ドクター転職ショートストーリー

医局からの転身(下)

2013年05月01日 コンサルタントK

面接当日、予定時刻より少し早めに到着されていた先生は、当直明けでお疲れの様子だった。S先生は「医局派遣以外での面接は初めてです」と若干緊張されていたが、私が「しっかりサポートしますから安心して、自信を持ってください」と申し上げると、「それなら大丈夫ですね」と安堵の表情で仰った。

受付を済ませると、直ぐに事務部長が現れ応接室に通された。しばらくS先生と事務部長と私で和やかな雰囲気の中で話をした後、院長がお見えになった。15分程度、S先生と院長お2人での会話が続いた。S先生のこれまでの経験や現在の勤務内容、今後の展望、またご家族の事など、院長先生が色々質問された後、A病院についてと、整形外科手術の実績をもとに説明された。院長先生は、S先生がどういった先生なのか確認できてホッとされたかのように、施設内の見学は事務部長に任され、部屋をあとにされた。その後、事務部長から条件の提示があり、施設見学を行い、面接は無事終了した。

面接直後、S先生に感想を伺った。返事は一旦持ち帰る予定でいらっしゃったが、印象はかなり良かったようで、もう一つのF病院は、一先ず保留にして欲しいと話された。
一方、A病院はS先生の人柄に大変感銘を受け「S先生に来て頂けるようでしたら、何でも相談して下さい」と熱望されていた。

数日後、S先生より依頼の連絡を頂いた。院長先生から説明があった手術件数では、ご自身にとって少ない事、面接の際に予定が合わずお会いできなかった整形外科部長と、実際の現場について話をされたいとの内容だった。早速、A病院に再度訪問し、S先生から頂いた内容をお伝えした。手術件数については、現在常勤医が1名と非常勤医1名でまわされているので、件数が伸びていないが、もしS先生に来ていただけるのであれば、やりたい手術ができるよう、新しい設備も揃えると明言され、整形外科部長を交えての再面接は2週間後に設定された。

再面接は、整形外科部長が通常の勤務を終えられた夕方からであったが、S先生を快く迎えて頂いた。和やかな会話から始まった面接であったが、今回は実際の整形外科の現場に関する内容や、S先生が所属されている医局を離れての入職という事にまで言及した会話となった為、先日の面接より緊張感を感じた。整形外科部長は過去の経験から、S先生が医局を離れる際の障害について話をされ、S先生がどれほど真剣に医局を離れることを考えているのかを推し量りながら、本気で考えているなら、できる限り力になって頂けると心強いお言葉を頂けた。

再面接を終えた後「再度持ち帰りますが、本当に有意義な面接でした。有難うございました」と、お礼の言葉を頂いた。A病院に連絡を入れ、事務部長に整形外科部長の感想を伺うと「S先生が宜しければ、一緒に盛り上げていきたいですね」と話されていたとの事だった。数日後、S先生より「医局の関係で、入職時期がずれ込むかもしれませんが、それでも宜しいでしょうか。確認頂けますか」と、実質ご入職への意向を固められたと受け取れる連絡を頂いた。A病院に相談したところ快諾であった為、すぐにS先生にお伝えし「それでは、お願いします」とのお返事を頂けた。

A病院がS先生へ提示された最終的な入職条件は、週5日勤務、年俸1,800万円、当直無し、手術などについては先生の希望される内容を考慮するという内容だった。

その後、特に大きな問題もなく比較的スムーズに医局から離れる準備を進めることができた。

雇用契約が締結し、S先生、A病院の双方からお礼の言葉を頂いたが、特にS先生からは「4月からの入職もずれ込むこともなさそうですし、また勤務内容や年俸、家族のことも含め、本当に希望通りの紹介をしてもらい、大変感謝しています」との手紙を頂いた。実にコンサルタント冥利につきる紹介ができたと共に、今後もS先生のように心から喜んで頂ける先生方の転職のお力になれるよう、コンサルタントに尽力しようと改めて決意した。

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