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神田駿河台で130余年、
地域とともに杏雲堂病院

運営・経営方針

1.運営・経営方針

 中村院長に運営や経営方針について、伺ってみた。

 「経営環境は厳しいですが、私としては長い伝統の中で培われた組織風土を壊さないで経営にあたりたいと思っています。持続的な成長を遂げるには客観的なデータに基づく戦略的な病院経営を推進することが重要です。病院経営には定石があり、成長に繋がった戦略は決して偶然から生まれたものではありません。再現性が高く、科学的な要素が強いのです。そのために外部環境である地域の人口構成、ポジショニング、内部医療資源の把握を行っていきたいですね。」

 杏雲堂病院の強みの一つが看護部である。
「開業医をしている友人が『患者さんが杏雲堂さんに行ってきたら、看護師さんが親切だったと言っていた。これを続けていけよ』と言ってきます。当院では患者満足度調査も行っていますが、看護師の接遇への評価は高いですね。そして、看護師もそれに誇りを持って、仕事をしています。認定看護管理者が、ファーストレベル、セカンドレベルとサードレベルをそれぞれ終了した看護師が複数います。認定看護師にしても、感染管理に2人、症状緩和、がん化学療法に1人ずついます。今後は皮膚・排泄ケアと認知症分野で誕生させたいです。佐々木研究所の一角には看護師寮があり、3万円で住めるんですよ(笑)。地の利のお蔭か、コメディカルスタッフの確保がしやすいのがいいですね。」

 杏雲堂病院では院内に検診センターを開設しているほか、神奈川県平塚市に佐々木研究所附属湘南検診センターを持ち、一般の健診や企業健診、人間ドック、各種のがん検診を行っている。
「検診センターは経営に大きく寄与するほどではありません(笑)。健診で要検査や要治療という結果が出た場合には当院ですぐに対応しています。」

 全国的には高齢化が進行し、人口減少が始まっているが、千代田区は2015年の高齢化率は全国平均の26.7%を大幅に下回る18.3%である。今後もこの地域は人口が増加し、高齢者のみならず生産年齢人口も増えることが見込まれている。全国規模で見ると人口構造的に特徴のある地域である。
「先が見えない時代に唯一見えるものが人口構成ですから、その客観的な把握と戦略への活用は必須です。あらゆる医療政策の根底には人口構成があります。高齢化が進めば、人口構成は変化しますし、人口構成が変化すれば疾病構造も当然、変化します。そうすると医療需要も変わってきます。最新の死亡順位別死亡数の年次推移では肺炎が脳血管疾患を抜いて3位になったことがその表れでしょう。当院でも肺炎の患者さんは増加していますし、これからは肺炎とがんの患者さんの増加は見込まれます。当院も診療体制のポートフォリオを再編成し、地域の医療需要にマッチさせることで、病床利用率の向上を図りたいと考えています。」
 

2.地域医療・医療連携

 杏雲堂病院では「患者サポートセンター」を整備している。これは地域連携室、入院調整室、退院支援室、患者福祉相談室、患者医療相談室が一体となった組織であり、患者さんが安心して療養生活や社会復帰ができるようにサポートするものだ。
患者サポートセンターでは地域の医療機関や保健、福祉機関との地域医療連携を推進し、患者さんの紹介や入院に関する問い合わせ、ほかの医療機関の紹介、予約、介護施設や福祉施設の紹介、退院調整などにも対応している。

 「患者サポートセンターにはMSW3人、看護師7人、事務スタッフ5人が在籍しています。病院の生き残りにあたっては前方支援と後方支援が必要です。前方支援で患者さんに入院していただき、退院時に在宅にお帰ししますが、このときに訪問看護ステーションや介護施設との連携を行わないといけません。しかし、千代田区は地価が高く、介護施設が十分ではありません。そこで在宅医療に力を入れている開業医さんと連携して、要介護度の高い患者さんについても協働して治療にあたっています。」
 

3.今後の展開

 高齢者の増加に伴う疾病構造の変化に対応した診療体制の構築が、急務であると考えています。内科医をさらに増員するとともに、地域包括ケア病棟の活用を促進し、場合によっては更なる増床も検討したいと思います。また、次年度からは整形外科の常勤医の赴任が決定しましたので、人工膝関節置換術や脊椎手術を開始します。さらに、患者の増加が見込まれる緩和ケアを充実します。これらの施策を着実に実行することにより、病床稼働率の向上を図ってまいります。病院も建築から26年を経過し、今後はエレベーター、水回り、電話や電気の配線など改修工事が必要となってきます。

 これからは高齢の患者さんが増えてきますが、高齢の患者さんが在宅で生活するために必須なのは排泄と食事の自立です。そこで当院では東京歯科大学水道橋病院と連携し、嚥下機能訓練と口腔ケアをきちんと提供できる体制を構築しています。嚥下評価と訓練のために、言語聴覚士の増員も検討しています。こうした歯科との連携をモデルケースにしたいですね。内科の医師も増員しますので、きちんとした仕組みを確立していきます。

2017.11.01 掲載 (C)LinkStaff

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