ドクター転職ショートストーリー

転科(下)

2011年3月1日 コンサルタントH

面接は理事長、院長、事務長が出席された。院長から「実は患者さんから、女性医師にいてほしいとリクエストがあり、女性医師を熱望していたんですよ。火曜日は私と2診体制をとれるので、困ったときは私の方に回してもらえれば問題ないですよ」と週1コマ外来業務を担当することを提案された。円満に面接が終わり、その後、病棟や介護老人保健施設などを見学した。最新の空気清浄機が数十メートル毎設置され、病院特有の臭いが全くしない環境にM先生も満足されたご様子だった。
週が明け、月曜日にA病院から条件提示の電話があった。A病院がM先生に出した条件は、週4日、当直なし、年俸1,600万円であった。これなら非常勤分と合わせて、麻酔科医以上の年収になる。早速M先生に電話したところ、トーンの低い声であった。

「条件などは問題ないのですが、静かすぎて・・・」
一瞬、何のことか分からなかったが、土曜日に面接に行ったため、外来もなく、お休みの職員が多いため、確かに静まり返っていた。
「ではM先生、平日にもう一度見学に行ってみませんか?」
「いいですか?お手数をお掛けしてしまって申し訳ないです」

その翌週の平日、再び病院に見学に行き、職場の雰囲気を確かめることになった。
「いいですね!患者さんや入居者さんの笑顔が多くて、職員の方も私語が少なく、きちんと教育をされている印象を受けました。ここに決めます」と快諾していただいた。
私は十分な引継ぎ期間を作ってから退職するようにM先生にアドバイスし、無事に退職された。
A病院に入職後のM先生からは「土日にしっかり休め、麻酔科アルバイトが気分転換になる今の環境がとても気に入っています」と報告があった。
この経験を活かし、その後、お会いする先生には「見学はできる限り、平日の診療時間に行った方が良いですよ」とお伝えするようにしている。転職を希望される先生方や医療機関のご都合もあり、診療時間後や土日になることもあるが、「百聞は一見に如かず」である。

今後もたくさんの先生方、医療機関の方とお会いすることになろうが、ご希望や現状を正直にお話ししてもらえるような態勢作りと、私も医療機関の情報を包み隠さずお話しして、先生方にも医療機関にも喜んでもらえるように誠心誠意取り組んでいきたいと思う。

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