専門医のプライドか家族の生活か。40代消化器内科医が選んだ「美容クリニック院長」への転身

2026年1月16日 医師S

開業を見据えた「40代の決断」。高年収とマネジメント経験を求めて

開業を見据えた「40代の決断」。高年収とマネジメント経験を求めて
消化器内科医としてキャリアを積んできた私にとって、40代という年齢は一つの節目でした。将来的なクリニック開業を視野に入れ、現在の病院勤務を離れ、より経営に近いマネジメント経験を積める環境、そして何より開業資金を蓄えるための高額な報酬を求めての転職活動。2026年現在、インフレの影響もあり、都市部での開業資金は以前にも増して高騰しています。これまで私は、本職の病院勤務に加え、休日や夜間を削ったアルバイトを掛け持ちし、総収入は3,000万円近くに達していました。しかし、家族との時間や自身の体力を犠牲にし続ける働き方に限界を感じていたのも事実です。「週4〜5日の勤務で、今の高収入を維持しつつ、クリニック運営を学べる場はないか」。そんな理想を抱き、私はコンサルタントに相談を持ちかけました。

理想と現実のギャップ。年収2000万円という「提示額」の衝撃

理想と現実のギャップ。年収2000万円という「提示額」の衝撃
コンサルタントからは、私のスキルを存分に活かせる消化器内科のクリニックを提案されました。そのうちの一件、内視鏡検査に非常に力を入れているクリニックに面接へ向かいました。高齢の患者さんが多く、私の経験を即戦力として期待してくれる、臨床医としては申し分のない環境でした。面接の雰囲気も良く、業務内容にも納得していましたが、後日提示された条件を見て私は立ち止まってしまいました。年収2,000万円。一般的に見れば決して低い数字ではありません。しかし、現状のアルバイトを含めた「3,000万円」という数字から1,000万円ものダウンを意味していました。「専門医としてのスキルアップ」と「家計の維持」。この二者択一を迫られた時、私の心は激しく揺れ動きました。

インター校の学費と家庭の事情。お金を優先せざるを得ない「裏側」

インター校の学費と家庭の事情。お金を優先せざるを得ない「裏側」
なぜ、私がこれほどまでに「3,000万円」に固執しなければならなかったのか。そこには、切実な家庭の事情がありました。私には3人の子供がいますが、全員をインターナショナルスクールに通わせており、学費だけで月に45万円、年間540万円が消えていきます。さらに、長年支えてくれた妻のライフスタイルもあり、世帯支出を急激に抑えることは現実的ではありませんでした。「消化器内科医としてのプライドを守り、年収を大幅に下げるか。それとも……」。私は意を決して、コンサルタントに本音を打ち明けました。「この際、消化器内科の仕事でなくても構いません。他に、今の収入を維持できる選択肢はないでしょうか」と。それは、長年培ってきた専門医としてのキャリアに、一旦蓋をする覚悟を決めた瞬間でした。

予想外の提案。「美容クリニック院長」という新天地への挑戦

予想外の提案。「美容クリニック院長」という新天地への挑戦
そんな折、コンサルタントから半ば驚きを込めて提案されたのが、美容皮膚科クリニックの院長職でした。「週4日勤務、年収2,400万円。さらに経営数字に応じたインセンティブあり」。消化器内科とは全く異なる世界ですが、求めていた「高額報酬」と「マネジメント経験」がそこにはありました。2026年、男性美容の需要拡大や自由診療市場の成熟により、美容クリニックの院長職には、技術だけでなく、医師としての信頼感や管理能力が強く求められるようになっています。「内視鏡の技術を捨てるのか?」という自問自答もありましたが、自分の人生において今最も守るべきものは何か。それは家族の笑顔であり、子供たちの教育環境でした。私は「未知の領域」への挑戦を決め、面接へと向かいました。

2026年のキャリア観。専門性よりも「家族と目標」を優先した先

2026年のキャリア観。専門性よりも「家族と目標」を優先した先
結果として、私は美容クリニックの院長に就任することを選びました。内視鏡を握る毎日は失われましたが、代わりに手に入れたのは、週4日勤務という余裕と、将来の開業資金を確実に蓄えられる安定した高年収、そして「一施設の経営を統括する」という貴重なマネジメントの視点です。「消化器内科医だから、内科系クリニックに行くべきだ」という先入観を捨てたことで、私の人生設計は再び力強く動き出しました。2026年、医師のキャリアはかつてないほど多様化しています。専門医の資格や技術は一生の財産ですが、それに縛られて家族や自身のライフプランを犠牲にする必要はありません。自分にとって「お金には替えられない価値」は何なのか。それを明確にしたことで、私は迷いなく、新しい道を歩き始めることができました。