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良質で高度な医療、信頼と思いやりの医療、地域に広がる医療連携。
地域の中核病院として医療を提供していきます。

運営・経営方針

1.運営・経営方針

北嶋院長に病院の運営や経営にあたって、取り組んでいることを伺った。
「今後全国でその必要性が高まっていく、地域多機能型病院を目指しています。患者さんの入口側としては急性期から回復期までという問題がありますし、出口側としてはそこまでやっても自宅に戻るのがなかなか難しい患者さんもいらっしゃるという問題もあります。しかし、地域に訪問診療に積極的な先生がいらっしゃいますので、そちらと連携を取って支えていただいています。ほかの開業医の先生方とも連携し、普段はかかりつけ医として診ていただきますが、困ったときは当院が引き受けるという形がうまく回るようになってきました。しかし、いまだに病院内の空気が7対1の急性期医療が主体ですので、回復期医療や訪問診療のサポートまでが病院の役割だという雰囲気作りを始めたところです。私も院長になったのが去年4月ですので、体制作りはこれからですね。」

<タウンミーティング>
「市長の発案で、市内の10カ所に地域の方々にお集まりいただき、年に1、2回、色々なご意見を伺っています。今年のテーマとして『市立加西病院』が取り上げられましたので、病院の状況をこちら側から提示したうえで、質問時間をたっぷり取り、クレームも含めてお受けしようと思って始めました。10カ所のうちの2カ所を終えたところです。『もう病院はいらない』という、厳しいご意見が出るのかなという覚悟で臨みましたが、幸いにして、そういうご意見は全くないんです。『この地元に病院がないと困る』というご意見が強く、『こういうことをすれば、経営が良くなるのでは』といった発案までいただいています。院長としては心強いですね。これからも回っていくつもりです。」

<包括ケア病棟の増棟はあるのか>
「今のところは考えていません。急性期病院であり続けるというのが一番大事なポイントですから、それを維持するためにこそ回復期病棟も充実させたいので、ひっくり返すということはありえません。」

<強化していきたい科目>
「かつては神経内科や呼吸器内科も充実していましたが、医師の減少により、患者さんのニーズを十分に受けきれてきません。神経内科にはかつては4人の常勤医師がいましたが、今は2人ですので、どうしても限界があります。これは戻したいですね。呼吸器内科は常勤医師がいなくなり、大学から非常勤医師のサポートを受けていますが、常勤医師が一人でもいれば、以前のような充実した形になるでしょう。やはり急性期の医師が欲しいですね(笑)。地方の病院ですから、都会に住んでいる先生方にここまで来ていただくということに苦労していますので、魅力のある病院作りを心がけたいです。」

<待遇面での改善>
「医師の給与は、これまでは仕事量とは関係なく、基本的には一律でしたが、2年ほど前から入院患者さんを多く診ていたり、救急で入院させたりすれば増額するなど、働いている先生方に報いるように改正してきました。当院に勤務希望の先生方にも様々な事情がおありでしょうが、通勤の事情や収入の希望など、働き方、仕事の内容、急性期や回復期の希望など、それぞれに応じた形で一緒に考えていきたいです。包括ケア病棟を担当していただける医師も募集していますので、時間を限定した働き方も可能です。」

<女性医師への取り組み>
「院内保育所は基本的には8時から17時までですが、早朝7時からや21時までの延長も可能です。夜間保育にも対応しています。かつては病児保育もしていましたが、近隣の小児科の開業医の先生が病児保育を開設していらっしゃいますので、今はそちらにお願いできます。病児保育で苦労されている女性医師が多いと聞きますが、当院は子育てしながら働きやすい環境が整っています。消化器内科の私の部下に子育てとの両立で苦労している女性医師がいたので、その先生を見ながら、一つ一つ作っていったのです。その先生が辞めずに働いてほしい、という思いから工夫していったという感じですね。」

<訪問診療>
「訪問看護はかなり前からやっています。病院としての訪問診療は、人材さえ確保できれば行いたいですね。当院に勤務しながら、訪問診療をしてみたいという先生には参加していただきたいですが、なかなか難しいでしょうね(笑)。」

<緩和ケア>
「当院の特徴の一つに、常勤の精神科医の存在があります。緩和ケアにしても、認知症の患者さんにしても、精神科医のサポートが直接あるのは内科医の私から見ても有り難いですね。外来だけでなく、全科の入院患者さんに対して、必要があれば精神的なサポートをしてくださっています。緩和ケアのチームにも精神科医が入り、アドバイスを行っています。まだ緩和ケア病棟はないのですが、医師、精神科医、看護師、薬剤師、リハビリのスタッフで緩和ケアチームを作り、対応しています。」

<障害のある患者さん>
「近隣にも障害者施設がありますので、熱が出たときや体調が悪いといったことに対して診察をしたり、入院で対応したりすることはしばしばありますね。」

<小児科・産婦人科>
「10年前の医療崩壊では、一旦は産婦人科も小児科もゼロになった地域ですが、色々な伝手を頼って医師を確保しました。市内で出産できたり、子どもを診る場所を維持するのはとても大変です。今の先生方は少し高齢なので、さらに年齢を重ねて辞めていかれたときの補充はありません。今は1年でも長くいてくださいということしかできないので、綱渡りです。手伝ってくださる方がいらしたら、何とか維持できるのですが。」

<医学生や研修医の中で小児科・産婦人科を希望する人が減少していることについて>
「少子化ですし、ニーズが減りますから、仕方ない部分もあります。またセンター化の流れも強いですね。センター化によって、医師の働き方に負担をかけず、高度な医療ができる利点はありますが、周辺に空白ができてしまうのは良くありません。当院は身近な場所で医療を受けられる場所でありたいです。」

<これからの専門医研修>
「かつては早い段階から、循環器、消化器といった専門に入っていました。その領域を早く、深く学ぶことが目的だったのですが、これからは多くの併存疾患を持った高齢者を診ていかなくてはいけませんので、自分の領域だけでなく、幅のある内科医が必要になります。幅と深さの両方が求められますから、今回の専門医制度において、1年間は内科の様々なことを勉強して最低限のことにきちんと対応できる内科医になったうえで、自分の専門領域を深く学ぶのは意味があると思います。その中で内科全般をそのまま診ていく人もいていいし、内科全般を1年で切り上げたうえで、早くサブスペシャリティに入っていく人がいてもいいでしょう。当院でも1年間の幅広い内科研修を行いますし、どの病院でもそういった研修ができればいいですね。」
 

2.地域連携・医療連携

地域連携や医療連携に対して、取り組んでいることを伺った。
「市民に開かれた病院をテーマに、数々の取り組みを行っています。市民と職員が交流する『ホスピタル・フェア』を年1回開催しており、今年で13回目となります。多くの方にお越しいただき、ボランティアでホスト役を務める病院職員や看護学生が市民と相互理解を深めました。
10年前からは市民との対話集会である『加西病院市民フォーラム』を毎年開催しています。3年前からより多くの市民に参加いただこうと市役所が音頭を取り、名称を『地域医療市民フォーラム』と変え、昨年は第3回を開催しました。」
 
「病院出前講座」も好評だ。
「市民の方々の希望により、医師、看護師などを講師として派遣してきましたが、2016年度からは『病院出前講座』と称して、医療に関する講演を受けたい市民のグループへの要望に応える体制を作りました。医師、看護師、医療技術職員を無料で派遣し、市民の方々の健康づくりに役立てていただいています。これにあたっては病院の提供できる講座名、および内容を公表し、選んでもらうことにしていますが、講座名にない内容に対しても積極的に対応しています。2016年度は2件、2017年度は現在5件を予定しています。感染症や高齢者のかかりやすい病気、ジェネリック医薬品などについての講演です。『病院出前講座』では市内の医療機関や介護施設等へも講師を派遣して、技術の向上に役立ててもらっています。さらに、病院スタッフが市内の中学生向けの心肺蘇生講習へ講師として出向き、生徒さんに心肺蘇生法やAEDの使用方法を教えています。」
市立加西病院では加西市医師会に所属して、密接な病診連携を行っている。
「地域医療室担当の職員のみならず、当院の医師が市内外の診療所を訪問して、病院からの情報発信や意見交換を行っています。さらに加西市医師会が立ち上げようとしている、インターネットを介して訪問診療時の患者さんの病状に関する情報を交換するシステムにも参加を予定しています。また、北播磨医療圏域では救急輪番制に参加するとともに、『北はりま絆ネット』と呼ばれている地域医療連携システムにも加入しており、参加している医療機関の間では薬や注射の内容、血液検査の結果、画像検査など診療情報の一部が共有されています。」
 

3.今後の展開

 市立加西病院は市内唯一の急性期機能だけではなく、身近な場所で回復期の入院ができる場所へのニーズの高まりから、今年度、地域包括ケア病棟を2病棟化する予定です。今後は病院創立の原点に立ち返って、市民の方々、近隣の住民の方々の求める医療内容について再確認していきます。その上で、地域で必要とされる病院を目指していきたいと考えています。

2017.08.01 掲載 (C)LinkStaff

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