ドクター転職ショートストーリー

医師の眼となる(下)

2015年07月01日 コンサルタントM

私は、A先生から呆れられることを覚悟で、正直にご自宅から通える範囲で求人がない旨を報告し、ご提案するエリアを広げて、ご検討頂けないかとお伺いを立てました。

エリアを広げるということは、そもそも先生が先行して進めていた求人に対し、踏ん切りをつけられなかった理由でもある転居を余儀なくするものであったからです。

先生の回答は、私の意に反し、「やっぱり、無いよね」と明るい口調で返ってきました。
同業他社については、以前の道東の病院の提案以降、音沙汰はないとのことで、自身が希望する求人が通勤エリアにはないことはある程度察知されていました。

翌日より、道内の医療機関へかたっぱしに、A先生の概要を提案すると共に、オホーツク圏内の自宅へ月に数回帰省できるアクセスしやすい立地、かつ、宿舎についても、住むに当たり家電及び空調設備が整った宿舎を用意頂ける医療機関へ掘り下げた交渉を行い、結果、3施設の求人をA先生にご提案しました。

予想通り、転居の伴う転職は二つ返事を頂けず、その場ではお返事を頂けませんでした。
2日後、A先生よりご連絡を頂き、「あなたのお薦めの求人はどれかな?」と言葉短く仰られました。私は間髪入れず、道北エリアの求人を回答し、先生が地域に根差した医療を行いたいとの強いご希望をお持ちであったこと、地域偏在により医師が不足している医療機関でありながら、同法人グループに高齢者住宅を複数持ち、集患力が高く、財務的にも安定しているため、末永くご活躍頂けるフィールドがある旨を付け加え説明したところ、「そこまで自分のことを考えて提案してくれるのであれば、一度面接に行きましょう。」とお返事を頂きました。

A先生の不安点は、転職先となる地域が、オホーツク圏のご自宅よりも寒い環境であることと、愛犬がそのエリアで馴染んでくれるかということでした。

面接当日、病院へ行きながら、A先生からは前述の理由により、その場で返事はできない旨のお話を頂いた上で、面接に臨みました。

面接は予想通り院長先生含め病院から、A先生に対し、熱烈歓迎のお話を頂きました。一通り施設見学を終えたのち、私から、A先生には一旦検討頂き、後日お返事をさせて頂く旨を病院側にお伝えしようとしたとき、唐突にA先生から、「こちらでお世話になります!」と思いもよらないお返事をされました。

病院側は喜び、私は慌てふためいたことを記憶しております。

面接後、私はA先生に、そんなに簡単に決めてよろしかったのですかと尋ねると、先生は微笑みながら、「本当に良い病院を紹介して頂きました。病院の方針、勤務条件等、全てあなたから聞いていた内容と一致していました。だから、迷いなく決めたよ。」とお話頂きました。

ご入職いただいてから3ヶ月後、A先生はオホーツク圏の自宅を売り払い、今では病院近くにお住まいを構え、地域に根差した医療を提供し、ご活躍されています。

A先生のご転職をお手伝いさせて頂き、如何にわれわれコンサルタントが先生方の眼となり、ご提案する医療機関の見えない情報を細部にまで調べ上げ、先生がご活躍頂けるイメージがつくように提案することが大事であるかということを改めて学びました。

これからも信頼を得る為の労力を惜しまず、コンサルタントという職務に全うして参りたいと考えております。

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