神津 仁 院長

神津 仁 院長
1999年
世田谷区医師会副会長就任
2000年
世田谷区医師会内科医会会長就任
2003年
日本臨床内科医会理事就任
2004年
日本医師会代議員就任
2006年
NPO法人全国在宅医療推進協会理事長就任
2009年
昭和大学客員教授就任
2017年
世田谷区医師会高齢医学医会会長
2018年
世田谷区医師会内科医会名誉会長
1950年
長野県生まれ、幼少より世田谷区在住。
1977年
日本大学医学部卒(学生時代はヨット部主将、運動部主将会議議長、学生会会長)
第一内科入局後、1980年神経学教室へ。
医局長・病棟医長・教育医長を長年勤める。
1988年
米国留学(ハーネマン大学:フェロー、ルイジアナ州立大学:インストラクター)
1991年
特定医療法人 佐々木病院内科部長就任。
1993年
神津内科クリニック開業。
9月号

東京オリンビック・バラリンピック2020 (その2)

   オリンピックのボランティアで明け暮れた夏休み休暇が終わると、患者さんが待ってましたとばかりに来院して、外来は終日満杯になった。それだけでなく、休み中に食欲低下と下痢症で食べられていないという在宅患者さんの往診、入浴中に頭を切って出血したという95歳の高齢者の止血処置など、休む間もない診療で大忙しになった。在宅患者さんは室内にいても高温多湿になった居室で熱中症を発症していた。幸い点滴治療で食欲は戻り、臥床による仙骨部の血流鬱滞が進行していたが、湿潤パッドの処置でこちらも褥瘡にはならずに済んだ。6月末からクリニックではコロナワクチン個別接種を行っているが、休み明けのその日も12人の接種予定が入っていた。こちらも昼休みを返上してのボランティアだから、休み時間はほとんどない。クリニックのスタッフはそれでも一つとして不平不満をいわずについて来てくれている。これには本当に頭が下がる思いだ。





   翌日は在宅患者さんのコロナワクチン接種のために往診した。1回目はクリニックに車椅子で家族と一緒に来てもらったのだが、乗っているだけとはいえ日中の直射日光を浴びて来るのは大変だ。待合室から診察室に入るのにも疲れて足が前に進まない。これではダメだと、2回目は在宅訪問診療で接種することにした。クリニックの接種者を4名、在宅で娘さんと合わせて2名とすれば、1バイアル6人を接種することが出来る。15分の観察時間はスケジュールをやり繰りすればなんとか出来るということで実施した。





   発泡スチロールの保冷バッグは世田谷区の支給品で、保冷剤を入れて注射セットを詰めるとちょうど良い大きさで、持ち運ぶには便利だった。地域医療担当医・かかりつけ医は出来ることをきちんとやる事が大切だと思う。


江の島会場の医療ボランティア


   オリンピックに参加する医療ボランティアはIOCやIFによってその基準が決められているようだ。今回参加してみて分かったのだが、その数は実働推定人員をやや上回って配置されていた。Sailingでは、海上がField of play(FOP)なので、競技海面で準備待機するboatに乗船する医師が必要だ。今回海上自衛隊から大型ゴムボート4艇が出務したので、それに搭乗する医師4名が最低必要となる。医務室には内科系と外科系の2名が必要だから、計6名は最低必要だろう。これが選手やコーチなど大会競技関係者への対応で、その他に観客用医務室に同じく救急医2名が待機する。これに看護師5〜6名、PT2〜3名、薬剤師、受付ボランティア、通訳、それに海上自衛隊の衛生兵と乗務員を含めると30名近くが医療チームに参加していた。ただ、患者は1日数名で、予選が終わって決勝に参加する選手の数が減るとチーム全体の人数が減って、対象となる患者数も減る。今回はCOVID-19感染に対する緊急事態宣言により無観客となったために、対象患者数はさらに減少して、医療チームのスタッフは暇を持て余した。私はといえば、71歳という高齢者であることから憧れのboat乗務から外され、外国患者を少し診て若いドクターに少しばかりのアドバイスをするぐらいで、あとはジリジリと体力を消耗しながらハーバー内を歩き回って、オリンピックの雰囲気を味わいつつ写真を撮りまくっていた。各国の医師や大会関係者が医務室に表敬訪問に来たが、「医師が暇なのは良い事ですよ」と慰めてくれたのがせめてもの幸いだ。

(以下は「東京2020大会における医療体制案」として載っていたもの)



日記形式でTOKYO2020を振り返る

   私は2018年の10月20日から「瞬間日記」というアプリで日記を書き始めた。まずは1年だけ書いて、自分の体調や天候がどう変化しているのか、風邪をひいたのは何日くらいか、前年の同じ時期に梅雨は始まるのか、などの統計をとってみようと考えたからだが、始めてしまうと止められないのが性分で、もう3年近くこの日記を書き続けている。ちなみに、「痰」というキーワードを検索欄に入れると、2019年の5月6日と2019年11月22日に、「痰がからむ、痰が切れにくい」という症状があったと出てくる。この頃から季節性の気管支喘息が出始めていたので、こんな記載をしたのだろう。「痛み」と入れると、2018年10月25日に「右臀部から大腿にかけて痛みあり」、2019年3月11日には「昨日は首から肩が凄く痛くてボルタレンを飲んだ」、と出てきた。坐骨神経痛、むち打ち症の既往があるからだが、季節の変わり目には注意が必要、ということかもしれない。今回は、記憶が薄れないうちに、写真の記録も参考にしてもう少し詳細に残しておこうと考えた。



6月18日(金曜)
   TOKYO2020のMED研修事務局から、【MED役割別研修】というメールが届いた。メディカルスタッフ研修をe-learningで行うと。
・救急医療コンテンツ①②、各論①②③④⑤
・救急医療各論・補足動画(トリアージ)
・MEDオリエンテーション⑥〜⑦
などなど。。。結局見るのに4時間かかった。大変だ。。



7月7日(水曜)
   「ユニフォームを取りに行くように」と、公益財団法人東京オリンピック・バラリンピック競技大会組織委員会大会運営局医療サービス部会場医療計画課のMさんからの指示があり、本日予約をしたので行って来た。猛暑極まりない日照りの中、近くに駐車場を見つけたので車で取りに行った。場所は以前ホテルオークラ東京別館だったTOKYO-UACビル。




   Accreditation Numberが書かれたメールのコピーを持っていかなかったので、本人確認に時間がかかった。免許で確認してもらって、しばらくしてOKが出たので会場内に入ることができた。中ではボランティアの人たちが、ユニフォームや運動靴のサイズについての説明をしてくれる。試着が出来るので、履いたり羽織ったりして大きさを確認。その後各グッズを配布する部屋に行き、それぞれ決められた数だけトートバッグに入れてもらった。最後に受け取りのサインをして会場を出た時にはトートバッグが一杯になっていた。



7月22日(木曜)
   「明日はオリンピックの開会式で、江の島でのsailing練習はしないスケジュールだったが、急遽やりたいという国が出たので、医務室も開けることになった。出務をお願いできないか」というメールがMさんから入り、OKした。江の島まで通うのは結構大変なので、会場周辺のホテルをお願いしていたので、今夜は茅ヶ崎のビジネスホテルに泊まることに。今日は「海の日」で祝日でもあり、移動は楽そう。





7月23日(金曜)
   昨夜はホテル近くに、からあげテイクアウト専門「カラット」湘南茅ヶ崎店というのがあって、4年連続からあげグランプリ塩ダレ部門金賞受賞というので買って食べてみた。なかなかの美味。朝は6時起きで7時半にはホテルを出発。この時間、最短で江の島に着くには藤沢で乗り換えて、江ノ島電鉄線に乗るのが早いとアプリ「乗換案内」がいうので、久しぶりに江ノ電に乗ることに。天気は快晴。いよいよオリンピックという感じがする。しかし、江の島大橋を歩くと、たちどころに汗が噴き出す。





   朝8時半前なのに、ボランティアの入場口は人でいっぱいだ。Medical staffにはまだAccreditation cardが発行されていないので、「VAO」というカードをまずは発行してもらうように、と組織委員会のMさんからの指示があったので、その旨を伝えると一旦入り口前のプレハブに行くように、と案内された。そこでVAOをもらって再度人混みの列に並び直す。9時に出務ということになっているが、とても間に合わないのではないか、Mさんにそう電話をするとAccreditation cardをスタッフが持っていくのでVAOカードと差し替えてくださいとのこと。持って来てもらったカードを首に下げて、やっとのことでsecurityを通り抜けることができた。荷物をゴロゴロさせながら、まずはField Cast check in centerへ。ここでは、会場にcheck inした証拠を残して食事券をもらう。熱中症予防にと、塩分タブレットやアクエリアス、クーリングボディシートなどももらった。





   医務室へ行くと、友人のK先生はおらず、彼の後輩のB先生が出迎えてくれた。「K先生は連続20日勤務になるので、一日休んでいただいたんです」とのこと。K先生がやっているAthlete Medical Supervisor(AMS)の役目もB先生が1日引き受けるとのことだった。しかし、海上で発生した傷病者の搬送に関して、B先生の理解と大会委員会とでルール上の判断のズレがあったらしく、委員会からの諮問があったとmeetingで説明をしてくれた。現場の医師の判断と、組織委員会が机上で策定したルールが合わないことは、医療の実際の現場と厚労省が決めたルールとの齟齬に似ている。今後は細かい部分でのすり合わせが必要だろう。

(次号へ続く)



(医務室はプレハブ)


<資料>

1) 1. 1. Epilogi:
https://epilogi.dr-10.com/articles/3930/

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