小児科医院を廃業した私が、美容クリニック院長という予想外の道を選んだ理由
開業していた小児科医院の廃業――すべてを失った日
小児科医として20年以上、子どもたちの健康を守ることに人生を捧げてきました。念願だった自分のクリニックを開業したときは、これからの人生が確かなものになったと思いました。しかし、スタッフ間のトラブルが深刻化し、修復不可能な状態にまで発展。やむなく医院を廃業するという、想像もしていなかった結末を迎えることになりました。50代で無職。医師免許はあるけれど、経営者としての挫折感と、患者さんに申し訳ないという気持ちが交互に押し寄せてくる日々。それでも、いつかまた小児科のクリニックを開きたいという夢だけは、消えませんでした。
小児科の求人は驚くほど少なかった
イードクターのサイトから問い合わせをして、すぐにコンサルタントの方と面談することになりました。小児科に限定して求人を探していただいたのですが、県内で見つかったのはわずか3件。1件目は通勤に遠すぎる。2件目は給与が低すぎる。3件目は興味のある分野だったものの、通勤に1時間半。どれも決め手に欠け、私自身も条件やエリアを譲歩しようかと考え始めていました。小児科の求人がこれほど少ないとは。改めて現実の厳しさを突きつけられた思いでした。
「美容クリニック院長」という提案に驚いた
そんなとき、コンサルタントから予想外の求人を提案されました。新規開院の美容クリニックの管理医師。週4日勤務で年俸3200万円。年齢・経験不問で研修あり。正直、最初は冗談かと思いました。小児科一筋で生きてきた自分が、美容クリニック。しかも繁華街のど真ん中。畑違いにもほどがある。でも、具体的な研修制度があること、そして何より自宅から歩いて通える距離であること。考えれば考えるほど、この求人には合理的な魅力がありました。「経験不問で研修ありなら応募したいです」。自分でも驚くほど早く、翌日には返事をしていました。
面接に勝負をかけた本当の理由
面接当日、私はコンサルタントに「この面接に勝負をかけます」と伝えました。その言葉の裏には、隣県に住む母のことがありました。医院を廃業して無職になった息子を、母は会うたびに泣いて心配していたのです。これ以上、心配をかけさせたくない。その一心でした。面接では経営者から施術内容やサービスの詳細な説明が1時間以上続きました。美容の経験がない私にとっては未知の世界でしたが、真剣に耳を傾けました。コンサルタントも私の人柄や誠実さを懸命にアピールしてくれました。結果はその場での即採用。自分の新しい道が開けた瞬間でした。
小児科の夢を叶えるための、遠回りの近道
美容クリニックで働くことは、私にとって目的ではなく手段です。ここでしっかりと稼いで経営を学び、数年後に本当の夢である小児科クリニックの再開業を実現する。それが私の計画です。畑違いの分野に飛び込むことへの不安はもちろんありました。でも、研修制度があり、経営者の方も理解を示してくれた。何より、母に「もう大丈夫だよ」と言えるようになったことが、何物にも代えがたい喜びでした。医師のキャリアは一本道ではありません。廃業という挫折を経験した私だからこそ言えます。予想外の道にこそ、次のステージへの扉が隠れていることがある。大切なのは、プライドに囚われず、目の前のチャンスを掴む勇気を持つこと。そして、一緒に可能性を探してくれるパートナーに出会えるかどうかだと思います。