ドクター転職ショートストーリー

使命感(上)

2010年9月15日 コンサルタントY

桜前線が東北地方に進んでいった4月下旬のある日、K先生からメールを頂いた。
そこには、K先生の年齢と専門科目、転職時期、希望勤務地、希望年収が記されているだけで、あとは「メールにて情報提供願います」とだけ記されていた。そこで、K先生の転職に関するお考えや、より具体的な条件などを伺うべく、挨拶を兼ねて「面談の機会を頂きたいのですが」とメールを返信した。
その後、K先生からは連絡を頂けなかったものの、K先生が希望される勤務地とは異なったが、その他の要件を満たした案件の情報を入手したので、「ご提案したい案件があるのですが」とメールをお送りしたところ、「話を聞きますよ」と返信を頂いた。
そのメールをきっかけに、後日、K先生のお住まいの最寄り駅近くの喫茶店で待ち合わせをし、面談することとなった。何分、メールでの交信では当然のごとく、先生方の表情や、率直な考え方が伺えないので、普段は高い緊張感を持ちながら先生方と面談することが多いのだが、このときばかりはなぜか、K先生に対する興味が湧くばかりだった。そこへK先生がお見えになり、挨拶を済ませたのだが、実に朗らかで柔らかいその表情から、私は安堵感さえ感じたほどであった。
K先生は40歳、外科医で専門医を持ちながら、現在は先輩から懇願されて入職したある病院で健診医として勤務されていた。「病院との見解が合わず、異動を打診され、現在は健診・人間ドックを担当しているのですが、ここ最近、この病院ではやりがいを感じ得なくなった・・・」と重い口調で話し始められた。そこで、なぜ異動の打診を受けた際に転職をされなかったかについて伺うと、「当初は、外科医としての道を進むべく転職を考えたのですが、当時、郷里に住む母親ががんで亡くなったことがきっかけとなり、予防医学の重要性を身を持って感じ、以後、自身の医師としての『使命』は健診業務であると考えるようになった」とのことだった。
面談は予定の時間を大幅に超えてしまったが、K先生の人物像が伺えたとともに、今後どのような提案を図るべきか明確になったので非常に有意義な面談となった。K先生は病院側から健診部門の立て直しを図ってほしいとの意を受け、異動後、すぐさま健診業務の現状やそのあり方について同僚などから話を聞くとともに、知り合いが勤務する病院を訪問し、遅れをとっていた健診用の設備とシステムの変更が必須と考え、運営面とコスト面に配慮した新たな設備投資などを上層部に提案されるなど、非常に熱心に健診業務に取り組まれていることが伺えた。その一方で、上層部との意見交換や業務環境の改善が進まなかったことに、K先生の「やりがい」が失われたようだが、それでも前向きなK先生は自身が調べられた理想的な健診用の設備やシステムについて熱く語られ、K先生の健診業務に対する「使命感」なるものさえ感じることができた。

ちなみに、K先生の転職条件は最低限現状の雇用条件(週4.5日勤務、年俸:1,200万円)が維持でき、その上で現場と上層部とが協力し合い、コ ミュニケーションが図られている「病院」勤務が希望とのやや抽象的なものでもあった。そこで、面談の最後にK先生の希望に見合う案件の提案に努めることを約束するとともに、K先生が思い描く理想的な求人案件に固守されると、ご提案機会も軽減する可能性があることを伝え、検討の幅をやや広げて考えて頂きたいと申し上げた。また、紹介先の病院にK先生を高く評価して頂くためにも、外科医としての経験も生かすことを勧め、健診閑散期はオペの助手など兼務されることも合わせて提案させて頂き、K先生もこれを快諾された。

次へ続く

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