ドクター転職ショートストーリー

再起(上)

2007年08月14日 コンサルタント0

 Y先生と初めてお会いしたのは、昨年の秋のこと。会社に頂いた電話をお取りしたのがご縁の始まりでした。多くを語られず、やや聞き取りにくいお声で「仕事を探したい」とのご依頼。詳細をお聞かせ頂くため面談の約束をして電話を切りました。

数日後、待ち合わせの喫茶店を訪れると、約束の20分前にもかかわらず既に先生は来られていました。挨拶のため先生が立ち上がられたその時、私の最初の一声は「あぶない!」

 次の瞬間、ふらついた先生の肩を支えている私がいました。恐縮する先生にとにかくご着席いただき、お話を伺ったところ・・・ Y先生は都内私立大をご卒業後、内科医として医局派遣勤務を経て、ここ数年は都内の内科クリニックに院長として迎えられご勤務されてきました。患者様から慕われていたのでしょう。外来数も増えて、全てが順調でした。

しかし2年前に脳梗塞で倒れ、止む無く療養を余儀なくされたとのこと。最近は大分回復してきたとは言え、以前のように手足の自由も利かない。また、ご自身の71歳という年齢も気にされていました。

 奥様からも無理をしないで欲しいと反対されたものの、Y先生が、それでも医師として働くことに拘る理由は、決して生活の為などではなかったのです。それは「体の続く限りは医師であり続けたい。病に苦しむ人々の力になりたい。」という純粋な熱意でした。特にご自身で病を経験されてからは、その想いが強くなったとのこと。ですから老健施設などではなく、あくまでも病院でのご勤務を望んでおられ、通勤時間も1時間程度なら構わないとのことでした。

 私も本音を言えば、「大丈夫だろうか?ご通勤だけでも大変なのではないか?」と思いましたが、少し不自由なお口で、ゆっくりと熱く語るお話を伺っているうちに私自身にもいつしか熱いものが込み上げてきたのです。「判りました。先生のような方にこそ頑張って頂きたいと思います。私にお時間を下さい!」

お辛いはずの足で律儀に立ったまま私を見送って下さるY先生のお姿は、今も忘れることが出来ません。

次へ続く

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