ドクター転職ショートストーリー

本当の理由(上)

2009年8月15日 コンサルタントK

 僻地にあるK病院から、「病院を再建しているところだが、医師が不足している。早急に一人紹介してほしい」という依頼を受けた。

 1年前、経営難に陥った病院を買い取り、再建を目指すK病院には2人の常勤医師が在籍し、順調に経営の改善を図っていた。その矢先、1人の医師が病気になり、退職を余儀なくされたのだという。一定期間は関連病院から医師を派遣してもらえるが、その状態を長く続けることはできない。K病院のある地域は地域全体が医師不足であるからだ。電話を切った後、状況の深刻さに「何とかしなければ」という思いが込み上げてきた。

 すぐに、「勤務先を変更したい」と仰っていたM先生が頭に浮かんだ。60歳代後半で、外科出身であるが、現在はメスを置き、総合診療に携わっておられる。現在の勤務先には他社の紹介で入職されたものの、当初の条件とは違う勤務形態のようで、毎日、暇を持て余しているという。
 「外来を診たい。まだまだ現役の医師として働きたい」と願っておられたが、地域内のどの病院も医師が不足しており、後任の医師が見つかることが転職に際しての勤務先からの条件であった。

 しかし、M先生へ、思い切ってK病院の話を持ちかけた。
「K病院から求人依頼を受けました。このたびの求人状況は…」と病院の状況を一部始終話したところ、M先生は非常に興味深そうに聞いてくださった。最後に、病院の情報を郵送することを伝え、次回の連絡日程を決めて、電話を切った。

  数日後、K病院から「状況はどうなっている?誰か興味を持ってくれた先生はいただろうか?」という連絡があった。私はM先生のことを匿名で伝えた。
 すると、「私どもの法人は3つの病院と老人保健施設を1施設所有しています。その先生のご年齢であれば、今は病院で勤務をしていただき、後には老健施設の施設長として勤務していただくこともできます。是非、ご提案してください」という好反応であった。
 M先生は以前、「どうせ勤務するなら、長く勤めたい。年齢と身体の状態に合わせて、勤務内容が変更できる病院がいい」と仰っていたので、私はK病院の話を聞いて、「この病院は先生にぴったりではないか」と思った。

 私は約束の日にM先生に電話を入れ、K病院が3つの病院と老健施設を所有していることを伝えた。 M先生は少し心を動かされたようで、「ほお」と反応された。
 「K病院から、最初の数年は病院で外来や病棟管理をしていただき、将来的には老健施設の施設長ということも可能だと伺いました。先生が希望されていた条件の病院です」と言うと、M先生はとても真剣に話を聞いてくださり、「体調に応じて、勤務の仕方を変えることができるのは非常に魅力的だ」と仰った。
 そして、「前向きに検討します」という返事を頂戴し、受話器を置いた。

次へ続く

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