに応えたいと言う気持ちと、何処かを辞退しなければならないとの葛藤に悩まれ、結論がでないまま年を越す事となり、各医療機関には、幾つかの候補を見て回った事で、過疎地の医師不足の現状を目の当たりにし、決めあぐねている状況である事をお伝えしました。

どの医療機関も先生とお会いした感触から人となりを理解して頂いており、先生が来て頂く地域は有り難いのではないでしょうかと、また、今回話がまとまらなかったとしても、選択された地域の方々が助かれば良いのではないでしょうかとの暖かいお返事を頂け、先生にもその旨をお伝え年末の挨拶とさせていただきました。

年が明け、医療機関や先生方へ新年の挨拶の為、連絡を入れる中、A先生に連絡を取る事にしました。
先生のお考えはまとまられたのか、不安を覚えつつ電話をかけたところ、年末年始をゆっくりと過ごされた様で、先生からB医療機関にしようと回答を得ることができました。

どの医療機関も困っているのは同じ、身体は一つしかないので、一番困っていると感じたB医療機関にしようとの事でした。Bは離島にあり、島には医者がいない状況が続いました。
先生は移り住み、医療を行いたいと決められたのでした。

早速その内容をB医療機関へ伝えたところ、B医療機関側は大変喜んでおり、入職に向けた諸条件など相談しましょうとの回答をいただきました。
残念ながら今回は入職にはいたらなかった他の医療機関へ断りの連絡を入れたところ、2医療機関とも、再考の相談を頂いたが、先生の意向を伝え、ご納得頂いた。

先生との契約内容についても、大きなトラブルもなく双方快諾を頂くに至り、先生は、閉院へ向けた段取りを始められました。先ずは、長年勤めてくれた事務や看護師へ事情を説明し、先生の想いなどを伝えられたそうです。
最初は、戸惑いもあった様ですが、スタッフの方々も先生の気持ちを理解していただいた様で、了承を頂けたとのことでした。

次は、患者さんへのアナウンスです。 B病院への入職は、4月を予定していたので、院内に閉院へと向けたアナウンスを貼り出され、事務や看護師の方、先生ご自身も事情を説明し、地域住民の方に理解を求められました。
住民の方々も、先生がいなくなることに寂しさを感じている様子であったが、その想いを理解してくれたようです。

長年開業してきたクリニックを閉めるのには、様々な手続きが必要であったが、時間を掛け少しずつ段取りを行い、3月末に閉院となり、大きなトラブルもなく無事に閉院となられました。
残務整理などもあり、先生の入職は、5月連休明けと先送りとなってしまいましたが、いよいよ入職に向け最後の動きとなる。
先生は「やっとここまできたね、色々あったけど、何とかここまで来られたね」と仰せられ、感慨にふけられている様子でした。

A先生の条件は、週5日勤務で年棒1500万円、宿舎の提供と引越しの費用などについては、医療機関側が負担する事で合意となり、新たな新天地へと向かう事に。
引越しも4月には完了し、先生もいよいよと自身の想いを堅固なものとした様子でした。

入職から1ヶ月後、先生に連絡を入れ、様子を伺ってみたところ、新しいスタッフのとの連携も卒なく取れる様になり、地域住民の方々とのコミュニケーションも図れる様になってきたとの事で、先生自身の想いが遂げられそうだと仰っていられた。

医師として患者や地域住民から求められる存在、医師として最後の奉公が出来ると笑顔で話されていたのが印象的でした。
B医療機関の理事長からも感謝の言葉を頂き、住民の皆さんも、先生が来てくれた事に非常に感謝されているとの事でした。

私はこの時、A先生が新たな医師としての人生を歩みだされたのだと感じました。

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