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八街整形外科内科

 千葉県八街市は千葉県のほぼ中央、成田空港から約10キロの地点に位置する。江戸時代は徳川幕府の放牧地であったが、明治政府の国策により、開墾が進められた。開墾局が千葉県内で開墾を進めた8番目の街ということで、八街の名前がついたと言われている。八街では1896年頃に落花生の栽培を始めたが、土壌が適していたこともあり、現在では全国1位の収穫量を誇っている。
 八街整形外科内科はJR総武本線の八街駅から徒歩で12分の場所にあるクリニックである。医療法人社団八千代会が運営し、整形外科と内科を標榜している。整形外科ではリハビリテーションを積極的に行っている。
 今月は八街整形外科内科の田中由紀夫院長にお話を伺った。

田中 由紀夫 院長

田中 由紀夫 院長プロフィール

1953年に北海道北見市で生まれる。1978年に千葉大学を卒業後、千葉大学肺がん研究室に入局する。千葉大学医学部附属病院呼吸器外科のほか、千葉県立がんセンター麻酔科、千葉県立鶴舞病院(現 千葉県循環器病センター)循環器外科、国保小見川総合病院で研修を行う。セカンドローテーション(後期研修)として、県西総合病院で研修を行う。セカンドローテーションと並行して、西ドイツ(当時)とイギリスに留学する。帰国後は千葉大学第二生理学教室で呼吸生理学を専攻し、1986年に学位を取得する。花輪病院に3年の勤務を経て、東京逓信病院に20年勤務する。2012年に千葉県八街市の八街整形外科内科に院長として着任する。

開業に至るまで

病院風景02

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 父が医師で、静岡県沼津市で開業していました。その姿を見て、「こういう商売はいいな」と思ったのがきっかけでしょうか(笑)。父も呼吸器外科を専門にしていましたが、私が呼吸器外科を選ぶにあたって、父の影響を特に受けたわけではありません。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 鍼灸に興味があり、東洋医学の勉強を始めたんです。東洋医学は勉強すると面白く、東洋医学研究会というサークルを立ち上げ、仲間と活動していました。また、学生寮の管理委員も務めていました。山梨県の山中湖にあった自治寮で、山梨県に協力する形で富士山の救護所も兼ねていたんです。完全な自治寮ですから、予算はありません。村民の治療をしたり、ほかの学生からの宿泊代で運営を賄っていました。私は学生時代から修羅場を見ていたんです(笑)。


◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
 趣味は特になかったですね。学生寮での仕事があったため、毎年ひと夏を寮で過ごしていました。実家にも帰省しなかったので、親からは嫌味を言われていました(笑)。


◆ 専攻を呼吸器外科に決められたのはいつですか。
 卒業する直前です。肺がん研究室は呼吸器内科、肺外科、病理学に分かれているのですが、初期研修のプログラム内容が良かったので、決めました。私は何でも診ることができる医師になりたいと考えていたので、呼吸器だけでなく、消化器や循環器も学べる研修に惹かれました。


◆ そのような研修を受けてみて、いかがでしたか。
 現在のスーパーローテートのような研修でしたので、色々な診療科を広く診る経験ができて、面白かったです。


病院風景03

◆ 当時の西ドイツにいらしたのはどうしてですか。
 日本肺癌学会にハイデルベルク大学の先生が招聘されたのですが、その先生が「お礼に、日本の医師の面倒を見るよ」とおっしゃったので、私が行くことになりました。1年間、研究したのですが、楽しかったですね。


◆ イギリスにも留学されたのですね。
 オックスフォードカンファレンスという会合が立ち上がり、第一回の会合を日光で行ったのですが、そこでオックスフォードの先生と知り合いになったのがきっかけです。その先生からお誘いをいただき、オックスフォードの呼吸生理学教室に留学しました。半年という間でしたが、イギリスも面白かったです。研究の合間にイギリスならではの文化も味わいました。ハイテーブルでの食事など、『ハリー・ポッター』の世界でしたよ(笑)。


◆ その後、花輪病院を経て、東京逓信病院で勤務をなさっています。
 東京逓信病院では健康管理部門にいました。郵便局の職員の健康診断のほか、一般の方の人間ドックなども担当していました。それまでが忙しかったので、少し楽になったと思いましたね。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 このクリニックを運営しているのは八千代会ですから、私は正確には今も勤務医なのです。大学にいた頃は勤務の一方で、研究にも打ち込んでいました。学会などで色々なところに行けたのは良かったと思っています。


開業の契機・理由

病院風景04

◆ 開業の動機をお聞かせください。
 こちらの前のオーナーがご病気のため、引退したいということになったのです。前のオーナーは30代の頃に開業され、当時72歳になっておられました。私は民間の怖さを分かっていましたので、経営はせず、院長職のみをお引き受けすることになりました。クリニック名も変えることなく、そのまま継承しました。


◆ 整形外科内科という名称は珍しいですね。
 前のオーナーがファーストタッチを医師が行い、その後のケアを柔道整復師に繋ぐというシステムを考えたのです。これが時代のニーズにマッチしたようですね。前のクリニックが30年弱もの間、続いてきたのはこの2つの科があったからではないでしょうか。


◆ 開業地の第一印象はいかがでしたか。
 最初は非常勤医師として入職しましたので、人目につきにくいロケーションはいいなと思いました(笑)。一方で、一緒に働くスタッフの印象がとても良かったです。


◆ 八千代会では継承にあたり、マーケティングをなさいましたか。
 私自身は経営にタッチしていませんし、八千代会でもマーケティングはしていないようです。


◆ 開業までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 経営者が変わり、経営方針が分かりにくくなったときは苦労しました。


◆ 医師会には入りましたか。
 個人的に千葉市医師会に入会しています。


病院風景05

◆ 開業当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 看護師が常勤1人、非常勤4人のほか、事務スタッフが常勤、非常勤2人ずついます。また、リハビリに力を入れていますので、常勤4人、非常勤2人います。常勤4人の内訳は柔道整復師が2人、鍼灸師が2人です。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 レントゲン、心電図、エコーのほかは電気治療やリバビリの機械が揃っています。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 前のオーナーのときから何も変えていないんです。広さについてもこんなものかと満足していますね。2階もあります。2階は電気治療のための部屋やスタッフの休憩室になっています。


クリニックについて

病院風景06

◆ 診療内容をお聞かせください。
 整形外科と内科を標榜しています。整形外科は加齢性疾患が多いですね。膝、首、腰などの痛み、肩こり、腱鞘炎などの日常的な不調を診ています。また、骨折、脱臼、捻挫、肉離れ、打撲などの外傷やスポーツ障害も少なくありません。外傷やスポーツ障害は中学生、高校生、大学生が多いです。ただ、あまりにも小さな子どもさんは診ていません。
 内科は一般内科です。風邪、インフルエンザ、発熱、胃腸障害、頭痛などですね。地域の高齢者の方がよく来られています。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 「自分がされたくないことはしない」ということです。患者さんのご希望やニーズをきちんと伺うことにしています。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 検査結果などの数値だけではなく、患者さんの全体を診ることを心がけています。患者さんの人生に寄り添い、少しでもお役に立ちたいです。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 9割が高齢者の方です。このあたりは車社会ですので、徒歩でいらっしゃる方はほぼいらっしゃらないですね。そのためにも駐車場が広くて、良かったです。八街市内はもちろん、成東などの山武市からもいらしています。千葉市内にお住まいの方で、勤務先が八街という方も来院されています。


◆ どのような内容の健診を行っていらっしゃいますか。
 雇入れ時の健康診断のほか、定期的な健康診断など、一般的なものをお受けしています。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 東邦大学医療センター佐倉病院、成田赤十字病院、聖隷佐倉市民病院をご紹介することが多いですが、患者さんの要望があれば、個別に対応しています。


◆ 経営理念をお教えください。
 経営にはタッチしていないので、特に理念はありません。


病院風景09

◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 私がスタッフを教育するというよりも、私がスタッフから教育されている方ですね(笑)。スタッフは皆が仕事に慣れているので、私にも積極的に意見を言ってきてくれます。その意見を聞くことで、勉強させてもらっています。特に整形外科に関しては柔道整復師が詳しいので、「こうした方がいい」という提案があり、その都度、話し合っています。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 最近、ホームページを作ったところです。看板は以前からロードサイドに何枚か出していたのですが、こちらは今後、減らしていく予定にしています。


開業に向けてのアドバイス

病院風景08

 私はいわゆる「雇われ院長」ですので、経営者としての実際の苦労は分かりません。ただ、私は開業医の息子で、妻も開業医の娘ですので、その意味では自分たちで生活をしていくときのきつさは分かっています。開業するなら、その覚悟を持っていただきたいですね。そして、職員との良好な人間関係をしっかりと構築しましょう。

プライベートの過ごし方(開業後)

病院風景07

 趣味はランニングで、フルマラソンのレースに年間5、6回、出場しています。これまで佐倉朝日健康マラソン、館山若潮マラソン、東京・荒川マラソン、富士山マラソン、しまだ大井川マラソン、松本マラソン、函館マラソン、北海道マラソンなどのマラソン大会に出場してきました。タイムもまだ更新中です。ときには100キロマラソンに出ることもあります。妻は以前はレースについてきていたのですが、最近はついてきてくれなくなりました(笑)。

タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図
平面図
八街整形外科内科
  院長 田中 由紀夫
  住所 〒289-1103
千葉県八街市八街に75
  医療設備 レントゲン、心電図、超音波、スーパーライザー、干渉波、低周波、超短波、牽引装置など。
  スタッフ 17人(院長、常勤看護師2人、非常勤看護師4人、常勤柔道整復師2人、常勤鍼灸師3人、非常勤リハビリスタッフ2人、常勤事務3人)
  物件形態 戸建て
  延べ面積 約408.24m²
1階:204.12m²
2階:204.12m²
  敷地面積 約400m²
  開業資金 0円
  外来患者/日の変遷 開業当初150人→3カ月後150人→6カ月後150人→現在160人
  URL http://yachimata.strikingly.com/

2018.02.01 掲載 (C)LinkStaff

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