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がん診療を中心にした、人間味あふれる暖かい病院
長野市民病院

 「遠くとも一度は詣れ、善光寺」といわれる善光寺の門前町として発展してきた長野市は明治以降は県庁所在地として人口約38万人を擁し、長野県の政治や文化の中心となっている。「北信」と呼ばれる県北部に位置しているが、長野新幹線の開通により、東京からは最短で1時間25分でのアクセスが可能となった。街の周囲を千曲川が流れ、川沿いに発達した平野を取り巻くように山間部がそびえているため、さわやかな高原性の気候に恵まれた土地である。
 財団法人長野市保健医療公社長野市民病院はリンゴ畑が広がる千曲川のほとりに、1995年6月、6診療科150床で開院した。その後、300床に増床し、さらに2008年4月には22診療科400床となった。開院以来、来院患者数は増加を続け、約57万人の長野医療圏と約10万人の北信医療圏を対象とした地域の中核病院としての存在感を高めている。
 2007年にはがん診療連携拠点病院に指定されるなど、特にがん診療では長野県内有数の症例数を誇る。
今回は竹前紀樹病院長と宗像康博副院長にお話を伺った。


◆ 竹前 紀樹 病院長 プロフィール

1947年に長野市に生まれる。1971年に信州大学を卒業後、信州大学第一外科に入局し、昭和伊南総合病院脳神経外科、信州大学麻酔科で研修を行った後、伊那中央病院外科などに勤務する。1976年に脳血管研究所美原記念病院脳神経外科に勤務する。1978年に信州大学医学部脳神経外科を経て、相澤病院脳神経外科に医長として赴任する。1981年にカリフォルニア大学サンディエゴ校脳神経外科に留学する。1983年に信州大学脳神経外科助手を経て、1989年に信州大学医学部脳神経外科学講師、救急部講師に就任する。1993年に信州大学助教授に就任を経て、長野市民病院に副院長として着任する。2007年に病院長に就任する。また兼任として1999年に信州大学医学部脳神経外科学臨床教授に就任し、2001年に信州大学医学部救急集中治療医学非常勤講師に就任する。
日本脳神経外科学会専門医・評議員、日本脳卒中学会専門医、日本救急医学会専門医、日本集中治療学会専門医、日本頭痛学会専門医・評議員など。

◆ 宗像 康博 副院長 プロフィール

1954年に大阪府吹田市で生まれ、堺市で育つ。1979年に信州大学を卒業後、信州大学第一外科に入局する。1980年に昭和伊南総合病院を経て、1982年に篠ノ井総合病院、1983年に市立大町総合病院に勤務する。
1989年に国立東信病院(現 国立病院機構長野病院)に勤務する。1992年に豊科赤十字病院に勤務を経て、1995年に長野市民病院に着任する。
2007年に副院長に就任する。
日本外科学会指導医・専門医、日本消化器外科学会指導医・専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医など。

  <病院の沿革>

 1976年に長野市が市制80周年記念事業の選定を行った際、市民からの要望の第一位が「市民総合病院」の建設であった。そこで1977年に長野市医療施設整備協議会が設置され、病院の開設が本格的に始動する。1979年の市民病院建設基金条例の制定や1990年の長野市公的医療施設基本構想検討委員会の設置を経て、1991年にいよいよ長野市民病院の開院が許可され、同時に財団法人長野市保健医療公社が設立された。これにより長野市は病院の運営を公社に委託する形となる。このような公設民営方式は当時、全国でも珍しく、市民の視点に立ち、民間の感覚を取り入れることで合理的な運営を行うことが期待された。
 そして長野市富竹に場所を得て、1995年1月に竣工が始まり、同年6月に6診療科150床で開院となった。竹前病院長は開院前から準備のために着任していたという。
 「市民の皆さんからの熱い要望を受けて開院した病院です。初代病院長の古田先生が信州大学の内科の教授でいらっしゃったこともあり、開院当時は大学との太いパイプがありました。当時、30代後半の働き盛りのメンバーが集まり、いい雰囲気でスタートしましたね。」

  当初から300床の病院として計画されていたので、徐々に診療科を増やし、1997年に16診療科300床を達成する。その後、外来・手術部門などの増改築工事を行い、2003年には21診療科400床が認可された。2003年はこのほか、日本医療機能評価機構による病院機能評価の認定を受け、開放型病床を開始し、臨床研修病院の指定も受けるなど、飛躍の一年となった。
 2006年には指定管理者制度が始まり、5年間は独立採算制に移行することになる。またDPCを導入し、7:1看護基準を取得する。
 さらに竹前病院長が「病院の歴史のエポック」とするのが、2007年の地域がん診療連携拠点病院の指定である。
 「がんや脳卒中では長野県内トップクラスの実績です。開院当時、30代後半だった医師たちがキャリアを積み、中堅どころになって、質の高い診療をしてきたことが地域の皆さんに支持され、この指定につながったのだと嬉しく思っています。」

 2008年4月から「長野市民病院救急センター」を開設し、24時間365日の救急診療を行えるようになったほか、長野赤十字病院内に設置されていた長野市急病センターの機能が救急センター内に移転し、「長野市民病院・医師会急病センター」として初期救急診療を 行うようになった。長野市医師会の医師が内科・小児科系は毎日夜7時から翌朝6時まで、外科系は夜7時から11時まで担当し、長野市民病院の医師はそのコンサルトなどを担当している。

 また救急センターに先駆けて、2007年には第二外来、外来化学療法センター、健診センター、内視鏡・超音波センターなどが拡充され、医療機器は県内有数のシステムを完備した。
  「現在は外来の患者さんを抑制し、入院の患者さんを重視しています。入院の4割ががんの患者さんですので、高い割合と言えますね。がん診療に加えて、脳卒中や救急にも集中投資を実施し、治療実績を積み上げ、競争力のある急性期病院でありたいと思っています。」

  <病院の特徴>

1. 消化器科

 数年前から内視鏡検査室のキャパシティが限界となりつつあったため、2007年に新しく内視鏡・超音波センターを新築移転したところである。新しい検査室はプライバシーとアメニティーに配慮したゆとりある設計で、内視鏡機器も最先端の設備となっている。
  長野市民病院では早期がんの内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)を早い時期から導入しており、2006年度はESDを早期食道がん14例、早期胃がん74例に行った。またEUS-FNAは16例に施行し、良好な成績を収めた。一方で内視鏡検査数も7449例、ESDを含む治療内視鏡数も655例に達している。
 宗像副院長は話す。
 「私どもには職住近接のメリットがあります。都会の方の通勤時間が勉強に充てられるわけですから、カンファレンスも熱心ですね。消化器科では水曜の夜に2時間近くの内視鏡カンファレンスを行っています。その成果が学術面でも発揮され、消化器疾患全般に関して学会や研究会で年間約25回の発表を行っていますし、論文投稿も約10編と活発ですね。特に膵胆道疾患の診断治療に関しては全国で高い評価を受けています。今後は特にラジオ波治療をはじめとする肝臓がん治療を任せられる方に来ていただいて、肝臓部門のレベルアップを図りたいと考えています。」

 

2. 消化器外科

 宗像副院長がリードしてきたのが消化器外科で、現在は常勤医師9人、非常勤医師2人と充実したメンバーが揃う。手術や治療の特徴として、腹腔(胸腔)鏡下手術を柱の一つとし、根治性を下げずに、低侵襲で効果的な治療を行っていることが挙げられる。
 消化器がんに対する腹腔(胸腔)鏡下手術は食道がん、胃がん、大腸がんを中心に行っており、早期胃がんに対する腹腔鏡下幽門側胃切除術(D1+α、β)は200例以上、腹腔鏡下噴門側胃切除(空腸嚢間置再建)、腹腔鏡下胃全摘術(Rous-Y再建)が50例以上となっており、読売新聞社の「病院の実力2008」によると長野県では1位、全国でも屈指の実績を上げている。
 また、「病院の実力2008」では大腸がんにおける腹腔鏡手術の実績は400例を超えており、長野県1位、肝臓がん治療で長野県2位、食道がん手術で長野県3位、肺がん手術でも長野県3位という実績も紹介されている。
 宗像副院長は「私どもでは手術室を利用した手術件数は年間3100例です。信州大学附属病院や長野赤十字病院が700床規模ですから、病床数からすれば私どもの件数は多いですね。そしてこのうち2111例が全身麻酔ですから、高い割合といえるのではないでしょうか」と話す。

 一方、根治が不可能な症例については化学療法を実施し、外来化学療法センターも完備している。緩和医療も早くから導入し、南病棟2階に専用のスペースを設置している。

 消化器外科では毎朝8時30分からカンファレンスを行い、週に1回は術前検討会を行っているほか、内科外科の合同症例検討会も活発に行われている。
 宗像副院長のみならず、林医師も日本内視鏡外科学会技術認定医の資格を持ち、腹腔鏡手術などの指導、監督にあたっていることも高いクオリティを維持している所以であろう。信州大学をはじめ、多くの外科医が研修に訪れているという。後期研修医も腹腔鏡下胆嚢摘出術(ラパコレ)を術者として行い、指導医が助手につくなど、実践的な教育を行う。
 「隔週で腹腔鏡手術のビデオカンファレンスも行っています。未編集のビデオを見て、具体的な技術指導をしていますので、熱心に取り組めば早く上達できる環境です。手に職を持つという意義を若い先生方にも納得していただけるでしょう。」

 

3. 整形外科

 特色としては、関節外科だけでなく、鏡視下手術を取り入れ、手根管症候群には鏡視下手根管開放術、腰椎椎間板ヘルニアには鏡視下ヘルニア摘出術を施行していることである。ほかに脊椎脊髄疾患、股膝関節症、慢性関節リウマチ、手の疾患、マイクロサージャリーなどの実績も多い。手の外科手術に関しては年間354例と長野県一の件数を誇っている。また早期の社会復帰と合併症の予防のために、術後の早期離床とリハビリテーションを積極的に行っている。

 

4. 脳神経外科

 竹前病院長が現在も統括科長を兼任し、そのほか3人の常勤医師と信州大学脳神経外科の非常勤医師で診療を行っている。2006年の年間入院患者数は449人で、手術件数は160件であり、開院以来のいわゆる大手術の件数は822件となっている。このうち脳動脈瘤が290件、脳腫瘍301件、脳梗塞に対する頭蓋内血管吻合術・頸動脈内膜剥離術75件、脳出血80件などとなっている。
 2005年からは脳梗塞発症3時間以内の患者さんに対しては、神経内科と協力し、急性期血栓溶解剤(t-PA)による治療を行っているが、いずれも良好な成績を得ているという。
 脳腫瘍では下垂体腫瘍、髄膜腫、聴神経腫瘍などの良性腫瘍に対して療害を残さないように摘出術を行い、神経膠腫には手術、放射線療法、化学療法を組み合わせた治療も行っている。
 竹前病院長は話す。
 「専門は脳腫瘍、脳血管障害の外科、顔面痙攣、三叉神経痛の手術などでしたが、今は病院長職と兼ねていますので、片頭痛などの頭痛や顔面痙攣、三叉神経痛、突発性正常圧水頭症の診察などが中心です。また大屋科長は長野県内に3人しかいない脳血管内治療の専門医ですし、柿澤科長は信州大学で長く脳腫瘍の手術にあたり、脳神経の微小解剖学の専門家でもあります。充実したメンバーが揃いましたので、今後は神経内科とのセンター化も視野に入れて、注力していきたい診療科の一つです。」

 

5. 泌尿器科

 2006年度の統計によると、長野市内からの患者さんは50%にとどまり、45%が長野市以外の長野県内から、また5%が新潟県、山梨県、静岡県をはじめとする県外からというように、最も広い範囲から集患しているのが泌尿器科である。特筆すべきは2006年度の前立腺全摘除手術数が65例であることだろう。この件数は「週刊朝日」の「いい病院2008」で全国22位に入っている。また早い時期からのクリティカルパスの導入が功を奏し、「サンデー毎日」の調査では術後平均在院日数は8.4日と全国最短日数を達成したという。
 2004年からは早期前立腺がんの治療手段として、岡根谷副院長を中心に埋め込み型密封小線源(ヨード125による内照射)による治療を開始した。2007年6月時点では日本国内で稼働しているのは72施設に過ぎず、長野市民病院は甲信越地方で唯一の施設となっている。2007年8月までに288例の治療を行ったが、これは全国2位という実績となっている。
 腹腔鏡手術は副腎、腎、腎尿管などに対して行い、これらも長野県内最多の症例数である。
  竹前病院長も「尿路結石に対してはシーメンス社の最新式の機種で治療していますし、他施設ではあまり普及していない尿管鏡を用いた破砕も行うなど、積極的に取り組んでいる診療科です。県外からの患者さんも多い科ですが、救急の泌尿器科疾患や外傷にも早急に対応しているため地域からの要請も強くなっています。今後も専門医に来ていただいて、さらに充実させていきたいですね」と話している。

 <運営・経営方針>

1. 地域医療連携室

 地域医療連携室は平井一也副院長が担当しており、紹介・逆紹介、退院調整、在宅支援、医療相談、連携パスの5本柱を業務の中心に据え、「顔の見える連携」を実践中である。数年前から特別連携予約枠を設け、各診療所へのアプローチが欠かせないため、その専従のスタッフも在籍する。ほかに診療所を循環するスタッフ、病棟看護師と連携を取って、退院調整を行う後方連携のスタッフなど計12人という厚い陣容で地域連携を推進している。2008年8月の紹介率は52%と高い水準にあり、地域医療支援病院の取得も視野に入れる。
 竹前病院長は話す。
 「紹介率はまだ上昇の余地がありますね。急性期病院がstand aloneでいることはできません。地域連携を進めることで、患者さんからも地域の医療機関からも信頼される病院になっていけるのではないでしょうか。幸い、私どもは地域の医療機関の方々やそのご家族の皆さんの来院や入院が多く、高い評価をいただいているものと自負しています。」

 

2. 健診センター

 全国的に健診専従の医師が確保できない状況が続いているが、長野市民病院では専従の医師が1人在籍している。そのため一日総合健診コースと子宮頚がん・乳房がん検査が付いた一日総合健診コースに合わせて1日約20人の受診があるという。このほかマンモグラフィや腫瘍マーカー、感染症、動脈硬化検査などのオプション検査も好評である。竹前病院長は「健診センターの収益増は事業戦略の一つでもあります。専従の医師を増やして、4年後には1日50人を目指したいですね」と期待を寄せている。

  <今後の展開>

 今後の展開について、竹前病院長に伺った。
 「これまではがん診療の充実に心血を注いできましたが、これからは地域の高齢化もますます進みますので、救急を発展させていきたいと考えています。実際に救急はここ10年で6割の伸びをみせていますし、今後も地域のニーズは高まりそうです。この地域の高度救命救急は長野赤十字病院が担っていますが、私どもでもミニ救命救急センターを目指して、取り組んでいきたいと思っています。」

  <メッセージ>

竹前:大部屋の医局ですので、科目間の垣根が低く、良い雰囲気が広がっています。私どもと一緒に働くことで、若い先生方には十分な経験が積んでいただけることと思います。後期研修医に関しては医師研究資金制度も完備しています。特に女性医師の支援については当直を免除したり、フレキシブルな勤務体制が可能ですし、男性であっても2年などの有期契約もご相談に応じます。それから山やスキーなど、リゾート地としても恵まれていますよ(笑)。病院内にはスノーボード部もありますし、都会で疲れた方、癒されたい方には最適な環境ではないでしょうか。

宗像:手術がうまくなりたい方においでいただきたいですね。施設はもちろんですが、腕のよい外科医になれる教育環境が整っています。病院長も申しましたように、自然環境の良さも自慢です。是非、一度、見学にいらしてください。

  <理念>

私ども職員は、患者・市民の皆さまと手を携え、地域に開かれた病院としての医療を実践します
1. 命のいとおしさを大切に、人間味あふれる医療を提供します
2. 医療水準の向上に努め、高度で良質、安全な医療を提供します
3. 個人の人権と意思を尊重し、情報の開示、説明と同意を基本とする医療を提供します
4. 地域の保健、医療、福祉機関等との機能分担に配慮し、円滑な連携を図ります

  <アクセス>


長野電鉄 長野線 柳原 駅より 徒歩15分
長野駅からバスで40分というルートもありますが、バスの本数に限りがあります。

  <アクセス補足>

JR信越線 三才駅から長野電鉄バス三才線 長野市民病院前下車
JR信越線 長野駅から長野電鉄バス平林線 長野市民病院前下車

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2008.11.01 掲載 (C)LinkStaff

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