Dr.中川泰一の医者が知らない医療の話(毎月10日掲載)
中川 泰一 院長

中川 泰一 院長

1988年
関西医科大学卒業
1995年
関西医科大学大学院博士課程修了
1995年
関西医科大学附属病院勤務
2006年
ときわ病院院長就任
2016年
現職
2021年8月号
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ワクチン騒動記Ⅱ

 ワクチンに対して賛否両論がある。ワクチン反対医師連盟みたいのもあるそうな。そこで、ワクチンをせっせと打っている私の意見を少し述べさせてもらう。反対派というより不要派になるのか、「新型コロナ自体が大した感染症で無いから、潜在的にどんなリスクがあるかわからないワクチンは打ちたくない。」と言う意見はわかる。

 どんな治療もメリットとデメリットの比較で決めるのだから。どこまでをリスクとするかはその人の考え方次第だが、「一年で創った急造ワクチンは信用ならない。」とか「mRNAが遺伝子に影響する。」みたいなのはちょっと知識(情報)があればオカシイのがわかるだろう。「不妊になる。」とか「5Gの電波が身体から出る。」なんか余りに理屈がなさすぎて、かえって信じる人がいるんだと思うけど(このコラム読んでるような人は信じて無いよね?)。

 つまりデメリットの情報が間違ってるわけで判断が狂ってくる。メリットは感染しにくい、重症化しにくいなどワクチン一般の効用だが、今回の場合はいわゆる「ワクチンパスポート」が得られるというのがある。海外に行くには今後必須になるだろう。私なんかはこれが一番のメリットなのだが。

 後、基本的にマスクをしない「言い訳」になる。店舗や電車などではしてますよ。一応、社会に適合してるつもりですから。でも、この真夏にアスファルトの上でマスクするなんて自殺行為と思いません?熱中症は発症してしまうと致死率85%ですよ。

 元々、暑いのと寒いのには弱いもんですから。で、ウチでワクチン2回打った人限定の「ワクチン接種済みバッチ」を作った。例によってウチのおネエ様方には大不評で、「そんなもん、買う人いてると思う?」「やっぱりオカシイわ!」と人を変人扱いして笑ってたんだが、これがけっこう売れて、「再入荷予約待ち」になると、手のひら返しで、「どうせならもっと売ろ!」だって。「小銭稼いでどうすんねん?」と突っ込まれもしてるが、ノリなのかシャレなのか、同じ考えの方も多少はおられるのかなと一人ほくそ笑んでる。

 兎に角、公衆衛生的には出来るだけ多くの人がワクチン打って集団免疫を形成させないといけないのだから、マスク強要するくせにワクチンは自由という理屈がわからない。個人的に打ちたくなければ構わないがその分、行動制限は甘んじて受けてもらわないとね。

 ところが、大事件発生!なんと!肝心のワクチンの供給が突然止まってしまった。しかも何の連絡も無しにだ。ネットニュースで見て、役所に問い合わせると「予定しているワクチンが届くかどうか全くわからない。」で埒があかない。

 連れ(大阪弁?の友達みたいなもの。)の厚生局議員の秘書さんに調べてもらった。すると、なんとワクチンのWEB上の発中システムは直接メーカーと繋がっており、大阪市どころか厚労省も全く関与出来ないんだって。つまり多めに発注してもチェックされないということらしい。

 ウチの「出来る総務」の彼女は予約数と発注数を細かく計算して出来るだけ「適正な」発注数にしていたから余り余裕が無い。「幾らでも保管できるんだから、多めに言っといたら。」と言ったら、「ダメですって!きっちりして下さい!」。だから言わんこっちゃ無い。何でも余裕持っとかないとね。

 とは言うもののウチはディープフリーザーがあるのでそれなりの数の在庫がある。お陰で予約の方はキャンセル無しで切り抜けれるのだが、新規予約は当面の間止めざるを得なかった。

 その後の顛末として、大阪の場合、厚労省のこの複雑なシステムの入力に根を上げたほとんどの医療機関が大阪市に入力を依頼(まあ丸投げ)したのだが、大阪市が入力しきれず1ヶ月から2ヶ月分未入力になっていることが判明。

 その為、システム上は接種がされておらず、いわゆる「在庫」が余っていることとなっているとか。市長が「実際は打ってるワイ。入力してないだけじゃ!」と吠えたら、「入力してないお前が悪い!」と叩かれていた。いくら、入力しづらいとも、それで判断されると決まってたんだから、気持ちはわかるが、「逆ギレ」と言われても仕方ないと思う。

 なお、この話にはオチがあって、例の会見の翌日、区役所から「すいません。お手数ですが、今日中に全ての医療機関の予約数とワクチン在庫数を調べろと上から通達がきまして。」と恐縮した電話が来た。本当はこんなくだらない事やらされて、たまらんだろうな。

 いきなり患者さんキャンセルさせられて、クレーム処理でキレてる各医療機関に対して火に油注ぐようなもんだからね。実際、ほとんどの医療機関は在庫が無く、いきなりワクチン来なかったので、当日接種に来た方を断らなければならなかった。特に2回目の方は不安で、どうしても3週間後に打たないといけないと思い込まれているので、クレームも激しくなる。

 実際3週間なんか短い方で、1から2ヶ月でかまわないはずだ。実際ヨーロッパでは2ヶ月の国もあるぐらいだし。思うにオリンピック焦って、早く打たそうとして需給バランス読み違えたのが本音だろうな。今は「6週間で大丈夫。」とか言ってるけど、一般の人にしたら下手な喜劇のオチ見せられてるようなもので、たまらんだろうな。ウチも「2回目難民」の方の問い合わせが多い。

 こんなドタバタ劇ながらワクチン接種は進んで行く。ウチも新規受付をホームページに載せた瞬間、4分間に200着信!。「回線切ってください!」と出来る総務が叫んだぐらい、接種希望者はまだまだ多い。

 という訳で、当分の間、ワクチン沼から抜け出せそうに無い。

 こんな事もしながら、「コロナ後遺症」の治療したりして、中々いい調子なのだが、この話は次回に。

(9月号に続く)

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