ドクタープロフィール
ドクター神津
神津院長は昭和52年に日本大学医学部を卒業後、同大学第一内科に入局され、その後、神経学教室が新設されると同時に同教室へ移られました。医局長、病棟医長、教育医長を長年勤められ、昭和63年、アメリカのハーネマン大学およびルイジアナ州立大学へ留学。帰国後、特定医療法人佐々木病院(内科部長)を経て、平成5年に神津内科クリニックを開業された。神津院長の活動は多岐にわたり、その動向は常に注目されている。
2004年1月号 -Zoonosis- backnumberへ
 新年明けましておめでとうございます。

昨年はSARS騒ぎで一冬過ごしたが、さて今年はどうなるのか。私がクリニックを開いている町(若林一丁目)では商店街の結束が強く、毎年いろいろなイベントを企画して、楽しみながら地域振興と防犯や災害に備えている。そのまず皮切りが「新年会」だ。新年会の席上で、ここのところ7,8 年私が「新春医学講話」というものを話している。昨年は「感染症」について話をした。「20世紀は細菌感染との戦いの歴史だったが、人類はそれに勝利した。21世紀は、今度はウィルスとの戦いとなる。冬のこの時期は、鼻かぜウィルスなど人の手から手へとうつるものが多いので、無防備に握手をしたり手を繋いでいちゃいちゃしてはいけない。うがいと手洗いを励行してください。そのうち、我々が知らないウィルスが、森林伐採や文明の原生林への侵食などでアウトブレイクする可能性もある。油断してはなりません」こう話をしたとたんに、SARS騒ぎが起こった。私が予言したとおりになったので、正直びっくりした。今年はどんな年になるのかと考えたが、「人畜共通感染症」が問題になるのではないかと思う。もちろん、私は預言者ではないから、当たるも八卦当たらぬも八卦、結果についてはご勘弁願おう。

さて、この人畜共通感染症とは、人と動物が共通の病原体によって侵される感染症のことだ。WHOの定義では「脊椎動物とヒトとのあいだに自然に移行する疾病及び感染症」であり、英語ではZoonosisという。犬や猫の回虫卵、大腸菌による公園の砂場の汚染、エボラ出血熱、BSE(牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病)、クリプトスポリジウム症、サルモネラ症、オウム病、Q熱など、近年茶の間の話題に上がった感染症はみなこのzoonosisというのだから驚く。その他、クリミア・コンゴ出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、アメーバ赤痢、インフルエンザ、黄熱、狂犬病、エキノコックス症、回帰熱、ジアルジア症、腎症候性出血熱、炭疽、ツツガムシ病、日本脳炎、マラリア、デング熱、日本紅斑熱、ライム病、ハンタウィルス肺症候群、Bウィルス病、ブルセラ症、など、日本の感染症法に記載されている感染症病名の約40%がこの人畜共通感染症なのだから、我々がこれらにあまり関心を払わなかったのがおかしい位だ。

日本大学医学部臨床検査医学教室助手の荒島康友博士(「ペット溺愛が生む病気」講談社刊)によれば、日本のようにペットを狭い住環境で飼育することと、世界の常識では考えられないような珍しい動物(エキゾチック・アニマル)をペットとして飼うことなどがこうした感染症の脅威を作っていると指摘している。一つの例を挙げると、プレーリードックという種は、ペストに対する感受性が高く、アメリカではまずペットにしないとされているが、先日外来を訪れた患者の問診表には「ペット:プレイリードッグ」とあった。この動物はちょこんと両足で立つしぐさが「かわい~♭」ということで女の子に人気があるらしい。また、アメリカから入ってきたアライグマは5万頭以上といわれているが、狂犬病のチェックなくフリーパスで入ってきているそうだから、ひょっとしてどこかでアウトブレイクが始まる可能性も否定できない。
ペットは可愛い。しかし、zoonosisを持っているかもしれない、という知識を持って接する必要があるのだ。ペットとキスをしてはいけないし、自分が病気になったら、ひょっとしたら、自分のペットも病気かもしれない。ペットが病気になっていたら、自分も感染しているかもしれないと考えて、きちんと医師に告げることが大切だろう。

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