ドクター転職ショートストーリー

麻酔科医として地元へ貢献(下)

2019年05月01日 コンサルタントK

後日、入職日を決める為にH先生から連絡を頂いた際に、予期せぬ言葉が私の耳を貫きました。
「転職できなくなりました。白紙に戻してもらえませんか。」

私は自身の耳を疑い、不覚ながらも絶句し、わずか数秒程度ですが時が止まるかの様な感覚に囚われました。そして、束の間の空白を経てH先生の言葉の真意を確認する為に、改めて何があったのかを聞かせて頂きました。

すると、医局及び院長に退職の意向を伝えたところ、診療以外に後輩の指導や科のまとめ役など、担っている役割が大きい為、早々の退職は不可であること、また、引継ぎや後任の招聘も含めると半年程度は必要になるとの想定外の強い慰留があったとのことでした。

ただ、H先生の転職の意向は変わっておらず、地元の大先輩が院長をしている病院で勤務したいとの思いは持っておられるものの、長い間お世話になった現職に迷惑をかけて自分都合で転職をすることもできない為、一旦白紙に戻してもらいたいとのことでした。
先方の求める時期に転職できず、期待を持たせるだけになっては失礼な為、具体的に転職が可能になった時点で再度相談させて頂きたいと、H先生の人柄がにじみ出るような誠実な思いを吐露して下さいました。

H先生のお気持ちを受け止め、包み隠すことなく院長先生にはありのまま報告させて頂きました。
院長先生からは、本来であれば新年度より着任してもらいたいのが山々だが、現職を大切にし、きっちりけじめをつけることも医師である前に人として重要なことである為、現職に迷惑をかけずに着任できる時期まで待ちましょう、と大変ありがたいお言葉を頂戴し、最終的に8ヶ月にも及ぶ期間を待って頂いた上での入職となり、一旦あきらめかけていたH先生には本当に喜んで頂くことが出来ました。

私自身、多くの先生方の転職をサポートさせて頂いておりますが、後にも先にもこの様なケースは一切なく、非常に稀な経験をさせて頂くこととなりました。
条件面は大切ですが、時には人として大切な部分に執着することが相手の心を動かすことに繋がるのかもしれませんね。

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