ドクター転職ショートストーリー

生涯現役!!(上)

2015年02月15日 コンサルタントK

K先生と初めてお会いしたのは、間もなく梅雨が明けそうなジメジメした7月中旬のことでした。

K先生はターミナル駅近くのビルで開業されていましたが、ビルの建て替えに伴うテナント立ち退きのため、約7年間院長としてお勤めしていたクリニックを閉めなければならなくなったので、次に勤務できるところを探してほしいとのお話しをいただいたのがきっかけでした。

まずは電話でご希望をお伺いしたところ、クリニックの院長をお勤めだったこともあり、クリニック勤務、外来のみ、自宅から30分圏内、老健や訪問診療は不可、とのことでした。

K先生は70代前半ということもあり、この条件でご紹介できる案件はなかなかないだろうなと心の中で思い、今後の道のりの険しさが容易に想像できました。

こうして面談の約束をし、いよいよK先生とお会いする日がきました。

一目見て、いい意味で私の想像は覆されました。小柄ではありますが、鮮やかなブルーのシャツを着て、浅黒く肌つやの良いK先生が現れました。K先生と今までの勤務等色々なお話しをさせていただき、今後のご希望を改めてお聞きしたところ、「この年齢だから老健とかであればすぐに勤務できるということはわかっている。でも、まだ外来で患者さんを診ていたい。」とおっしゃいました。K先生の熱意を感じ、何とか先生の希望に叶った案件を探さなければいけないと強く思いました。

が、しかし当初の想像通り案件探しは困難を極めました。数多くのクリニックに先生をご紹介しましたが、年齢を言った途端に「無理です。」という一言で断られてしまうケースが多々ありました。年齢の問題については、サラリーマン社会だけでなく、医療社会においても重要な要素となり足切りにあってしまうという現実を思い知らされました。

そのような中、K先生のご自宅から30分圏内の場所で新規内科クリニックの院長急募という案件が飛び込んでまいりました。ただ、この案件は行政主体で開設するクリニックで、開設予定の場所は住民層や治安等の評判があまり良くない場所に位置し、街の浄化活動の一環として行政が住民にきちんと医療を受けさせるために開設を目論んでいるクリニックでした。

このような背景で立ち上げるクリニックですので、外来以外に講演や広報誌に掲載するため、首長との懇談会を行っていただく等、院長としてモデルケースとしての広報活動も行っていただきたいという内容でした。やや特殊な案件でしたが、年齢も不問とのことでしたので今までのK先生の長年のご経験が必ずや生かされると思い、早速K先生にご紹介致しました。

K先生にクリニックの内容をご説明しましたが、先生も特殊な案件に初めは戸惑いを見せ、私にいろいろ質問をされました。最後には、「内容はわかったので、まずは現地に足を運んで街の雰囲気を自分で直接感じてみて、先方の話を詳しく聞いてみたい。」とのことでしたので面接設定をさせていただきました。

そして後日、事務長との面接に臨み、業務内容の説明を受け、K先生からも様々な質問をされました。と同時に街の雰囲気も実際に感じ取られていました。事務長からは「是非いらしてください。」とのお誘いを受けましたが、面接の帰り道に「いかがでしたか?」と投げかけてみましたところ、「家族とも相談して1週間後に返事します。」とのことでしたのであまりお気に召さなかったのかなと感じました。

1週間後、やはりK先生からの御返事は「辞退します。」というものでした。

御家族とも相談された結果、街の雰囲気が独特であり患者層にも不安を感じたことと、行政を交えた広報活動が手間になると感じられたことが要因とのことでした。

クリニックの事務長に辞退の連絡を入れた際に「やはり特殊なクリニックですから・・・。」と残念がっておりましたが、ご事情は察していただきました。

K先生の転職活動はこうして振り出しに戻りました。

次へ続く

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