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名医よりも良医でありたい「心の内科医」

間宮 良美 院長

三木 治 院長プロフィール

 1953年東京都生まれ。日本大学医学部卒業後、第3内科(消化器内科)に入局。同心療内科研修を終え、医学博士号修得。1990年に心身医学認定医。日比谷国際クリニック院長をへて、2004年に三木内科クリニックを開業。専門は心療内科、消化器内科。主な著書に『「軽症うつ」を治す』(洋泉社)、『うつの治し方』(成美堂出版)など。

 三木内科クリニックはJR神田駅西口そばに開業して5年目を迎える。小さな商店が軒を並べ、雑居ビルには大手企業に混じって小さな事務所が看板を掲げる中に三木内科クリニックはあり、三木治院長が50歳のときに開業した。50歳での開業は満を持しての開業と言える。三木院長は消化器内科が専門だが、心療内科認定医の資格も持っている。心身症の多くは消化器症状の身体症状が出ることが多い。患者さんの何気ない一言から心の病を見抜く三木院長は近隣のサラリーマンやOL、商店で働く老若男女にとって余人をもって代え難い存在である。


開業前後

病院風景03

 三木院長は1980年に日本大学医学部を卒業後、すぐに第3内科に入局した。ここで8年間、消化器内科医としての研鑽を積む一方、心療内科でも研修を行った。その後、日比谷国際クリニックに転身し、15年勤務し、院長となった後に神田に三木内科クリニックを開設した。

 「両親の姿を見て医師になろうと思ったという人が多いようですが、私の父親は普通のサラリーマンでした。高校生のときに、医師という職業もいいなと単純に思ったくらいのことで、特別な思いはありませんでしたね。」

 職業選択の動機は一般の高校生と大きな違いはなかったが、医学部を卒業して医局に入ってから、医師という職業の様々な顔に触れることになる。

 職業選択の動機は一般の高校生と大きな違いはない。

 「医局に入ったときは内視鏡の専門家になろうと思っていました。カメラが好きだったんですよ。ところが臨床経験を積むうちに内視鏡検査をして異常はないのに、患者さんは症状を訴えるということを何度か経験し、心療内科を勉強しようと思いました。」

 日比谷国際クリニック時代に懇意にしていた調剤薬局の社長が、神田にオーナービルを所有しており、テナントとして進められたため。一期一会の出会いを大切にするのは患者さんだけではない。

 「お互い気心が分かっているので、借りる方も貸す方も安心でしたね。」

 医局時代、そして日比谷国際クリニック時代に身体症状の背後にある心の病を診る目を養い、クリニック経営の基礎も学んだ上で、満を持しての開業だった。

 「日本では専門医がプライマリケア医より上のような風潮がありますが、ゼネラリストは広い医学知識と経験が要求されます。私たち開業医はゼネラリストという名の専門医でなければなりません。」

 三木院長は内科医だが、サブスペシャリティは心療内科であり、内科医として身体症状を診て、その背後にある心身医学的な問題を見抜く洞察力を合わせ持っている。

 「たとえば軽症うつの初期症状は気分と体調の不良という、一見、誰でもあるような症状が特徴です。あるいは社交(社会)不安障害は精神疾患ですが、患者さんはそこから派生した様々な症状に悩んでおられます。そうした患者さんは身体症状によって診療科を選ぶので、私たちのようなプライマリケア医が、身体症状の背後にある心の病を見分ける目を持つことが必要なのです。」

 うつ病は人口の3%が罹患するという。社交(社会)不安障害も大規模疫学調査で人口の3~13%が罹患していることが明らかにされているが、身体科の医師の認知度はまだ低いと言わざるをえない。したがって内科医である三木院長がプライマリケア医の立場から軽症うつ病や社会不安障害に積極的に取り組む意義は大きい。

 「神田駅のそばですから、患者さんはサラリーマン、OL、商店で働く方が大半です。地域のかかりつけ医として体が不調なときに気軽に声をかけてもらえるような存在でありたいと願っています。」

 診察時間は月、水、木、金曜日が10:00から13:00と15:00から18:00までとなっている。水、土曜日が10:00から13:00までである。2004年12月に開業以来、毎日40~50人の診察にあたっている。

 「増患対策というものをあまり考えたことがありませんでした。開業すると、日比谷国際クリニック時代の患者さんが受診してくれましたし、順調に患者さんは増えて、ここ数年は1カ月あたり1000人前後の患者さんを診ています。」

 親しみのこもった笑顔と患者さん第一に考える診療姿勢、それに優れた医療技術で地域住民の信頼に応えている。クリニックのドアを開けると、木の温もりが心地よい。昨今、レストランと見まがうようなおしゃれな空間を演出するクリニックも珍しくないが、フローリングの床と腰壁まで木目調の院内はシンプルであり、清潔感が漂う。壁面には画家でもある奥様が描いた、患者さんの心を癒すような小品が並び、待合室のソファに座ると生け花も鑑賞できる。居心地のよい空間を演出するだけでなく、一方では患者さんのプライバシーにも配慮している。

 「診察室はドアで仕切られているので、私以外に声を聞かれる心配はありません。」

 患者さんへの配慮は座る椅子にもうかがえる。三木院長が座る椅子と患者さんが座る椅子はペアになっているが、患者さんの椅子は背もたれが低く、椅子車がついていない。

 「椅子車がついているとお年寄りなどには不安定なんですね。背もたれが低いのは背中を診察するためです。患者さんに後ろを向いてもらうのではなく、私が立ち上がって患者さんの背後に回ります。偉そうにしたくないですからね。」

 20数年前の日本医学会総会で「患者が丸椅子で医師が背もたれのある立派な椅子に座るのはおかしい」という椅子論争があった。「背もたれがあったら背中を診察するのに不便」という意見もあったが、三木院長考案の椅子ならそんな心配も杞憂だろう。

 「当院では風邪や喘息、気管支炎などの治療のほか、糖尿病、高血圧、高脂血症といった生活習慣病治療、メタボリックシンドロームの診断、さらには健康診断も行っています。」

 それに加えてプラセンタ注射、にんにく注射、ダイエット注射など自費診療ではあるが、ニーズの高い治療も行う。にんにく注射はスポーツ選手や芸能人にも人気の高い治療法で、疲労回復、冷え性改善に効果があるとされる。忙しいサラリーマンなどには喜ばれる治療法であろう。

 看護師、事務などスタッフは4名いるが、三木内科クリニックで特筆すべきことの1つは、開業以来、スタッフが1人も辞めていないことだ。患者さんばかりでなくスタッフにとっても居心地のよい職場環境となっている。スタッフ間のコミュニケーションがよい施設は患者さんへの配慮も行き届く。

 「スタッフに『嫁にも行かず、いつまでウチに勤めるの?』なんて言ったこともありますが、『大丈夫、結婚しても働きます』と逆襲されました(笑)。」


地域の医療環境

病院風景09 開業医にとって地域の医療環境は重要である。病診連携をスムーズに行うためにも近隣に総合病院、基幹病院が存在することが望ましい。三木内科クリニックの診療圏には三井記念病院、三木院長の出身大学である日大駿河台病院、東京逓信病院といったこの地域を代表する施設がある。

 「CTやMRI検査が必要なときは大病院よりも融通がききやすい施設にお願いしています。」


院長のプライベート

 学生の頃はカメラが好きでしたが、最近は撮ることも少なくなりました。20年くらい前から乗馬を始めたのですが、これも時間がなかなか取れません。しかし時間があれば、たまにやります。家に帰れば愛犬と遊んでいますね。診察室での仕事が大半なので、休日にはできるだけ屋外で手足を伸ばしたいとは思っています。


開業に向けてのアドバイス

病院風景05  若い頃には特定の専門領域を究める専門家になりたいと思うものです。日本にはそういう専門家を諦めた人が開業してプライマリケア医になるのだという、ゼネラリストに対するネガティブな理解があるように思われますが、実はゼネラリストというのは、幅広い医学知識と経験が要求されます。ですから、開業するときにはゼネラリストというスペシャリティを大切にしてほしいですね。若い頃に学んだ、あるいは勤務医時代に研鑽を積んだ専門技術や知識に固執せずに、あらゆることを吸収して日常臨床に生かす努力が必要です。さらに、周囲に多くの専門医を紹介できることも大切です。患者さんを紹介して「良い先生を紹介していただきました」という評価は自分自身に帰ってきます。大学病院や有名病院を紹介しただけではそういう評価は得られません。名医だけでなく良医を紹介できる人脈、そして自分自身が良医であるために努力することが重要です。


患者さんから見た三木院長

 三木院長が開業して以来、お付き合いしているという花屋さん「フローリスト東京花壇」の大藪克彦さんご夫妻とお嬢さんの陽子さんに三木院長の人となりを聞いた。

【三木院長とのお付き合いは長いのですか?】
 先生が開業したときからのお付き合いです。ぶらりと店に寄っていただいて、それからかかりつけの先生になっていただいています。お花も時折買っていただいています。

【三木先生のよいところは?】
 とても話しやすい先生ですね。主人(克彦さん)は糖尿病があって、血糖値を測る朝は朝食を食べてはいけないそうですが、「1回くらい大丈夫。食べてもそんなに変わらないよ」と、杓子定規にならず、患者の気持ちをとてもよく分かってくださいます。だから家族だけではなく、従業員も全員が何かあると先生に診ていただいています。(篤子夫人)
 片頭痛や突発性難聴になったりすることがあって、そんなときには三木先生が頼りです。患者さんの痛みをよく分かってくださるので、ストレス関連の病気を診てもらうことが多いのですが、とても安心感があります。(陽子さん)

【三木クリニックのよいところは?】
 癒しの効果があります。クリニックに行って、先生に話を聞いていただくだけで気持ちが軽くなります。体の異常を治していただくだけでなく、精神的な面でも癒されます。(陽子さん)

【取材協力】
(有)フローリスト東京花壇
URL:http://www.tokyokadan.jp/
E-mail:flowers@tokyokadan.jp


タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図

クリニック概要

三木クリニック

  院長 三木 治 氏
  住所 〒101-0047
東京都千代田区 内神田3-14-8 ニシザワビル1F
  医療設備 -
  物件形態 ビル
  延べ床面積 27.3坪
  開業資金 -万円
  URL -
地図

2010.01.01.掲載 (C)LinkStaff

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