ドクタープロフィール
ドクター神津
神津院長は昭和52年に日本大学医学部を卒業後、同大学第一内科に入局され、その後、神経学教室が新設されると同時に同教室へ移られました。医局長、病棟医長、教育医長を長年勤められ、昭和63年、アメリカのハーネマン大学およびルイジアナ州立大学へ留学。帰国後、特定医療法人佐々木病院(内科部長)を経て、平成5年に神津内科クリニックを開業された。神津院長の活動は多岐にわたり、その動向は常に注目されている。
2002年6月号 -ドイツの医療は今・・・- backnumberへ
 先日、ドイツで長く開業をしていたS先生の講演を聞く機会があった。

S先生は早稲田大学法学部を出て、ドイツケルン大学医学部に留学、そのままドイツにとどまって、人口2万人の町で開業医をされていたとのこと。すでに定年を迎え(ドイツには、医師の定年制がある)、世界各地での難民救済活動を行っているという老いてなお活発な方である。

「まず、ドイツでは、医師減らし、医者いらず医療を推進するために、あの手この手を使っている」と、細かいデータを示しながらお話を始められた。日本では今、保険制度を政府がいろいろといじっているが、その視野の向こうにドイツの医療制度があるのだな、と感じながら聞いていた。

日本は1億2,000万人の人口に24万人の医師数、アメリカは、2億7,000万人の人口で70万人の医師数、ドイツは8,000万人の人口で35万人の医師で、日本の医師数が多いとはけっしていえない。しかし、医師数を減らす方向に厚生労働省は動いている。これも、どんな根拠なのかはっきりしない。

確かに、1980年代は、世界の潤沢にあるかと思われていた金融資産を裏付けに、世界の医療は右肩上がりに進んでいた。ドイツも同じことで、この頃が最高の水準だったと懐古している医師もいる(ドイツの医療事情/保団連視察〔1997年〕レポートよりhttp://www.geocities.com/CapeCanaveral/Cockpit/8524/german/repo.htm
しかし、次第に世界経済に翳りが訪れ、政府のサイフの口は閉じられていった。

「ドイツの開業医の収入が少ないのをご存知ないとのことですが・・・諸経費を差っ引きますと、一月50~70万円が純利益です。これは勤務医でもあまり変わりない」。

「医師に薬を自由に使わせない政策、ドイツの製薬会社の強いロビー活動とそれによる影響が大変ある」。

「ドイツのEBM・DRGは、医療費を抑えて、慢性疾患を医者に見せないようにする陰謀だ」「それに、ドイツの裁判はいいかげんで、EUの影響が大変強くあり、医療訴訟もやってみないとどんな結果が出るか分らんのです」と、とても我々が想像していたのと違うお話だった。

「それから、日本から介護保険の視察に来て、『ドイツは素晴らしい』と言って帰るのは、いい所、きれいな高級なところだけを見せられているからです。今ドイツでは、福祉施設での老人のイジメが大問題になっている。起こして欲しい、といわれて、起こしたまんま、今度は寝かせに来ない、なんて意地悪をする。自分で食べられない人に、テーブルの上に食事だけを置いて帰ってしまう。で、介護の人に意地悪されたくないから、視察に来た人にも、いい顔する。後で、『あんた、さっきはへんな顔していたね・・・』とイジメられたくないから。介護保険も黒字だ、なんて言っているのは、最初の2年間は何もしないで保険料だけ集めていたからで、当たり前のこと。今では赤字です」。

加えて、「製薬企業(これはとどのつまり世界の財閥、"死の商人"たちと思いますが)が、薬を飲ませるためにとんでもないキャンペーンをしているか・・・」。

「血圧なんか、私の習ったときには160/95だったのに、今じゃ大変低くなった。高脂血症の基準値が下がっているのも製薬会社の陰謀です」。

「ドイツで有名なバイエルは、子会社にジェネリックを作らせて、2,000錠の無料パックを薬局に納めて、処方してもらっている。それでも儲かる、と。で、一人の人が、一生の間に高脂血症の薬を飲むといくら、とかちゃんと計算している」。

聞いていた聴衆から、「日本はそれに比べるといいね、この日本の今の医療体制を守らなくては」と、声があがったのは至極当然であった。

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