HOSPITAL INFO - 沖縄県立宮古病院の運営・経営方針

1．運営・経営方針

　沖縄県立宮古病院では運営や経営にあたり、「3つの地域」をモットーにしている。1つ目は「地域医療支援病院」の認可を得ることだ。

　「当院は宮古群島における中核病院であり、救急医療、急性期医療、がん診療、周産期医療、感染症指定病院、災害拠点病院など、色々な機能を持っています。そういった機能を保ちながら、地域医療支援病院に昇格したいと考えています。そのためには地域の開業医の先生方と役割分担をしなくてはいけません。紹介と逆紹介をきちんと振り分けるなどの準備を順調に進めているので、うまくいけば2021年に昇格の見込みです。地域医療支援病院になれれば、DPCの係数が上がり、そのほかの加算もつきますので、収益増になります。スリムな病院経営を行うための過渡期を迎えています。」

　紹介率を上げる取り組みには苦労があったという。

　「私が医療部長に就任した2005年に最初に取り組んだのですが、宮古島の医療文化がまだそこまで熟していなかったのです。どうして紹介状がいるのだ、どうして診てくれないのだという住民の皆さんからの不満の声が上がりました。そこで、住民の皆さんに一つ一つを説明して回りました。その反省を活かし、時期を待とうということになったのです。しかし、新しく赴任してきた医師たちは今は大きな病院の医師とかかりつけの診療所の医師が共同で主治医になる時代なのだと教わっているので、そうした医師が増えてくるにしたがって、紹介率も逆紹介率も上がってきました。当初は40％に過ぎなかった紹介率が今は80％近く、逆紹介率も70％あります。」

　本永院長は地域医療支援病院の指定を取り、後述する「ぴきあす゜ネット」により、患者さんの健康増進に繋げたいと願っている。

　「高品質医療とは技術はもちろん、患者さん中心の医療を行うことです。患者さんに説明し、同意していただき、納得していただいたうえで進めていかなくてはいけません。時間をかけて寄り添う形で、患者さんにもご家族にも寄り添うと、医療の質が高くなります。技術だけではありません。私たちは技術研修もさることながら、患者さんに寄り添うかたちで医療を進めていきます。それから患者さんの個人情報保護を徹底して守る医療のスタイルを実現したいと考えています。」
 

2．地域連携

　「3つの地域」の2つ目が沖縄県宮古島地域医療・介護情報連携ネットワークである「ぴきあす゜ネット」を地域連携室に立ち上げたことだ。

　「これは当院、薬局、介護施設のネットワークです。これから、この地域は高齢者が増加し、超高齢社会が進みます。これに対応するために作りました。最初は個人情報保護の観点から、県にストップをかけられたのですが、先日ようやく審査を通りました。こうした地域医療ネットワークは沖縄県では初ですし、全国でもまだ珍しいものです。ぴきあす゜ネットは患者さんの各検査や投薬情報などの一部の診療情報を共有できる医療・介護情報連携ネットワークです。患者さんが飲んでいる薬の種類や期間、アレルギーの有無などの診療情報を共有することで、より安全で、より良い医療を提供できます。」

　3つ目は地域包括ケアシステムの計画中である。

　「宮古島市の高齢化に対応するために、院内に地域包括ケアシステムの病棟を作ります。これにより、病床利用が効果的、効率的になり、経営も良くなります。」

　沖縄県立宮古病院では開放型病床も盛んに利用されている。

　「当院としても地域に利用されることを望んでいますので、地域の開業医の先生のご依頼で卵管造影検査やマンモグラフィー検査にご協力したり、産婦人科の開業医の先生と当院の医師が一緒に手術に入ることもあります。」
 

3．今後の展開

　当院の基本方針はSMILE＋PCです。以前はSMILEだけでしたが、私がどうしてもPCを入れたかったのです（笑）。PはPersonal Information Protection、個人情報保護です。そしてCはCulture of Corporation、助け合いの文化です。個人情報を尊重するという文化を作り、組織内のあらゆる人間が助け合っていきたいものです。人々が助け合わないとうまくいかないことを私自身も実感しているので、これを何らかの形で構造化していきたいと考えています。新型コロナウイルスの発生は当院としても大変な事態でしたが、皆の協力で乗り越え、チームとしてさらに成長しました。皆が主体的に動くことができれば、感染症や災害にあたっても、自分で感知して主体的に行動を取っていけるはずです。トップが全部をマネジメントして牽引していく形ではなく、一人一人が助け合える文化を身につけて、チームの一員として宮古島を良くしていくのだという主体的な考え方をしてほしいと願っています。