ドクター転職ショートストーリー

決断(下)

2007年11月01日 コンサルタントS

 面接日、30分前に待ち合わせ場所の喫茶店に姿を見せたK先生の表情は、決してすっきりとしているとはいえないものであった。(本当に私の希望しているような条件の勤務先があるのだろうか・・・、あったとしても、私のような何の変哲も無い内科医を受け入れてくれるのだろうか・・・。)先生が今まで話してこられた不安が最高潮に達していることが、私の目にも明らかであった。私は敢えて多くは語らず「先生、今までの先生のご経験や医師としての率直なお考えを遠慮なくお話下さい。それが、必ずよい結果に結びつきますから。」とだけお伝えした。
 面接には理事長・院長・事務部長が同席され、病院の説明から始まった。院長先生からは、今後は病診連携に、より一層力を入れ、紹介患者の積極的な受け入れ体制を作っていきたいというお考えや、現在療養病床に受け入れている患者を、老健を併設することにより、安心して入院できる環境を整えていくという、地域の中核病院としての役割を自覚したお話を多くいただいた。
 最初は不安の色を隠なかったK先生の表情も、院長の前向きな話が進んでいくに連れ、真剣そのものに変化し、時折相槌を打つなど、非常に共感している様子が隣に座っていた私にも伝わってきた。
 一通りの説明が終わった時、先生は一番懸念されていたことについて自ら切り出された。「私は医局も早々に抜け、中規模の民間病院でずっと働いてきた、何の変哲も無い内科医ですので、院長がご期待されるような働きができるでしょうか。」先生のその問いかけに答えたのは理事長だった。

 「私共が期待するのは、特別なスキルを持つDr.では無く、患者のことを最優先に考え、スタッフと力をあわせて病院を盛りたてていってくれる、しっかりとした考えを持っているDr.です。誰かに不足しているものは誰かが補う。その誰かが又、他の誰かを補う。そうすることで、患者にとって信頼できる病院をつくっていくというのが、私の理念であり、教育方針です。」
 実際にその病院では、理事長・院長を含めた全体ミーティングが月1回行われ、各科の連携や、病院全体の方向性についても、皆が自由に意見を言い合っているということであった。
  理事長からの言葉をいただいた後のK先生の表情は正に、万感胸に迫るといった感じであった。今まで何回もの面接に同席してきた私でさえ、理事長・院長の信念を感じさせる力強い話し振りには、胸が熱くなった。
 その後、院内を見学させていただき、最後に「先生、是非お待ちしています。うちの病院に来ていただければ、先生に十分なご活躍の場を提供することをお約束します。」という言葉で面接を終了した。
 病院を出た後、改めて先生と面談の時間を持った。面接の率直な感想をお伺いすると「非常に素晴らしいものでした。面接前に悩んでいたことを全て吹き飛ばしていただき、面接中に決断することができました。入職までの手続きをお願いします。」と晴れやかな表情で決断をお話いただいた。
 その後は、条件面でも月1回の当直だけで、年俸は前職より200万アップという内容で、とんとん拍子に入職に至った。
 今回のケースは、人生の決断の場面にダイレクトに関わることが出来る、コンサルタントとしての仕事の責任の重さと、大きなやりがいを同時に感じることができた、私にとっても非常に勉強になる経験であった。 K先生の一層のご活躍を祈っています。

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