ドクター転職ショートストーリー

製薬会社へ転職(下)

2011年10月1日 コンサルタントS

ある日、メディカルドクターのご提案の為、国内系製薬会社へ訪問した。
製薬会社が医師を採用している現状についてお話をすると、採用担当者は初めて聞いたと驚かれた。私は同じ製薬会社でも海外と国内ではここまで違うのかと驚いた。
そして採用担当者は「当社は、外資系と違い、医師を採用するまではないかな・・」と消極的な様子のまま打ち合わせは終了した。数日後、国内製薬会社から私宛に電話が入った。「あの時は必要ないと言いましたが、あの後、開発グループに確認すると医師を採用して欲しいと言われまして・・。」 私は電話を切り、すぐに国内製薬会社に訪問し募集要項を確認した。提示された条件は臨床経験2年以上で年齢は30代後半までという条件だった。私は、担当者に何故この年齢なのかと質問した。メディカルドクターの仕事は、国内はもちろん海外でも会社のカウンターになる立場であり、新薬の開発に携わる中で、物足りない経験ではないかと感じたからだ。担当者は理由をこう説明した。「私たちも、医師を採用するのが初めてなんです。今まで先生と呼ばれる環境にいた方に社員として働いてもらうのです。若い先生の方が違和感なく入社頂けると考えています」担当者が言われることも納得はできた。今後は「先生」とは呼ばれず「社員」になるという事に抵抗がない人でないと困るという事だと察した。この製薬会社が意図するヒューマンスキルを今後開発される領域を確認し、その領域にマッチングした先生を探す必要があると自覚した。

私はO先生に国内製薬会社を紹介することに決めた。年齢については採用条件を満たしていなかったが、先生の領域がこれから開発される新薬の領域にぴったりだったことと、O先生のお人柄が、企業という世界に変わられても問題なく活躍して頂けると感じたからだ。早速O先生に履歴書を用意して頂いた。履歴書の書き方やPRになるポイントをしっかりとまとめて、見事に書類選考を突破された。ここから2回の面接を実施されるため、先生と改めて面接時の服装や想定される質疑応答などを事前に打ち合わせさせて頂いた。

そして1次面接の日を迎える。先生も少し緊張のご様子だった。しかし開発部の方とお話が始まると和やかなムードで面接は進行していった。開発部の方は、今まで医師を採用せずに新薬の開発を行ってきた為、現在は医師の役割が明確でないこと、これから医師に期待したいことを全てお話された。そして冒頭に書いた「これから、先生と呼ばれなくなりますがご抵抗はないですか?」という質問になった。今までお客様(医師)と製薬会社という関係から仲間になるという意味も含め、わが社は「Oさん」と呼びますと説明された。
O先生は一瞬、戸惑われたご様子だったものの、製薬会社が伝えたい意味を理解された。
先生は面接後、内定が出ることを強く望まれた。数日後、2次面接の連絡が私に入った。

すぐにO先生に連絡をして、次の日程を調整した。最終は役員面接になるが、もうお互いが心を決めていたように私は感じた。2次面接の翌日、O先生の内定連絡が入った。採用後の条件はO先生が当初希望されていた1,600万円を250万円上回る1,850万円となり、心配されていた臨床から離れる事についても、週1日臨床日にあてて良いという考慮もして頂けた。O先生も大変喜ばれ「今回の転職は自分だけでは絶対に無理でした。本当に相談してよかったです。」と仰った。私も本当にうれしかった。

入社後、O先生から私宛に近況報告が届いた。国内・海外を飛び回り、やりがいのある日々が綴られていた。

コンサルタント手記バックナンバーへ