Dr.中川泰一の医者が知らない医療の話(毎月10日掲載)
中川 泰一 院長

中川 泰一 院長

1988年
関西医科大学卒業
1995年
関西医科大学大学院博士課程修了
1995年
関西医科大学附属病院勤務
2006年
ときわ病院院長就任
2016年
現職
2023年12月号
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中国訪問記

この所、海外出張が立て込んでる。中東の方もあるのだが、まず中国。はじめ、東北地方に「検診センター」と「研究所」を作りたいからという話だったので、「うーん。なんか漠然としてるし、検診といってもねー。」ぐらいに思ってた。まあ確かに以前、PETセンターやってたけどなー。そこまでやるのかな?ちなみに、医療関係者の方には蛇足ですが、PETってPositron Emission Tomographyの事ですよ。ワンニャンじゃないですから。以前「先生もついにペット飼ったんですか?」と勘違いされた事が多々あったので。

まあ、飛行機も北京や上海行きじゃないから便が少ないし、乗客が少ないので、飛行機自体が小さい。つまり、座席が窮屈なわけだ。まあ2~3時間だけど結構疲れる。「ビジネスで取っといてね。」「この日はLCCの便しかないです。」「え~」で、なんだかんだで中国の空港に着いてみるとゾロゾロとお出迎え。車3台も来てた。今回の中心になってる方々の何人かとは、数年前会ってるから顔見知りだ。目的地まで、空港から200Kmぐらいある。まあ田舎だからしょうがない。中国ではこのくらいの距離はあまり遠いとはならないようだ。なんせ広いから。「車で2時間ぐらいですね。」「そんなに早いの?」中国の田舎、いや地方を舐めちゃいけない。ちゃんと片側3車線の高速道路が通ってる。で、本当に2時間ぐらいで着いてしまった。また、どんなド田舎に連れて来られたのかと思いきや、何とそこは夏のリゾートとして開発された綺麗な街だった。特に到着が夜だったこともあり、街は電飾されており、なかなか綺麗だった。来る前にうちの秘書に一緒に行くか尋ねたら「私、ホテル汚い所ダメなんですう。」などと馬鹿にして来なかったのだが、写真を送ってやったら「私なんで行かなかったのか」(原文のまま)だと。

結局その日は夜もふけていたので、ホテルにチェックインして早速夕食。と言っても、宴会みたいなもの。歓迎の証なんだが、ご存知の方もおられると思うが、あちらの会食(宴会)は10分おきに「乾杯!」。発音的には「カンペイ」だ。しかも、「白酒(バイジュウ)」だ。これは高いアルコール度数(通常40~60%以上)を持つ蒸留酒で、中国の伝統的な醸造方法で作られる。種類も豊富で、地域や原料によって味や香りが異なるが、今回は当然、東北地方の白酒だ。同席した、なんか偉い役人さん(確か書記とか言ってた。)が「おお~珍しい!」って感激してたから、きっと手に入りにくい上等な白酒なんだろう。但しここで、断っておくが、私は「下戸」だ。全然ダメなわけではない。蒸留酒ならちょっとはいけるが、意外とビールなんかではすぐに真っ赤になる。要するに酒は苦手なのだ。東京なんかでも、顔馴染みのレストランなんかに連れて行って年代物(結構ウンチク言われるので。)出してくださる社長さんなんかおられるのだが、あまり飲めない。自分で言うのもなんだが「接待しがいのない奴」なのだ。中国の人、特に北方の人達は「飲んで、仲良くなって仲間で仕事しよう!」なのだ。南の方の人達はもう少しドライだけどね。

まあ、知人達がいてて、そんなに強くないの知ってるから、「形式的」で勘弁してもらったが。代わりに食べる方は断れない。基本的に「人が食べている物は食べても大丈夫!」と思っているので、珍しい物でもとりあえず口にする。ここは言っても田舎なので中華料理ばっかりだ。街に2件、日本料理屋があるそうだが、味は推して知るべしだから、あちらも勧めない。「これ美味しいね。何?」「聞かない方が良いですよ。」「え~」。「じゃあ、これどう見ても甲虫だよね。ゴキブリ?」「いやカイコですよ。ゴキブリ好きですか?」「イヤイヤそんなでもないから、気を遣わないでね。」確かに中華と言ってもいろんな料理があるので、飽きないし、時に鳥の頭みたいにグロテスクなのもあるが、そんなのさえ避ければ、結構いけるのだ。おかげで2Kgも太ったよ。

そんなこんなで、初日は移動で終了。翌日は長春の研究所の視察。中国は国で禁止されている行為でも、施設単位で認可がおりたりするので、東北地方ではココが有名らしい。で、偵察の意味合いもあって行かされたのだが、内容的に言うと日本の美容外科でやってる「再生医療」程度かな。「幹細胞」や「エクソソーム」など並べてたけど、イマイチわかってないみたい。培養技術も詳しく聞くと、どうもイマイチ。

帰り道で「どうでした?我々の方が進んでますよね?」「そりゃそうだけど、我々って、まだウチと契約してないんじゃない?順番逆だろう?」「ハハハ、まあまあ。」。いつの間にか受けることになってる。

結局、検診センターと言っても「癌検診センター」と「肝細胞などの研究施設」で、後ろに病院の建物の外観が既にできてる。全体で10万平米だ。検診センターなども基礎工事が終了している。何と来月には躯体ができるそうだ。日本の感覚では2~3年かかるだろ。もっとも地震がないから構造的に簡単なんだろうけど、それにしても早すぎる。中国恐るべし。昔、ミャンマーの高架道路が1ヶ月で出来るのを見て、中国企業の仕事の早さに驚いた事があるが、やっぱり早い。日本のような細かな配慮がどこまでかわからないが、ホテルなんかは立派なもんだ。

今回の計画は、つまり、東北地方で癌患者が年間350万人いるそうで、その検診と治療。更に幹細胞などの再生医療がやりたいらしい。中国はここから5年間再生医療に力を入れるらしく、習主席の写真が入ったパネルがかかっていた。

実はこの事業、知ってる医療ブローカー(と言うよりゴロ)が絡んでて、コイツが絡むならやらないでおこうと思ったんだが、要するにそいつが、大きなことを言うが、何も出来ないでいるので中国側が痺れ切らして、代わりを探して、うちに来たという訳だ。そして、翌日はその本人と対峙する事になったのだが。結末は次回でね。

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