石井正教授コラム『継続可能な地域医療体制について』(毎月15日掲載)
石井 正 教授

石井 正 教授

1989年
東北大学卒業
1989年
公立気仙沼総合病院(現 気仙沼市立病院)で研修医となる
1992年
東北大学第二外科(現 総合外科)入局
2002年
石巻赤十字病院第一外科部長就任
2007年
石巻赤十字病院医療社会事業部長に異動
2011年2月
宮城県から災害医療コーディネーターを委嘱
2011年3月
宮城県災害医療コーディネーターとして石巻医療圏の医療救護活動を統括
2012年10月
東北大学病院総合地域医療教育支援部教授就任
2022年
卒後研修センター副センター長、総合診療科科長、漢方内科科長兼任
2021年12月号
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新型コロナウイルスの第5波を乗り越える

先生は宮城県新型コロナウイルス感染症医療調整本部では副本部長を務めていらっしゃいますね。

本部長は東北大学病院の冨永悌二病院長で、私が副本部長です。2020年12月10日からのことを振り返りますと、14市町村からなる仙台医療圏の22の医療機関と連携し、病床の確保、入院調整、軽症者等宿泊療養施設入所調整などを行ってきました。本部員は10人で、東北大学病院、協力病院、統括DMAT、救急やICUの医師で構成されています。彼らが交代で県庁に出務したり、24時間のオンコール体制で陽性者ケアのマッチング、入院やホテル療養での外来アセスメントの調整を実施しました。さらに、重症担当本部員が2人おり、宮城県内の重症病床の調整をしています。2021年10月末までで、累計1898件の入院調整、12754件のホテル入所調整をしました。

先生はどのような調整をなさったのですか。

ホテルで医療支援をする診療科は本院からは、総合地域医療教育支援部、耳鼻科、内科の主要7診療科、外科系の総合外科、脳神経外科、呼吸器外科、泌尿器科、産婦人科、その他仙台市医師会からもご支援を頂くことができ、何曜日は何科が担当するといった調整をしていました。さらに本院看護部からも夜間常駐看護師支援をして頂いています。

軽症者等宿泊療養施設への医療支援はいかがでしたか。

仙台市内に最大で5つのホテルを診療所にして、そのうち4つを東北大学で、1つを仙台市医師会にお願いしていました。そして東北大学で担当した4施設の中の1つを私どもの総合地域医療教育支援部が担い、これに医療機能を付加したのです。

医療機能付きのホテルとはどのようなものですか。

入所した方に東北大学病院の患者IDを発行し、東北大学病院の医師がホテルに訪問診療をするという形です。そうすると、処方ができるんです。薬そのものはホテルに配達してもらえるよう、調剤薬局の手配を行いました。

そこに入所されるのはどのような方々なのですか。

私たちはケアレベルをホテル、医療機能付きホテル、入院と3階層に分けました。医療機能付きホテルには入院未満の比較的高度な医療提供が必要な陽性者が入ります。そうした方々をホテルに集約し、検査、処方、補液、酸素などを提供し、第5波の一番酷かった8月頃は中等症IIの一部の患者さんには酸素や点滴、ステロイドというところまで踏み込んで、泊まり込みで支援しました。東北大学病院の医師のホテル支援実績は2021年11月末で累計1164人となりました。

自宅療養の方はいらっしゃらないのですね。

宮城県は原則として、自宅療養はありません。ただ、小さい子どもさんがいたり、色々な家庭的、社会的なご事情がある方は例外的に自宅療養が認められています。しかし、宮城県としては基本的にはホテルに入っていただく形でやっていきたいということでしたので、東北大学もそれに協力しました。

ドライブスルー型PCR検査外来はその後、いかがですか。

2020年4月21日に東北大学診療所を設置し、大学病院としては全国に先駆けてドライブスルー型PCR検査外来を始めました。2021年10月末時点で累計13235件の検査を実施しました。また、高齢者施設などでのクラスター発生に備え、行政からの要望に応じる形で、施設に出向いての出張PCR検査も行っています。

2021年10月現在ではどのような状態で医療支援をなさっているのですか。

かなり感染状況が落ち着いてきたので、宮城県と相談し、医療機能付きホテルだけを残し、そのほかのホテルは休止しました。

ここまでの新型コロナウイルス感染症への対策を振り返られて、いかがですか。

感染拡大に伴い、宮城県からの要請により、ホテルが1つずつ増えていき、さまざまな診療科のお力添えをいただかなければならなくなりました。そこで内科の張替秀郎副院長に相談したら、「分かった。内科の7診療科を取りまとめるから」と言ってくださったんです。外科は後輩である総合外科の亀井尚副院長に話すと、「それ外科がやります」という話になり、「総合外科だけでなく、外科系の診療科にも声をかけて、連合軍を作りますよ。割り振りもこちらでやりますから、お任せください」とも言ってくれました。学内の皆さんの協力により、どこからも雑音が出ず、スムーズに対策していくことができたと思っています。

(1月号に続く)

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