神津 仁 院長

神津 仁 院長
1999年 世田谷区医師会副会長就任
2000年 世田谷区医師会内科医会会長就任
2003年 日本臨床内科医会理事就任
2004年 日本医師会代議員就任
2006年 NPO法人全国在宅医療推進協会理事長就任
2009年 昭和大学客員教授就任


1950年 長野県生まれ、幼少より世田谷区在住。
1977年 日本大学医学部卒(学生時代はヨット部主将、
運動部主将会議議長、学生会会長)
第一内科入局後、1980年神経学教室へ。
医局長・病棟医長・教育医長を長年勤める。
1988年 米国留学(ハーネマン大学:フェロー、ルイジアナ州立大学:インストラクター)
1991年 特定医療法人 佐々木病院内科部長就任。
1993年 神津内科クリニック開業。

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A cup of Joe の効能 ~1日コーヒー3杯は健康の元~

 朝は一杯のコーヒー(A cup of Joe)で目覚める、という人も日本では増えて来ているのではないだろうか。コーヒーの香りも味も様々で、人によって好みが分かれるが、私はCafe Du Mondeのコーヒーが好きだ。この店はNew OrleansのFrench Marketの入り口で、Jackson Squareの角にある。この一帯はFrench Quarterと呼ばれる地区で、古き良き時代をそのままに、Jazzが流れる観光地として有名だ。

 Cafe Du Mondeは1862年に創業し、クリスマスの一日とハリケーンが直撃する日を除いて24時間一年中休みなしに営業している。French Quarterの多くの店も夜中、明け方までやっていて、街の灯が消えることがない。多くの観光客がカクテルのハリケーン(Hurricane)やブラッディマリー(Bloody Mary)を片手にそぞろ歩いている、そんな街にあるCafeだ。

 Cafe Du Mondeのコーヒーは深煎りで、チコリが入っている。ブラックかカフェオレで出されるのが普通だ。カフェオレ(Au Lait)をオーダーすると、ウェイターがコーヒーと熱くしたミルクを入れた2つのサーバーを左右の手に持って来て、机に乗せたカップにそのまま2つ同時に注ぎ入れる。多少はねて溢れることなどお構いなしだ。これと一緒に四角いドーナツを頼むのがお決まりのメニューで、コーヒーを飲みながらこの揚げたてのパウダーシュガーが沢山かかったベニエ(Beignets=square French style doughnuts)を頬張ると、幸せな気持ちになる。

 Cafe Du Mondeのコーヒーは、チコリの苦味が独特の香りと味を加えていて、一度飲むと病みつきになる。そしてチコリが入ると、コーヒーとして美味というだけでなく、健康にも大変良い効果があるのだ。
 ヨーロッパで野菜として食べられているチコリは、薬草としての効能も多い。成分はイヌリンと苦味質で、食欲増進、利尿、消炎、肝臓強壮効果、リウマチや痛風、便秘の“特効薬”でもある。イヌリンは天然のインスリンとも呼ばれていて、血糖値を下げて糖尿病の改善に効果があるとされる(資料1より)。食後にこのチコリ入りコーヒーを飲むことが、健康の元でもあるのだ。

 私も留学先の大学病院のcafeteriaで飲み始めて好きになった。今はどうか分からないが、当時はcafeteriaに用意されたコーヒーには三種類あって、caffeine入り、デカフェdecaf(=decaffeinated)、そしてchicory入り、となっていた。New Orleansでは定番ランチメニューのRed beans and rice with sausageとGumbo soupを食べた後に、このcoffee with chicoryがとっても合うのだ。日本に帰ってくる時に、日本人にはまだあまり馴染みの無いこのチコリ入りコーヒーを、輸入して販売しようかと思ったくらいだ。その後、ダスキン(株)が、多角経営の一環でこのCafe Du Mondeのコーヒーを独占販売していることを知った。同じように目を付けた経営者がいて、私より先に事業に結びつけたことは悔しいが、昔はなかなか手に入らなかったこのコーヒーが、今ではネットで購入できることに感謝している。

 もちろん、caffeineは摂りすぎれば中毒症状、依存症などが生ずる。精神症状としては、落ち着きがなくなり、緊張感・感覚過敏・多弁・不安・焦燥感・気分高揚・一時的な不眠症などを生じる。重症になると、精神錯乱・妄想・幻覚・幻聴・パニック発作などが生じる。身体症状として、胃痛・胸痛・吐気・嘔吐などの消化器症状、心拍数の増加(時に不整脈)・心筋収縮の促進・血流増大・動悸、呼吸が浅くなり、頻尿などを生じる。また一時的な筋骨格の持久力増進・振戦・むずむず感が生じる。重症化すると、足の痙攣、歩行困難となる。瞳孔拡大、顔面の発赤、頭痛なども引き起こされる(資料2のWikipediaより)。

 先月号のチョコレートの話題でも愛好者というか提供者側の主張を載せたが、コーヒー販売の大手ウエシマコーヒーグループのサッポロウエシマコーヒー(株)のホームページには、以下のような効能が書かれているのでご紹介しよう。

【血流促進や利尿効果】
コーヒーに含まれるカフェインには血の流れを促進したり、利尿効果を高め、目覚めをすっきりさせたりする効果があります。また血流が促進されるということは、コーヒーを1杯飲むことで寒いときには体が暖まり、暑い夏には暑気当たりを防いでくれたりもします。
【その香りがストレス解消】
現代病、文明病といわれるストレス。その解消法は人それぞれでしょうが、このコーヒーのもっている苦味と酸味、そして心地よい香りが気分をしっかりリラックスさせてくれます。仕事の合間の1杯のコーヒータイムをぜひ、楽しんでください。
【肝臓の働きを促進、二日酔いにも効果】
二日酔いの経験、ありますか?飲み過ぎた次の日ほど体も気分も調子の悪いことはありませんね。二日酔いとは、アルコールが肝臓で分解されて、炭酸ガスになる途中でできるアセトアルデヒドが原因です。コーヒーのカフェインには肝臓の働きを活発にし、アセトアルデヒドを早く分解してくれる作用があるのです。また、カフェインには利尿効果もあり、老廃物を排泄してくれる働きもありますので、二日酔いのあとも体がスッキリとした気分になります。
【低血圧、高血圧の人にもOK】
コーヒーに含まれるカフェインには血流促進の働きがありますから、低血圧の人には心臓の拍動を高め、血流を良くし、また高血圧の人には毛細血管の拡張作用で血管を開かせ、血流を良くして血圧を下げる働きがあります。
【頭も良くなる】
コーヒーを飲ませた生徒と飲んでいない生徒では、計算問題を解く速さが違うとの研究発表があります。もちろん飲んだ方が圧勝です!
【ダイエットにもひと役】
カフェインには血液中脂肪の濃度を上昇させる作用があります。エネルギーの代謝を良くしますが、エネルギーを使わないと戻ってしまいます。血液中の分解された脂肪は運動して消費しなければまた元の古巣へ帰っていくので、運動の30分前に飲むと効果的です!
【ガンを抑制する働きも】
1990年に国際ガン研究機関(IARC)は、世界のガン研究を分析した結果 、コーヒーには結腸ガンや直腸ガンを抑制する働きがあると報告しました。
【活性酵素を抑え、老化を予防】
第16回国際コーヒー科学会議では、成人病やガンの原因であり、また老化の元凶とされる活性酸素をコーヒーが抑制すると発表されました。
【口臭を防ぎます】
食後に飲むコーヒーはとてもおいしく感じますが、ただそれだけではありません。口臭防止の働きもあります。ニンニクを食べたあとには特にいいですね。
【動脈硬化の予防にも】
コーヒーにはニコチン酸が含まれていますが、しかしこのニコチン酸はタバコに含まれるものとは全くの別物で、ビタミンB群に属しています。このニコチン酸にはコレステロールを下げる働きがあり、動脈硬化の予防につながるといわれています。

http://www.u-coffee.co.jp/various_topics/04/

 なるほど、コーヒーはなかなかの健康の友なのだ。
上記の効能の他に、最近Medscapeに面白い論文が紹介されていた。(資料3)

 アメリカの男女のコホート調査に関するもので、1日3杯以上のコーヒー(8オンスカップのブラックコーヒー)を飲む人は、1日1杯しか飲まない人に比べて37%Ⅱ型糖尿病発症のリスクが減るという結果が出たという。女性看護師95,000人、男性医療関係者27,000人、計122,000人が組み込まれ、毎年160万人のデータが集められた結果とのことだから、信頼してよいだろう。しかし、デカフェやカフェラテ、カプチーノ、ミルクや砂糖を入れたコーヒー、それに紅茶では効果はなかったとのこと。A cup of Joeもやるねぇ。
「コーヒー3杯は健康の元」は、ブラックコーヒー好きの私や若い先生たちには朗報かもしれない。

(資料)
1.“ハーブのホームページ”http://www.myherb.jp/main/library/herb/sonota/ta/tikori.html
2.カフェイン中毒(Wikipedia)
http://jp.ask.com/wiki/%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%B3%E4%B8%AD%E6%AF%92?lang=ja&o=2802&ad=doubleDownan=apnap=ask.com
3.Bhupathiraju SN, Pan A, Manson JE, et al. Changes in coffee intake and subsequent risk of type 2 diabetes: three large cohorts of US men and women. Diabetologia. 2014;57:1346-1354. Abstract

2014.11.01 掲載 (C)LinkStaff

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