ドクター転職ショートストーリー

自分が信じる道(上)

2007年09月15日 コンサルタントS

 N先生からエントリーをいただいたのは、少し肌寒くなってきた10月のことだった。早速、電話でお話を伺ったところ、少しでも早い時期の転職を希望されているということで、即日ご面談させていただく運びとなった。
 待ち合わせ場所に現れたN先生は、30代半ばでがっしりした体格に、日焼けされた肌のさわやかな笑顔が印象的な方だった。
 先生は関西の私立大学を卒業された後、大学病院で臨床経験を積み、現在は医局を離れ、民間病院で消化器内科医として勤務されているとのお話であった。先生が勤務されている病院は、いわゆる地域の中核病院で、外来患者数も非常に多く、多忙を極める毎日であるという。
  先生は、そこまでお話されてから、それまでの笑顔から表情を真剣なものに改められ、今回転職をお考えになられた理由について語り始めた。
 「今の環境では専門性は非常に磨くことができる。しかしながら将来的には故郷に戻って、そこでより多くの患者さんの力になりたい。そのためには一般内科医として勤務経験を積み、在宅や往診の経験も積んだ上で、プライマリーに患者さんを診られる力をつける必要があると思う。また来年小学校になる息子が病気を抱えているのだが、現在の勤務では家族のための時間を取ることができないので、家族に向けた時間も確保したい。」
 N先生のお話からは『医師としてより多くの人の力になりたい、今後の日本社会全体を考えたときに本当に必要される医師になりたい』という強い思いを感じた。

 私は、先生のご希望を叶えることができる求人を必ずご提案させていただくことを約束した。そして先生からも「是非宜しくおねがいします」とのお言葉をいただき、面談を終了した。
 次の日から、
①一般内科での指導体制が整っていること
②在宅・往診に取り組んでいること
③先生のご家庭の状況を考慮し、チーム医療の体制がしっかり取られていることの3点を重視した求人探しを始めた。
 いくつか病院をあたっていくうちに、先生のご自宅から30分ほどの場所にある中規模の病院から、先生のご希望に沿うと考えられる求人をいただいた。
 その病院は、規模としては現在の勤務先に比べれば小さいが、事務長のお話では内科部長は非常に熱意のある方で、後進の育成に熱心に取り組んでおられるということであった。また他病院との地域連携にも力を入れており、一般内科医としてプライマリーケアを学ぶには最適の環境であるのではないかとのことでもあった。N先生のことを簡単にお話させていただいたところ、「そのように真剣に医療に取り組む気持ちをお持ちの方であれば、是非一度うちに話を聞きに来て欲しい」とのお言葉をいただいた。そのうえ面接時には、院長だけでなく、内科部長もご同席いただけるとの約束もしてくださった。
 早速先生に連絡を取り、求人の説明をさせていただき、数日後に院内見学も含めて面談を行う約束をさせていただいた。面談当日は少し曇り空であったが、待ち合わせ場所に来られた先生の表情は、期待に満ち溢れていた。

次へ続く

コンサルタント手記バックナンバーへ