ドクター転職ショートストーリー

ある外科医の転職(上)

2010年7月15日 コンサルタントS

私が大阪に転勤して間もないある日、他のエージェントに依頼しているが、なかなか良い案件を紹介してくれないというドクターの登録があった。それは、3名の脳外科医のエントリーだった。早速、3名の先生にお会いする約束をし、詳しいお話を伺うと、中心となるY先生ともうひとりの先生は2人で同じ医療機関であれば全国どこでも転居可能で、残り1人の先生は、出身地でもある関東での勤務が希望と言う事であった。
Y先生は高名なドクターの為、当然、現状の年俸も高額で、部長クラス以上の待遇でなければ、Y先生の希望を満たす転職先を探す事は出来そうになかった。そこで、脳外科を新規開設できる医療機関探しが始まった。

全国どこでも勤務可能とはいえ予想外に選択肢は少なかった。他のエージェントも同時に動いているはずなので、1日も早く条件にマッチし、仮に他のエージェントと競合した場合でも必ず勝てる案件を用意する必要があった。
まず私は、各エリアから候補となる医療機関を選び、とにかく脳外科を新規開設することが出来るエネルギーがある病院を探した。Y先生のご登録があったのが3月の末と言う事もあり、ほとんどの医療機関が新年度に向けての予算編成や方針が決まっていたので、北海道、東北、関東、中部、関西、九州のどこからも思わしい返事が来ない日が数日続いた。
ある日の朝、出社するとすぐに、四国のA病院から不意に電話がかかってきた。その内容は「昨日までの3日間、理事長が出張中だったが、今朝、病院に来たので、早速相談した所、先日の脳外科の先生を両名とも全力で獲得せよと言われた」と言う事であった。その病院は、数年前まで大学病院からの派遣の常勤医師によって脳外科を標榜していたが、大学医局の撤退で標榜を休止していると言う事だった。早速、Y先生に報告した所、是非面接を設定して欲しいと言う事だったので、すぐに日程の調整を行なった。パートナーのS先生の都合がつかずY先生のみの面接という形にはなったが、次の週には四国へ面接に行った。

A病院にうかがうと理事長室で理事長、事務長、Y先生、私も含め4人での面接が始まった。理事長も外科系のドクターで、ご自身も別の場所から転居をされて、病院を一から立ち上げた方だったので、事務長や私が話を進める間もなく、2人の会話は進み、病院の方針や、今後の展開の話をしていると、すぐに1時間以上の時間が経った。その後、私自身は何度かA病院には訪問した事があったが、Y先生と一緒に改めて病院内の隅々まで見せてもらい、さらに理事長から「現在3室ある手術室は毎日ほぼフル稼働中で、脳外科のオペに対応する手術室が、現在の所無いので、Y先生とS先生に来て頂けるのであれば、もう1室新しく手術室を作ります」といった言葉を頂き、この病院が日本で一番Y先生達を歓迎してくれる病院だと確信し、A病院に是非入職して頂きたいと思った。夜は、理事長に食事の席を設けて頂いていたので、一旦その日の宿泊先に入った。食事会の前にY先生の部屋に「話がある」と呼ばれた。面接が終わった直後だったので、面接での感触やイメージが悪かったのかと思い不安に思いながら、Y先生の部屋に向かった。

次へ続く

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