クリニックの窓教えて、開業医のホント

バックナンバーはコチラ

眼科・目白通りクリニック

園田 有紀 院長

園田 有紀 院長プロフィール

1963年に東京都豊島区で生まれ、高校生のときから新宿区で過ごす。1989年に聖マリアンナ医科大学を卒業後、東京医科大学眼科学教室に入局し、東京医科大学病院で研修を行う。1990年に船橋市立医療センターで研修を行う。1991年に東京医科大学臨床研修医として眼科学教室に勤務する。1994年4月に大月市立病院、1994年10月に日本通運健康保険組合東京病院(現 小石川東京病院)に勤務を経て、1995年に慈生会病院に勤務する。1998年に東京医科大学臨床研究医として眼科学教室に勤務する。2000年9月に東京医科大学眼科学教室を退局する。2001年5月に東京都新宿区下落合に眼科・目白通りクリニックを開設する。2013年8月に近隣の場所に移転を行い、2013年9月に眼科・目白通りクリニックを開設する。
日本眼科学会専門医、日本角膜学会専門医など。日本角膜移植学会、日本眼炎症学会にも所属する。

 東京都新宿区下落合はJR目白駅の西側に広がる地域であり、街の南側には西武新宿線の下落合駅がある。下落合は江戸時代から染色工業の中心地として賑わい、現在も繊維関連の企業が多い地域であるが、高級住宅街としても知られている。大規模工場の跡地を利用した落合中央公園やせせらぎの里公苑など、緑豊かなエリアでもあり、おとめ山公園では近年、ホタルの養殖が行われている。
 眼科・目白通りクリニックはJR目白駅から徒歩5分の場所に2001年に開業したクリニックである。2013年には近隣に移転を行い、内容の拡充を行った。園田有紀(あるき)院長の専門は角膜であるが、開業後は角膜のみならず、眼科一般を幅広く診療し、外来手術も行っている。
 今月は眼科・目白通りクリニックの園田有紀院長にお話を伺った。

開業に至るまで

病院風景02

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 父は建築家ですが、母の実家は福島県で代々続く医師の家系でした。小さい頃の夏休みにはその母方の祖父母の家に5、6人の従姉妹たちと集まり、合宿のようなことをしていたんです。午前中は勉強して、午後はプールに行き、昼寝したあとで畑仕事をするといった田舎の生活を満喫していました。そこで、「将来は何になりたい」という話になり、祖母から「あなたは手先が器用だし、数学が得意なんだから、眼科医なんてどう」と勧められたのがきっかけです。
 もともと母からも仕事をしてほしいと言われていましたし、医師は人と接する、面白い仕事だと思いました。ですから、医師を目指すというよりも最初から眼科医を目指していましたね(笑)。祖父母の姿を見ていましたから、開業することも自然と考えていました。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 水泳部とアメフト部に入っていました。水泳部は夏しか活動しませんでしたが、アメフト部はマネージャーをしていて、面白かったですね。マネージャーの仕事でありがちな洗濯などをすることもなかったです。アメフト部の仲間とは1年に1回の会合で再会しています。私は子どもが大きくなってから、その会合に行くようになったのですが、今もいいお付き合いが続いています。


◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
 テニスが好きでした。大学が自由な校風でしたので、コートが空いているのであれば、自由に使わせてくれたんですよ。


◆ 専攻する診療科が眼科からぶれることはなかったのですか。
 小さいときに眼科と決めてはいましたが、大学生になると外科系全般に興味を持つようになりました。顕微鏡を見ながらの細かい手術などに憧れていたんです。それで、脳神経外科の先生に相談に伺ったりもしたのですが、将来、家庭との両立を考えたときに、やはり眼科だろうと思いました。最終的には6年生のときに決めました。


◆ 東京医科大学の眼科学教室に入局されたのはどんな理由からですか。
 当時の母校の眼科の教授は網膜がご専門でしたが、私は網膜電図検査などにはあまり興味がなく、眼科全般をオールマイティーに勉強したかったんです。それに母校でしたら、自宅から通えないんですね。その点、東京医科大学は自宅からも近く、扱っている内容がオールマイティーで、手術も面白そうでしたし、友達のお兄様がいらしたこともあって、入局することにしました。


病院風景03

◆ 実際に入局されてみて、いかがでしたか。
 忙しい診療科で、思っていた以上に手術も多かったです。患者さんも多く、外来がなかなか終わりませんでしたが、病棟の経験が積めたのは良かったです。また、大学では臨床だけでなく、研究もしなくてはいけません。私は角膜班に配属されたのですが、夜8時に仕事を終えたあと、簡単に食事をして、実験室に向かっていました。毎晩1時ぐらいまで実験をしましたが、結果がなかなか出なかったんです。結果が出ないことも結果なのだと言われましたが、苦しかったですね。でも、研究は資金や人手がかかるものです。そんな仕事を何年にも渡ってさせていただけたのは貴重ですし、有り難いことだと思っています。


◆ 角膜をサブスペシャリティになさったのですか。
 いつの間にか角膜専門になっていました(笑)。最初は「角膜移植ができるよ」という言葉に誘われたのですが、実際は角膜移植以外の手術が多かったです。角膜移植は提供者がいないとできませんから、提供者が増えるといいなと思っています。ただ、眼科治療はかなり進んできていますので、移植する前に症状が落ち着くケースも増えていますね。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 色々な経験をさせていただいた、有り難い日々でした。2年目に船橋市立医療センターに行くことになったときは、医師の伯父から「2年目から外に出るのか」と驚かれたのですが、船橋市立医療センターの眼科は医師2人体制でしたので、しっかりと教えていただいたんです。初めて手術をしたのも船橋市立医療センターです。でも、初めてのときは上の先生から「はい、そこまで」と言われましたけどね(笑)。大学病院にいたら、できなかった経験でした。手術に関してはビデオに録画し、あとで食事をしながら反省会をしたり、ほかの先輩医師にも見ていただきながら、フィードバックを行っていました。私の新人時代は白内障手術での超音波乳化吸引術が主流になりつつあったときなんです。そういう眼科治療の過渡期に勤務医の一人として参加できたことは幸せでした。


開業の契機・理由

病院風景04

◆ 開業の動機をお聞かせください。
 もともと開業して地域医療に携わりたいというのが医師になったきっかけです。同じ人をずっと診て、長くお付き合いしていきたかったんですね。それで、勤務医の経験を十分に積んだと自分で思ったのを機に、開業へと踏み切ることにしました。


◆ 開業地はどのようにして探されたのですか。
 当時は子どもが1人いましたので、自宅に近い場所が条件でした。今の場所からすぐのところでレンタルビデオ屋さんだった物件が空いていたので、そこに決めました。大家さんも地元の方でしたので、とてもよくしていただき、宣伝もしてくださったんですよ。


◆ 開業地の第一印象はいかがでしたか。
 最初は広くないところで開業したいと思っていたので、12坪しかありませんでしたが、気になりませんでした。それよりも下落合三丁目のバス停前であることが良かったですね。目白駅からも徒歩5分ですし、バスは新宿、池袋、練馬に向かっていますので、アクセスは良さそうでした。


◆ 開業にあたって、マーケティングはなさいましたか。
 診療圏調査をしたところ、競合が2軒あったので、数字は悪かったですね。1日15人という結果でしたが、気にせずにやってみようと前向きに捉えていました。夫が勤務医でしたし、最悪の場合は食べさせてもらおうと考えたりもしていました(笑)。


◆ 開業までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 内装のデザイナーとセンスや考え方が合わなかったことですね。私の意見をあまり取り入れてもらえなかったんです。それで、インテリアデザイナーの友達に相談したところ、家具のアドバイスなどをしてくれて、ストレスがかなり軽減されました。


病院風景04

◆ 医師会には入りましたか。
 新宿区医師会に入りました。特に問題なく入れましたよ。


◆ 開業当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 正看護師が1人、准看護師が1人、OMAと事務を兼ねたスタッフが1人いました。事務スタッフは何でもできる人で、レセコンなども大丈夫でした。スタッフには本当に恵まれていますね。


◆ 2013年に今の場所に移転されたのはどうしてですか。
 前の物件が手狭になってきたので、移転を考えていました。前の失敗を踏まえ、今度は気の合うデザイナーにお願いしたいと思っていましたので、友人のグラフィックデザイナーに「この人だなと思える人を紹介してね」と言っていたところ、この物件がたまたま出たのです。お蔭様で、いいデザイナーを紹介していただけましたし、私もその後、自宅で2回、前のクリニックで1回の内装リニューアルを経験していたので、今度は積極的に意見を伝えるようにしました。結果として、とても満足しています。


◆ 移転先をご覧になっての第一印象はいかがでしたか。
 前が鰻屋さんでしたので、いい香りがする中を見学しました(笑)。でも、引き渡しはスケルトン状態だったんです。土まで見えている状態からのスタートでしたから、家を建てるイメージで作っていくことができました。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 移転をしたかった理由の一つがOCTを入れたかったことにありますので、移転に際しては迷わず導入しました。眼科は検査が重要ですので、検査機械は揃えていかなくてはいけないですね。機械は全てリースですが、以前のクリニックに入れたものはペイしています。スタッフがすぐに機械操作を覚えてくれるので、助かっています。


病院風景05

◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 夫が午後から時間を取れるようになりましたので、2診制にしました。今回は32坪と、以前より倍以上のスペースになりましたので、診察室も2室、設けることができました。診察室は清潔第一で、でこぼこをなくすようにしています。また、電子カルテを導入しなかったため、カルテ庫を作りました。
 車椅子で自由に動けるバリアフリーにすること、お手洗いを美しく、過ごしやすいものにすること、スタッフのお手洗いは別に設置することなどがこだわりでしょうか。
 待合室は全面を窓にして、明るくしています。かなり広くなりました。以前はバス停の椅子に座らないといけない患者さんもいらっしゃいましたからね(笑)。待合室の仕上げには時間がかかりました。待合室には娘が描いてくれた絵も飾っています。


クリニックについて

病院風景06

◆ 診療内容をお聞かせください。
 角膜、白内障、網膜、緑内障、各眼疾患といった眼科一般、視力、眼圧、精密眼底検査、静的精密視野検査、角膜形状検査、コンタクトレンズ検査、OCTなどですね。それから、レーザー光凝固術、麦粒腫や霰粒腫といった疾患の外来手術も行っています。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 患者さんの眼だけでなく、心まで受け止めることができたらと思っています。眼瞼が下がってしまった患者さんがいても、私と会話するだけで治ってしまえば嬉しいですね。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 高齢の方と子どもさんが中心です。幼稚園や保育園が近くにありますので、眼に砂が入ったり、打撲や結膜炎で来る子どもさんが多いですね。小さい子どもでも、こちらが工夫すれば眼底を見せてくれるんですよ。


◆ 健診はどのような内容で行っていらっしゃいますか。
 近くの小学校、中学校の眼科健診をお受けしています。幼稚園が付属している小学校もあるので、幼稚園の子どもさんも診ています。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 近くの聖母病院が多いですが、手術でしたら東京医科大学病院、網膜でしたら日本大学病院と、それぞれの強みのある病院を紹介しています。患者さんがほかの疾患で通っている病院を伺ったりもしますので、患者さんごとにかなり変えていますし、紹介先は広範囲に渡っています。


病院風景07

◆ 経営理念をお教えください。
 スタッフに恵まれていますので、経営はとてもうまくいっています。今後は地域に密着しながら、新しいことに挑戦していきたいですね。具体的には加齢黄斑変性症に対する治療を始めたいと考えています。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 その都度、気づいたことを伝えていますので、ミーティングはほとんどしていません。しかしながら、年に1回、安全対策のためのミーティングを行っています。スタッフを薬担当、待合室担当などと担当に分け、「雨の日に床を濡らさないためには」といった問題を出し合って解決に繋げています。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 ホームページと、患者さんが通り過ぎてしまわないようにクリニックの外に看板を出している程度です。日々、真面目に丁寧な診療をすることが増患対策だと思っています。


開業に向けてのアドバイス

 内装の業者の方は気の合う人にしましょうということですね。それから、開業した先輩医師の話をよく聞いてください。私は開業前にある薬が手に入らないことに気づき、とても慌てました。どうにしかして手に入れる方法はないかと先輩に伺ったら、先輩がその薬を持ってきてくださったんです。そういった周りの人に支えてもらえるかどうかということも大切なのだと思います。

プライベートの過ごし方(開業後)

 中国茶、特に台湾茶が好きなんです。夜中に一人で楽しんでいます(笑)。

タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図

クリニック概要

眼科・目白通りクリニック
  院長 園田 有紀
  住所 〒161-0033
東京都新宿区下落合3-15-20 目白大和田マンション1階
  医療設備 オートレフケラトメーター(屈折・角膜曲率測定)、ノンコンタクトトノメーター(眼圧測定)、ハンフリー自動視野計、OCT(光干渉断層計)、視力訓練機(ワック)、レーザー光凝固装置など。
  スタッフ 10人(院長、非常勤医師1人、常勤看護師1人、常勤OMA<眼科コメディカル>2人、非常勤ORT<視能訓練士>1人、非常勤事務3人、非常勤事務兼ORT学生1人)
  物件形態 ビル診
  延べ面積 32坪
  敷地面積 32坪
  開業資金 開業時2000万円、移転時2000万円
  外来患者/日の変遷 開業当初15人→3カ月後18人→6カ月後20人→現在40人
  URL http://www.ganka.cc/

2015.05.01 掲載 (C)LinkStaff

バックナンバーはコチラ

リンク医療総合研究所 非常勤で働きながら開業準備