クリニックの窓教えて、開業医のホント

バックナンバーはコチラ

いびき・睡眠時無呼吸症候群の専門クリニック

院長

川原 誠司 恵泉第二クリニック・世田谷睡眠呼吸センター院長プロフィール

 1970年に長崎県に生まれる。1994年に日本大学医学部を卒業し、日本大学医学部附属板橋病院で研修を行う。その後、銚子市立総合病院呼吸器科医員、日本大学医学部附属板橋病院呼吸器内科助手、社会保険横浜中央病院呼吸器科医長を歴任し、2006年に日本大学で医学博士号を取得する。2008年に恵泉第二クリニックの世田谷睡眠呼吸センター院長に就任し、現在に至る。日本内科学会専門医、日本呼吸器学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本睡眠学会認定医、日本気管食道科学会会員、日本呼吸器内視鏡学会会員。

 東京都世田谷区の恵泉第二クリニックは京王線千歳烏山駅から徒歩2分ほどの商店街の中に位置する。世田谷睡眠呼吸センターと耳鼻咽喉科を標榜し、一般的な耳鼻科の治療と現在、日本で約200万人の患者がいると言われている睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療を行っている。SASは睡眠中に呼吸が止まり、それによって日常生活に様々な障害を引き起こす疾患で、40~50代の働き盛りの人に多い病気である。そのため、会社帰りにも通いやすいよう夜の診療も行い、検査のための入院施設や専門の技師と機器を揃えている。日本ではこの病気があまり知られていなかった10年以上前からSASと関わり、2008年から世田谷睡眠呼吸センターを統括している川原院長に、睡眠時無呼吸症候群を専門としたきっかけやクリニックの特徴などについてお話を伺った。


開業に至るまで

病院風景

◆ 医師を目指した経緯をお聞かせください。
 高校のとき、化学の授業が好きで、薬学に興味を持ちました。しかし、医学部の方が職業の選択の幅が広がると思い、日本大学医学部に進学し、医師の免許を取りました。

◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 2年生までバスケット部に所属していました。体育会でもあり活動はとてもハードでした。3年生からは同好会のテニスサークルに転部し、勉強により専念できるようにしました。当時はがんなどの治療に関心を持っていました。

◆ どのような基準で専門を選ばれましたか
 大学を卒業後は日本大学医学部附属板橋病院で3年ほど研修を受け、1997年から関連病院の銚子市立総合病院呼吸器科に入局しました。もともと化学に関心があったので、最初は抗がん剤や抗生剤の開発をしたいと思っていたのですが、患者さんを診ているうちに呼吸器に惹かれるようになりました。最初は肺気腫や喘息などの呼吸不全の治療を経験しましたが、呼吸器科では患者さんの辛い症状が治療で改善していくことが多かったんです。そういうところに、とても遣り甲斐を感じましたね。
 また研修が終わった頃、時間ができて趣味でトライアスロンを始めました。そうしたスポーツをするうちに運動生理学にも興味を持つようになり、肺機能室で運動負荷試験などを行っていたんです。そのときの室長の先生が睡眠時無呼吸症候群を専門に研究されていたので、私も睡眠時無呼吸症候群に関わることになりました。1999年には、この分野の有名な医師がいたハワイ大学で研修も受けています。


開業の契機・理由

◆ 恵泉第二クリニック・世田谷睡眠呼吸センター院長に就任されたきっかけはどのようなものだったのですか。
院長 大学病院と関連病院には14年ほどいましたが、勤務が長くなってくると、研究や学会発表に時間が費やされることが多くなりました。治療以外の仕事が増えて、自分のやりたい仕事や趣味ができなくなってしまったので、現職に就く事を考えました。

 恵泉第二クリニックは、私が院長に就任する6年前にオープンしていたのですが、開業当初の院長先生の事をたまたま知っていたので、お話を聞くこともできました。収入や休みなどのバランスも良く、何よりも『睡眠時無呼吸症候群』を専門として仕事ができる点が気に入りました。

◆ 世田谷睡眠呼吸センターのコンセプトをお聞かせください。
 睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まり、それによって日常生活に様々な障害を引き起こす疾患です。そうした睡眠呼吸障害の治療を周囲の医療機関と協力し、患者さんのニーズに合わせて行っていくことをコンセプトとしています。


クリニックについて

病院風景 ◆ 治療方針をお聞かせ下さい
 患者さんの立場に立った治療を行い、検査も必要最低限にしています。SASの検査は1泊入院が必要になりますが、他の病院では5万円から6万円かかるところを、3割負担の健康保険の場合、当院では1万5000円程度で質の良い検査を行っています。私が院長に就任してから、ホームページに料金も明示するようにしましたので、今ではネットで検索して来院される方が多いですね。
 SASを呼吸器内科の一部として治療を行っている病医院はなかなか患者さんに十分な説明ができません。しかしながら当院ではSAS専門のクリニックとして、できる限り丁寧な説明を行い、症状が安定したら地元の病医院にお返しするようにしています。
 併設している耳鼻咽喉科の方では一般的な治療を行っていますが、SASも耳鼻咽喉科の治療で治ることがあります。鼻の通りが悪いと無呼吸になりやすいので、その治療をしてもらったり、大きい扁桃腺を取ってもらったりなど、耳鼻咽喉科と一緒に行っているメリットは大きいですね。

◆ 検査・治療はどのように行われているのでしょうか。
 1泊入院し、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)という検査を行います。これは患者さんの身体にセンサー類を装着し、睡眠中の脳波や心電図、呼吸運動、動脈血酸素飽和度などを計測して、睡眠時無呼吸の有無や程度、そのほかの睡眠障害の有無を調べるものです。
 治療はCPAP(持続陽圧呼吸)療法といって、CPAP装置からホース、マスクを介して空気を気道へ送り、常に圧力をかけることで、空気の通り道がふさがれないようにします。CPAP療法は、検査を行って一定の基準を満たせば健康保険の適用になりますが、月1回の定期的な外来受診が必須です。また、糖尿病や高血圧を伴っている方が多いので、栄養指導などの生活習慣の指導も行っています。

◆ 患者さんは、どのような方が多いですか。
 当院は世田谷区で唯一、日本睡眠学会が認定している医療機関です。睡眠検査を行う十分な設備とスタッフを揃えているため、地域の基幹病院や診療所から、検査のみで来院される方も多いですね。ほとんどがいびき、睡眠時無呼吸症候群の患者さんで、最近はうつ病など精神疾患のある方もいらっしゃいます。マスメディアがSASを取り上げることが増えたためか、本人は気付かなくても、家族にいびきや無呼吸を指摘されて来院するケースもよくあります。近年、CPAP治療を必要としない軽症の患者さんが多く、その場合は歯科でマウスピースを作製し、睡眠、衛生、減量などの生活習慣の指導を行っています。

◆ 診療に関して、工夫をされていることはありますか。
 SASにCPAP治療を行う場合、それを習慣化していくことが大切です。治療の導入時には、その効果と必要性を十分理解していただくようにし、最初の3カ月は患者さんの訴えをよく聞いて、問題点を解決する努力をしています。
外来は、忙しい中で毎月通院される患者さんの待ち時間を少なくするため、完全予約制にしています。またSASは働き盛りの方に多い病気なので、平日は午後から始めて20時まで、火曜日は21時まで診療を行い、会社帰りにも通院しやすいようにしています。

◆ そのほか、クリニックの特徴があれば教えてください。
 耳鼻咽喉科も併設しているので、鼻や喉の専門的な診療を受けることができます。また、SASの終夜睡眠ポリグラフは検査技師5名が担当し、外来には専門の技師が常時2人以上いますので、マスクや機械のトラブルなどにすぐ対応することが可能です。栄養士も患者さんの来院時間に合わせて来てくれますので、希望があれば食事内容について相談することができます。

病院風景 ◆ スタッフの教育はどのようにされていますか。
 スタッフが患者さんの気持ちになって対応ができるように指導しています。

◆ どのような増患対策をなさっていますか。
 私が院長に就任してから、ホームページを専門の制作会社にリニューアルしてもらい、より分かりやすいものに変えました。また、市民講座で講演をしたり、テレビや雑誌の取材も受け、患者さんを紹介してくれた病院には、丁寧な返事を出すようにしています。その結果、月に約350名だった来院数も今は約550名と、1.5倍以上に増えました。また、大学のOBの集まりがあるときには名刺を渡して挨拶をするようにしていましたが、そうした先生方が患者さんを紹介してくださることも多く、とても感謝しています。


院長のプライベート

◆ ご趣味について、お聞かせください。
 研修医生活が終わってから時間ができたので、トライアスロンを始めたのですが、2000年に膝を痛めてしまいました。その頃、後輩に釣りに連れて行ってもらう機会があり、それから毎月行っています。マグロやヒラメ、タイ、カンパチなど様々な魚を釣りますが、獲れた魚で友人と宴会をするのが楽しみですね。



タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図

クリニック概要

恵泉第二クリニック

  院長 川原 誠司
  住所 〒157-0062
東京都世田谷区南烏山4-12-10 フロンティアビル2階
  医療設備 レントゲン / 心電図 / スバイロメトリー / ポリソムノグラフィー / パルスオキシメトリー / 簡易睡眠検査 / 聴力検査
  スタッフ 10名
  物件形態 ビル診
  延べ床面積 60坪
  開業資金 8,000万円
  外来患者 / 日の変遷 開業当初 10名 → 3ヵ月後 15名 → 6ヵ月後 20名 → 現在 28名
  URL http://www.sleeping.jp/

2011.05.01.掲載 (C)LinkStaff

バックナンバーはコチラ

リンク医療総合研究所 非常勤で働きながら開業準備