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地域に密着した「患者中心の医療」を
財団法人 東京都保健医療公社 多摩北部医療センター

病院の特色

1. 循環器内科

 村崎理史部長は虚血性心疾患を中心とした動脈硬化性疾患の管理、経皮的冠動脈形成術を専門分野とし、三谷健一部長は循環器疾患全般を扱う。ほかに3人の常勤医が在籍し、各種の薬物療法やペースメーカー治療、大動脈内バルーンパンピングなどにも取り組んでいる。また、心臓カテーテル検査、処置などの専門検査も積極的に行っている。

 「かつては内科の当直の中に循環器内科医も混じっていたのですが、現在は独立し、循環器内科としての当直体制を組めています。地域のCCUネットワークに参加していることもあって、救急の患者さんが増えてきましたね。」

 

2. 消化器内科

 消化管、肝臓、胆道系、膵臓疾患の診断、治療を行っている。
 消化器がんに対しては、内視鏡的粘膜切除術(EMR)などによる内視鏡治療を行うほか、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)も数多く行っている。また、消化管出血の内視鏡的止血術、食道静脈瘤出血に対する結紮術、硬化療法や消化管狭窄に対するバルーン拡張術、ステント挿入術の件数も多い。難病である潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患の診断、治療も行う。
 内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)をはじめとして、内視鏡的乳頭バル-ン拡張術(EPBD)や内視鏡的乳頭切開術(EST)による総胆管結石の截石術や、胆道、膵悪性腫瘍における減黄術など、胆膵疾患に対する内視鏡を用いた高度の診断、治療も行う。

 「医師は4人ですから、やや少なめなのですが、地域と適切に連携している診療科です。具体的には内視鏡外来が挙げられますね。開業医の先生方が内視鏡検査を必要とされたら、先生方から直接、当院にお申し込みいただけるシステムを構築しています。患者さんは一般外来に来られる必要がありませんから、待ち時間が発生しないとご好評をいただいています。」

 

3. 神経内科

 脳梗塞に対し、早期からの診断、治療、リハビリテーションにより、後遺症の急性期治療と1次、2次予防に特に力を入れて取り組んでいる。発症予防についても、MRIを主体とする画像診断や凝血学的指標を用いて進めている。北多摩北部脳卒中ネットワークに参加し、水曜日はt-PAを使用した超急性期医療を施行している。
 健忘の早期診断、治療のほか、パーキンソン病をはじめとするパーキンソニズムについても、脳MRIや脳血流シンチを用いた画像診断やMIBG心筋シンチグラフィー、各種の自律神経機能検査などを行い、診断や治療を積極的に行っている。

 「脳卒中の患者さんが多いですね。現在、脳卒中急性期病院として、手挙げをしてt-PA対象の病院となっています。さらに受け入れを増やすために人員を確保して拡大していきたい診療科ですね。」

 

4. 血液内科

 村井善郎副院長のほか、血液内科専門医が3人常勤し、血液内科外来を毎日、行っている。急性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群など様々な血液疾患を診ており、2009年度の入院件数は白血病62件、骨髄異形成症候群30件、リンパ腫84件、骨髄腫16件となっている。
 外来での化学療法も116件と多い。多摩地区で唯一、行っているのが悪性リンパ腫に対する、「ゼヴァリンによるRI標識抗体療法」である。これは再発あるいは治療効果がなかった低悪性度非ホジキンリンパ腫とマントル細胞リンパ腫の患者さんを対象に、放射性同位元素のついた抗体を投与してリンパ腫細胞にダメージを与えるという治療である。治療は1回限りで、治療効果は80%で奏効、64%で完全寛解となっている。従来の治療に比べて治療回数が少なく、血液に対する副作用を除いた、そのほかの副作用が軽度で頻度も少なく、治療効果は同等以上と考えられ、注目されている。

 「4人の常勤医がおりますので、体制はかなり充実しています。白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫といった疾患がメインです。血液内科を標榜している病院はなかなかありませんので、地域でのニーズが高い診療科ですね。」

 

5. 内分泌・代謝内科

 多摩老人医療センター時代から高齢者の内分泌、代謝性疾患に関する診療経験が多く、典型的な症状が出にくく、他疾患の合併も多い高齢者に専門的かつ総合的に診断、加療をしてきた実績がある。
 糖尿病・脂質異常症などの代謝性疾患や視床下部下垂体、副腎、甲状腺、副甲状腺などの内分泌疾患を対象に診療を主に行う。電解質異常、2次性高血圧、肥満症などに隠れた内分泌代謝性疾患の検出にも力を入れている。

 「地域からのニーズが非常に高く、開業医の先生方とも積極的な連携を行っています。糖尿病教室、当院の医師の講演など、地域の皆さんを対象にしたイベントも活発ですね。青葉会という糖尿病患者さんの友の会も長い歴史を持って活動しています。」

 

6. 小児科

 365日24時間体制で多摩北部地域の小児の診療にあたっている。常勤医師7人、非常勤医師8人という厚い体制で、呼吸器、腎臓、神経、発達、食物アレルギー、頭痛・睡眠、内分泌・代謝、夜尿、シナジスなど、幅広い分野をカバーしている。

 「東京都立小児総合医療センターの特別連携病院ですので、そちらから応援の医師も来てくれています。常勤医師は7人いますが、専門分野が重なる場合もありますので、様々な専門分野を持つ非常勤医師の存在は不可欠です。清瀬小児病院を引き継ぐ頃から専門外来のニーズは高かったので、地域の皆さんのご期待に応えようと努力しているところです。」

 地域の小児科平日夜間初期救急医療事業に協力しており、近隣5市の医師会の先生方に19時から22時30分までの小児科初期救急を当センターで担当していただいている。入院の必要があれば、多摩北部医療センター の小児科当直医師が引き受ける流れになっており、地域連携が有効に機能している。時間外、土曜日曜なども24時間体制で診療を行っている。

「小児科は究極の地域医療ともいわれ、これを行うためには医師会の先生方との密接な連携が必要 です。当院だけが行うというのは難しいので、地域の先生方とそれぞれの役割を担っていければと 思っています。」

 

7. 外科

 菊池院長、若山達郎副院長、大倉史典部長のほか、5人の常勤医師と3人の非常勤医師を擁する、充実した陣容の診療科である。
 腹部救急に関しては、外科の当直医が常駐し、急患の受け入れ、緊急検査、緊急手術に24時間対応しているので、急性腹症の治療成績が向上しているところだ。
 消化器がん、乳がん、甲状腺がんを主に扱い、集学的治療を一貫した体制で行っているほか、一般外科、高齢者外科診療にも力を入れている。

 外科単独で一系列の当直を組んでいまして、急性腹症にはいつでも対応できる体制をとっています。高齢者に対する外科診療は多摩老人医療センターの時代からの豊富な経験があり、手術も高齢者への適応を広げている。術後リハビリテーションの内容も厚く、ADL低下の防止に努めています。」

 なお、2010年の手術件数は384件、うち緊急手術が108件という実績である。内訳は胃がん33件、大腸・直腸がん52件、乳がん23件、そのほかの悪性疾患13件、ヘルニア70件、胆石52件、急性腹症64件、そのほか77件となっている。

 

8. 脳神経外科

 脳梗塞急性期t-PA静注療法を含む脳卒中急性期医療を行い、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に対する急性期医療に傾注している。特に超急性期脳梗塞に対しては、他部門との協力のもとに血栓溶解療法を行う。
 一方、特発性正常圧水頭症治療などの高齢者脳神経外科は特筆すべき存在である。高齢者は認知症、歩行障害、活動性低下など、漠然とした症状で発症する場合が少なくない。突発性正常圧水頭症脳は60才以降に発病し、初めは歩きにくいと感じるだけであるが、最後には寝たきりになり、失禁や認知症も同時に進行する。手術で治る病気だが、発見が難しいため、多くの方が治療を受ける機会を逃しているのが現状だ。脳神経外科では歩行障害に注目して、この疾患の発見に努め、大きな効果を上げている。

 

9. 整形外科

 四肢骨折などの各種外傷、頚椎・腰椎などの脊椎疾患、膝スポーツ外傷、変形性関節症などを中心に幅広く診療を行っている。脊椎手術が年間100件程度と増加しているほか、多摩老人医療センターの時代から引き続き、高齢者股関節周囲骨折についても数多く診療している。最近では膝靭帯再建手術、関節鏡視下手術も増加している。
 2009年度の手術件数は438件で、股関節周囲骨折94件、脊椎手術108件、四肢骨折手術83件、股関節鏡手術19件、人工股関節手術11件、人工膝関節手術21件となっている。

 「整形外科も高齢者医療の蓄積が豊富な診療科となっています。最近は人工関節の手術、脊椎の手術などが増えてきましたね。」

 

10. 泌尿器科

 泌尿器科悪性腫瘍、排尿障害、尿路性器感染症を中心に最新の知見を取り入れ、泌尿器科全般の診療を行う。膀胱内視鏡検査も軟性電子スコープを使用し、検査時の疼痛の軽減を図っている。前立腺がんの診断は静脈麻酔下で、経直腸エコーガイド下生検を2泊3日入院で行うほか、早期前立腺癌に対するヨウ素125シード線源永久挿入による密封小線源療法も低侵襲のがん治療として実績を重ねている。また、副腎、腎、尿管疾患に対しては低侵襲な腹腔鏡下手術を行う。

 「地域に先駆けて、早期の前立腺癌には低侵襲な密封小線源療法を行っています。組織を採って、進行度で手術かこの療法かを振り分けているのですが、良好な成績を収めています。」

 

11. 放射線科

 永島淳一部長が放射線治療を積極的に行っている。放射線科の治療医が常勤で在籍していることは珍しい状況ゆえ、多くの患者さんを集めている診療科である。3次元治療計画装置を用いた高精度放射線治療が可能で、放射線治療専門医、放射線治療品質管理士(医学物理士)の放射線治療チームがそれぞれの患者さんに合わせた最適な計画を立て、放射線治療を行う。

 「2010年に最新のリニアックを導入し、画像誘導放射線治療(IGRT)を行っています。
さらに現在、高精度放射線治療である脳や体幹部への定位放射線治療や強度変調放射線治療(IMRT)の早期開始に向けて、取り組んでいるところです。」

 

2012.01.01掲載 (C)LinkStaff

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