ドクター転職ショートストーリー

予期せぬ出来事

2005年12月01日 コンサルタントT

 「臨床現場で経験を積みたい」それがK先生の転職理由であった。K先生は31歳の整形外科医である。現在はN大学の医局に在籍しており、医局派遣で急性期病院に勤務し多忙な日々を過ごしていた。
ただ、N大学では大学院に行く事が義務化されており、K先生も来年度より大学院で基礎研究する事が決まっていた。進学をしない場合は、大学の医局に残る事が出来ないのである。K先生は、学位を取得するより、臨床現場で手技を磨く事を選択したのであった。K先生は整形外科の専門医はまだ取得しておらず、転職する場合は、専門医を取得出来る病院が条件であった。いくつか該当病院を面接した結果、先生の誠実な人柄、豊富な経験症例を理由にどの病院からも採用内定をもらう事が出来た。
そして私自身安心していた矢先、大きな問題が発生したのである。ある日を境に先生と連絡が取れなくなったのだ。
そして、数日後先生から一本の電話を受け取ったのである。深刻な声で相談したい事があるという内容の電話であった。数日後、先生と面談をした内容は、私を大いに悩ませた。連絡が取れなかった期間、先生は入院していたのである。

 検査の結果、難病指定されている根治が難しい病気の可能性があるとの事だった。
しかもその病気の症状は、いつ再発するか不明との事である。K先生は、悩み外科の道をあきらめる事を考えていた。しかし、完全にメスをおく決断も出来ないでいた。そして最終的に先生がだした結論は、整形外科医として働く事が前提で、先生の病気の事を理解してもらい病気が再発した場合は、K先生をバックアップしてくれる病院を探す事になった。
そんな中、T病院との面接にこぎつける事が出来た。T病院は、大病院ではないが、地域に密着した病院で、整形外科に関しても、術後管理を大切にする誠実でりっぱな病院である。面接時に先生が病気の事を話した時、院長は「是非、うちに来て欲しい」と採用を即決したのである。院長は先生の気持ちを理解してK先生の誠実な態度を評価したのであった。その場に立ち会った私自身大変大きな感動を覚えた。
この転職の結果、先生の年俸は1,000万円から1,600万円にアップした。
これからのK先生の活躍にエールを送りたい。

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