ドクター転職ショートストーリー

予期せぬ事(上)

2011年10月15日 コンサルタントS

30代前半の内科医、K先生とのはじまりは昨年の6月。早速、面談をお願いする為、K先生に連絡を入れた。「時間が取れる日が分かったら、すぐ連絡します」と、K先生はかなり忙しい様子で、すぐに電話を切られた。

それから数日後、幸いにもK先生から連絡を頂き、K先生の勤務先から車で5分の場所にあるファミリーレストランで、面談をすることになった。面談当日、K先生は直前までご勤務され、大急ぎで来られたご様子で「待ち合わせ時間を21時と自分で決めておきながら、今日は救急車が多く大変でしたが、何とか間に合いました」と話された。事前の打ち合わせで、几帳面で真面目な先生だろうという印象を受けていたが、実際お会いしてもその印象は変わることはなかった。

日々のやりとりから大変そうな状況は伺えたので、それが原因で転職を考えているのではないかと想像しながら、今回のご登録の経緯とご希望を伺った。「自ら希望して今の急性期S病院で働いています。ここは、県内でも圧倒的に症例数が多く、日々大変な忙しさです。その点については何の不満も無いのですが…」と急に言葉を濁された。そしてK先生は話を続けられた。「自分は5年目の内科医で、最初から何もかも経験させて貰えるとは思っていませんでしたが、この5年間で、ある程度の知識と経験を積ませて頂きました。しかし、今後も多くの症例を積めるとは、状況的に考えられません」との事であった。 K先生はできるだけ多くの症例を経験して、将来は地元でその経験を活かし地域医療に貢献したい、との考えを持たれていた。

K先生の家族構成は、奥様と5歳と1歳になるお子様の4人家族。自分の意思で勤務先を変えられるのは、上の子供が中学生になるまでと考えられており、他の県に移り住んで勉強できる時間は7年程しかなく、あまり時間に余裕は無かった。経験を積みたいが、今のままでは時間だけが過ぎる事を不安に思い、今回の登録に至ったとの事だった。K先生の希望は明確で、圧倒的な症例数・経験が積める環境。勤務エリアはどこでも構わないとの事で、処遇面についても「現状維持であれば(現在、当直が月6回、年俸900万円程度)多少下がっても問題ありません」と話された。

早速、K先生の希望に合う求人の確認作業を開始した。リストアップは症例数順に確認した為、決して困難ではなく、その日の内に募集状況の確認が取れた。その中でも私の目に留まったのは、東北にある急性期A病院だった。そこはエリア内で、圧倒的な症例数があり、全国でも有数の病院である。そこには、20代と40代の医師は多数在籍しているが、一番経験を積んで欲しい30代が手薄になっており本来指導して行く立場の医師も、現場で何もかもやっているのが現状であった。そこで、匿名にてK先生の意向や将来像をお伝えすると、翌日「K先生のような将来像をしっかり持っている医師であれば、何としてでも来て頂きたい」と、センター長自ら連絡があった。

K先生に急性期A病院の体制や設備、また症例数などを案内すると「面接の設定をお願いできませんか」と先生からすぐに回答を頂いた。それから現勤務先との都合上、2回の延期を余儀なくされたが
2カ月後ようやく面接の日程が確定した。しかも、時間があまりないK先生の為に、今回は特別に朝の
カンファレンスから参加し、1日トライアル勤務の方式で行われる事になった。それは、何度も訪問できないK先生に対する病院側の配慮でもあった。

次へ続く

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