「医師として」 - ベテラン産業医のF先生（後）

　F先生は現職で老健施設の施設長職に就いておられたのですが、そこではお亡くなりになる方もおられる為、夜間であればお看取りに出動せざるを得ず、若い頃なら何ともなかったことも60代半ばを超えると翌日の疲れが酷く、回復までに相当の時間が必要なので、日勤だけで済む仕事を探して欲しいとのご相談でございました。

　ただ、日勤のみでありつつも臨床に戻る考えは全く持っておられず、夜間出動のない老健や特養などの仕事があれば理想と仰られるも通勤圏内には希望にマッチする求人はなく、新たな分野でのご提案が必要になりました。
そこで、F先生が過去に8年間の経験がある産業医について、再度提案させて頂いたところブランクはあるが自身を必要としてくれるところがあれば、ぜひ前向きに考えたいと仰られ、厳しい希望条件の中に一筋の光が射した様に感じました。

　私はF先生との電話を切ってからすぐに通勤圏内での産業医求人をピックアップし、現状の募集状況の確認及び年齢面の問題はないのかなど、企業が求める条件面についても確認を行い当日中に2件の求人を見つけることが出来ました。
F先生への報告は夜分になってしまいましたが、取り急ぎ進捗について一報を入れさせて頂いたところ、想像以上のスピードだった様で大変驚かれ、少なくとも1ヶ月～2ヶ月はかかるだろうと覚悟していたので良い意味で拍子抜けですと豪快に笑い飛ばして下さいました。
翌週には面接設定をさせて頂き、人柄の良いF先生は年齢面のハードルを物ともせず、その場で内定を勝ち取ることが出来ました。

　F先生のご連絡から10日間程度の中でご転職先が決まると言う、あらゆる縁も運も引き寄せた珍しいケースではありますが、一つのメール、些細なメールをあきらめずに「継続」することの大切さを改めて学ばせて頂く貴重な経験となりました。