ドクター転職ショートストーリー

今のままでは今のまま(下)

2005年05月15日 コンサルタントU

「多いですね。しかもお一人で悩んでいても解決できる悩みではありません。同門の先生方がたまに集まっても出るのは愚痴ばかりではないですか?
だからこそ私どものようなコンサルタントにご相談いただきたいんです。『転職』とか『医局を出る』というと、『給料が上がる』とか『勤務が楽になる』というイメージばかりが先行しがちですが、実は『新たな活躍のフィールドを求めて今の環境を変えたい』とおっしゃって来られるドクターが多いんです。一言で言ってしまえば『もっとやりがいのある職場』になってしまいますが、実はそれが一番難しい条件でもあり、そういった病院をご紹介することが私たちにとって『やりがい』のある仕事でもあるんです。変わりばえのしない家庭料理でも器や盛り付けが変わるだけでお金のとれるメニューになりますよね。環境を変えるというのはそういう面もあるのではないでしょうか」
S先生はしみじみと「なるほどね。そういえば若い頃、オーベンの先生から『外科医は自分の腕でオペを掴み取れ』と言われたことを思い出しましたよ。何事も自分から動かないと変わるはずがないですよね」とうなずいて「今のままでは今のまま、か。私が活躍できそうなフィールドは見つかりそうですか?」と尋ねてこられた。

そこからの話は早かった。S先生の自宅から車で30分ほどの所にあるI病院の外科求人を案内した。現在、医局の引き上げにより外科がまったく機能してはいないが、今後は医局に頼らず、あらたにスタッフを積極的に確保して再スタートを切ろうとしている病院である。S先生のご経歴とひたむきな性格なら、そのリーダーとしてふさわしいのではないかと感じたからである。
 病院側からも「理想的な外科チームをS先生の下にあらたに編成して、この地域の救急医療を担っていただきたい」という強い意向が先生にも伝わったようである。
 外科部長のポジションが用意されたということもあり、年収は当直込みの1,500万から当直料別の1,800万円にアップ、通勤距離も大幅に短縮されることになった。
「あと10年は現場でメスを握り続けますよ。若いスタッフも育てなきゃいけないし、オペも増やさなきゃいけないですからね。『外科医は自分の腕でオペを掴み取れ』20年ぶりに思い出させてくれて本当にありがとう」
 待遇が良くなったことよりも、外科医としての活躍のフィールドを見出せたことを喜んでいただけたことが私にとっては嬉しい一件であった。

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