ドクタープロフィール
ドクター神津
神津院長は昭和52年に日本大学医学部を卒業後、同大学第一内科に入局され、その後、神経学教室が新設されると同時に同教室へ移られました。医局長、病棟医長、教育医長を長年勤められ、昭和63年、アメリカのハーネマン大学およびルイジアナ州立大学へ留学。帰国後、特定医療法人佐々木病院(内科部長)を経て、平成5年に神津内科クリニックを開業された。神津院長の活動は多岐にわたり、その動向は常に注目されている。
2003年9月号 -先進国としての正しい国民医療費の額とは- backnumberへ
 今年の夏は酷暑になる、と予想したのは気象庁だが見事に外れた。

少子化も高齢化も医療費の伸び率も、予想したのは厚生労働省と財務省だが、これも見事に外れている。天気予報は外れても実害は無いが、社会状況の変化を読み間違えると、とんだことになる。日本の医療費は、GDPに比して先進国の中では負担が少ない部類に入るので、今後も国が率先して上げていかなくてはならない。

先進国で最も負担の少なかったイギリスは、国民の要望に抗しきれず医療費を上げることを決定している。アメリカは4000万人といわれる無保険の国民を抱えており、保険・医療のシステム作りが偏っているだけでなく、天井知らずの高額医療とそれに対抗するように多く争われる医療訴訟のリスク・マネージメントに汲々としている。公共の病院は少ないから、というより、公共の医療機関であっても経済的なインセンティブは重要なファクターで、採算を重要視することから、日本の病院のようなある意味慎ましやかな病院医療ではなく、ホテルや一流料理店のような煌びやかで豪華な、何でもありの過剰サービス競争が熾烈を極める傾向があった。その結果、医療費が高騰し、資金を調達する側である保険会社が、病院経営者にコストカットやマネイジド・ケアを突きつけた。割を食ったのはアメリカ国民で、萎縮医療、入院日数の短縮という粗忽医療を押し付けられている。

医療費を正しいレベルに戻そう、というのがアメリカで、国民の民度に応じた国民医療費のレベルまで上げようとしているのが日本である。まるで正反対なのだ。戦後60年経って、次第に医療技術は上がり、アウトカムも先進国と肩を並べるところまでやっと来ているところだ。決して社会全体のレベルが世界でトップクラスになったとはいえない。移植医療、遺伝子治療、在宅医療・ホームケアを含めて、さらに進歩前進しなければならない部分は多々あるのだ。

今、滑走路から飛び立とうとしている旅客機と同じく、噴射しているエンジンを絞ったらストールを起こして墜落してしまうだろうことは間違いない。是非、無駄な公共工事は止めていただいて、高度高齢化社会に最も必要な健康維持のための技術、人を幸せにする技術である医療への公共投資をさらに増やしていかなければ、今後国民が安心して消費を楽しむことは出来ないだろう。

健康でなければ、外出も出来ないわけだから、移動手段に出費することはない。美味しいものを食べようとも思わないし、株や証券の取引をやろうという意欲もなくなるだろう。毎日働いて、その結果得たお金を使うことも、心身ともに国民が健康であることが、前提である。

老齢化しても、健やかな家庭を持つことが出来れば、国力を増すことに繋がるわけだ。健康な老人をバックアップするシステム、それが医療システムである。正しい税金の使い道というのは、こうしたシステムにこそ相応しいものだ。

その結果、そのサービスの主体である医療従事者が高給を得て何の問題があろう。正当な競争を勝ち抜き、正当な能力開発に使ったエネルギーと投資に対して、より良いサービスを受けたものがその見返りに正当な料金を支払うのに何の問題があろうか。それを支えるのが自由主義社会であり、資本主義社会である。さらにいえば、日本人の特質として持っている「中庸の得」が、米国のような極端な勝者を作ることを未然に防いでくれるのだから、日本の医療従事者が分相応な財力を持つことには何の問題もないのだ。

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