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良質で安全、安心な医療を
舞鶴共済病院

 京都府舞鶴市は穏やかな舞鶴湾に面し、日本海側唯一の軍港があったために明治から終戦まで軍都としての賑わいをみせた街である。戦後は引き揚げ船に乗った66万人もの日本人が舞鶴で帰国の第一歩を踏みしめた。現在も京都府北部の行政や経済の中心都市として、また「赤れんがのまち」として知られる観光都市として発展を続けている。
 舞鶴共済病院は100年を超える歴史を有し、現在は17診療科、320床を持つ中核病院である。特に循環器科、産婦人科の充実は目覚しく、多くの症例、分娩数を誇っている。
 今回は多々見良三院長にお話を伺ってきた。

◆ 多々見 良三 院長プロフィール

1950年に石川県河北郡高松町(現かほく市)に生まれる。1976年に金沢大学医学部を卒業後、第二内科に入局し、脂質代謝の研究を行う。1982年に舞鶴共済病院に内科医員として赴任し、1983年に循環器科医長を経て、1998年に循環器科部長に就任する。2003年に診療部長、2004年に副院長を経て、2005年に病院長に就任する。また2004年には第4回日本心血管カテーテル治療学会学術集会の会長を務める。2007年から金沢大学医学部臨床教授、2008年から福井大学医学部非常勤講師を兼任している。
日本循環器学会認定循環器専門医、日本心血管カテーテル治療学会指導医、日本内科学会認定内科医。

  <病院の沿革>

 リアス式海岸で知られる舞鶴湾は湾口が狭く、湾内の波が穏やかであることから、防御に適し、多くの艦船が停泊できるなどの条件を備えた、軍港にふさわしい地形であった。このため1896年(明治19年)に臨時海軍建築支部が設置され、1901年の舞鶴鎮守府の開庁につながっていく。以後、舞鶴は「海軍の街」として発展を遂げ、海軍の諸施設が多数建設された。海軍工廠もその一つで、そこに勤務する職工やその家族のために1907年に開設された舞鶴海軍工廠職工共済会病院が現在の舞鶴共済病院の前身である。
 「昨年、創立100周年を迎えました。開設当初は海軍工廠の職工さんと家族のためだけのクローズドな病院でしたが、西舞鶴、中舞鶴のほか、粟田、橋立、余部などにも分院を持っていました。私どもの歴史の中で開設から終戦までを第一期として捉えるなら、第一期はまさに戦争の世界をくぐってきた40年と言えるでしょう。」

 戦後、海軍省の解体を受けて、財団法人共済協会に移管され、舞鶴共済病院として一般市民を対象にした診療を開始する。さらに1950年に旧令年金特別措置法の制定により、共済協会が解散し、非現業共済組合連合会が新しい経営母体となった。
 「そこから税金の補填を受けない、独立採算制の準公的病院として第二期の歴史が始まったんですね。しかし新体制になってすぐに医師不足となり、存亡の危機に陥ったんです。そこで金沢大学のバックアップがあり、混沌の第二期を乗り切ることができました。」

 1960年代は整形外科、泌尿器科など全国的に専門分化が進んだ時代であるが、舞鶴共済病院でもその流れに乗って、次々に診療科目の増設を行った。
 そして1975年に松本禮二院長が着任し、病院の現代化が進められるのが第三期である。エコーやCTなどの高度医療機器が導入されたことで医療レベルが高くなったため、古い建物では対処できなくなった。そこで1982年に現在の本館が新築され、カテーテル室も新設された。
 「当時の内科医長(石瀬前病院長)の専門が循環器だったこともあり、病院として循環器疾患に力を入れたいという意向がありました。私が着任したのはカテーテル室の完成とほぼ同時期でした。私はそれまで高脂血症などの脂質代謝を研究していましたが、いきなり循環器をやれと言われたんです。研修は小倉記念病院に行き、延吉正清先生の心臓カテーテル手技を5日間見学しただけでした(笑)。それから26年で38000件のカテーテル検査を行ってきましたよ。」

 1994年には新館が完成し、10床のCCU/ICUに加え、大型の手術室をはじめ、バイオクリーンルームなど7室の手術室を完備した。さらにカテーテル室もCCU/ICU室の隣に移転した。
 「1982年の本館建設は当時の医療レベルに何とか追いついていこうとする付け焼刃的な面も多少あったのですが、1994年の新館建設は先を考えた設計になっていまして、今も見学の方がいらっしゃいますよ。カテ室は放射線を出すので中央管理が必要なため、CCU/ICUの隣に設置されることは非常に珍しいんですね。しかし私どもでは仕事の能率を向上させるために3階のワンフロアに病床も含めて、集約させています。」

 2000年には介護老人保健施設すこやかの森を開設し、介護にも裾野を広げている。今後も地域との連携を強化し、新しい歴史を作っていくだろう。

  <病院の特徴>

◆ 循環器科

 多々見院長が長く現場をリードしてきたのが循環器科であり、心臓血管外科とともに「成人において心臓移植以外の全ての心疾患が治療できる」と舞鶴共済病院の大きな柱の一つとなっている。
 カテーテル検査は2006年度は2173件であり、このうち28%が他院からの紹介であるという。検査の内訳は冠動脈造影検査1,598件、カテーテルインターベンション530件、カテーテルアブレーション30件、動脈形成術15件となっている。
 メンバーは6人と充実の陣容で、「safety、speedy、simple」の「3S」を診療方針に据えている。この「3S」を日本心血管カテーテル治療学会で提唱したのが多々見院長であり、いまや全国の循環器治療における診療方針として浸透している。
 「小倉記念病院の延吉先生もおっしゃっていますが、早く治療することがリスクの軽減になるのです。必要なポイントを掴んで、さらりと終えないといけません。私どもでは40分程度で全ての行程を終了できています。これは経験した症例数が十分で、技量を持った医師が揃っているからこそだと思いますね。」

カテーテル以外でも、両室ペースメーカーの植え込み例、下肢動脈形成術例などが上昇しているなど、新しい手技も積極的に行っている。
 「今後は末梢血管病変などへのカテーテル治療や、脳神経外科のバックアップを受けながら、脳血管領域へのカテーテル治療も積極的に行い、技術水準を安定したものにしていきたいですね。」

 またモービルCCUの存在も特筆すべきであろう。基本的には京都北部を中心に半径約50kmの診療エリア内での運行であるが、ときには福井県や京都市との中間である南丹まで要請に応え、出動している。内部は一般的な救急車を改造し、人工呼吸器や大動脈バルーンパンピングなどの治療機器を搭載し、搬送中に心筋梗塞、狭心症、大動脈乖離、重症不整脈などの治療を行える。
 運行に関しては、昼間は病院の運転スタッフ、夜間は契約したタクシー会社の運転手が運転を務め、循環器科やCCU/ICUの看護師が同乗する。
 開始以来、4年が経過したところであるが、現在は平均して月10件の実績であり、三分のニが緊急性のあるもの、残りが緊急性のないものといった内訳となっている。
  「せっかくハイレベルな治療を行っているのですから、これを舞鶴地区だけで完結してしまうのはもったいないと思い、モービルCCUの導入に踏み切りました。この運用にはリーダーの思いと周囲のサポートが必要です。大学病院のような大きな病院ですと、どうしても縦割りの弊害などが出てきますが、私どもぐらいの規模ですとリーダーの熱い思いが皆に伝わりやすいんですね。皆の手厚いサポートがあるからこそ、順調に運用できていると思います。」  


◆ 心臓血管外科

 狭心症、心筋梗塞に対する冠動脈バイパス術、弁疾患に対する弁置換術などの心臓手術にとどまらず、胸部・腹部大動脈瘤への人工血管置換術や末梢血管バイパス手術など、京都府北部や周辺地域で可能な唯一の施設となっている。
 多々見院長は「ピンチがチャンスに変わった」と振り返る。昨年、金沢大学が医師の引き揚げを行い、ピンチになっていたところに、京都府立医科大学からスタッフの派遣が決定された。これも循環器科が充実し、地域からの信頼を勝ち得ていたことの証左であろう。以来、開心術の症例が右肩上がりで上昇を続け、年間100例を超える見込みであるという。
 「松下心臓外科部長も増田血管外科部長も非常に優れた技量を持っていますし、府立医大出身ですから連携先の病院とも同門ということが多く、スムーズな連携が取れています。循環器科とのチーム医療も進み、ハイボリュームのセンターになってきましたので、さらに地域からの要請に応えていきたいですね。」


◆ 泌尿器科

 舞鶴共済病院は京都府北部地域では最も多いがんの治療件数を誇り、がん診療連携拠点病院の指定を目指している。中でも多々見院長が期待を寄せているのが泌尿器科のがん治療である。2006年度の手術件数は前立腺がんで21例、膀胱がんで4例であった。副腎腫瘍では腹腔鏡を取り入れているため、2時間で施行可能であるという。尿路結石や婦人科とのチーム医療による腹圧性尿失禁に対する尿道固定術などの症例も多い。
 診療部長を兼任している布施部長が得意としているのが腎がん手術で、ミニマム創法を取り入れている。これは創部を約10cmと小さくすることで、創部痛を軽減できるものだ。また膀胱がんでも、内視鏡手術で不可能なものは膀胱全摘除術を行い、尿路変更として腸管を利用した自排尿型新膀胱を作成するなど、高度先進治療に積極的である。
  「また私どもは京都府北部で最も大きな透析施設です。現在、透析用のベッドを29床備えています。透析穿刺など、看護師や臨床工学技士といったコメディカルとの連携もスムーズですよ。」


◆ 産婦人科

 2006年8月に京都府で唯一、WHOとユニセフによる「赤ちゃんにやさしい病院」の認定を受けた。認定の理由の一つには舞鶴共済病院が長年に渡って取り組んできた母乳育児の推進が挙げられる。助産師による母親学級には父親も参加するなど、レクチャーを通じて地域を啓蒙してきたことも大きいが、特に力を入れてきたのがカンガルーケアであろう。これは正常分娩で母子ともに異常が認められなければ、分娩直後に新生児をうつ伏せにして、母親に抱かせ、介助のもとで30分以内に初回授乳を行うというものだ。肌が触れ合うことで体温も下がらず、父親や家族とともに出産の喜びを分かちあえることも好評である。
 また1994年から母子同室を開始した。これにより、母親と新生児のリズムが合いやすくなり、退院後の生活にもスムーズに入れるようになったという。さらに、退院後に母乳不足感からミルクを補充するケースへの取り組みとして、母乳外来を開設し、退院後のフォローを行っている。

 舞鶴共済病院では1945年に助産婦養成所を開校するなど、助産師の育成に歴史を持っている。現在も15人の助産師が在籍し、年間700例にも及ぶ分娩をフォローする。
 「地道に頑張っている病院にはスタッフが集まるものです。スタッフも母子のつながりの大切さを十分に認識しています。3人の常勤医は全て女性で、本当に立派な仕事ぶりですよ。『赤ちゃんにやさしい病院』は産婦人科、小児科をはじめ、病院全体での取り組みが評価されたと嬉しく思っています。」

 一方、婦人科領域では子宮がん、卵巣がんの化学療法を行うほか、無月経などのホルモン療法や更年期障害、不妊治療などにも意欲的に取り組んでいる。

 <運営・経営方針>

◆ 経営方針

 舞鶴共済病院では最新、最先端の医療機器を導入し、高度医療の充実に傾注している。市立舞鶴市民病院から脳神経外科や歯科口腔外科が移管されたこともあり、画像診断の必要性がより高くなってきたため、このほど1.5テスラのMRIを購入した。
 「今までも1.5テスラを使ってきたのですが、これまでのをクラウンだとすれば、新しいMRIはベンツですね(笑)。磁場の均一度が高く、静かな音で広範囲に撮れます。このほかCTやエコーも最新型を導入しています。」

 さらに多々見院長が「医師にとって最高のプレゼント」と称しているのが、優秀なコメディカルスタッフである。
 「技術的にも優秀ですし、アットホームで協力的なスタッフが揃っています。私はいつも『あなた方は限りなくドクター化してくれ』と話しています。医師のライセンスがなければできないことはともかく、『自由裁量でやっていいよ』と任せることも多いです。人は頼りにされると、レベルアップするものです。高いレベルであるからこそ『先生、おかしいよ』とダブルチェックが可能になっているんですね。」

 また全職員のモチベーション向上を狙いとして、部門別に「年間最優秀賞」を設けることになった。2008年度に新たに始まった企画で、医師であれば論文、学会発表などをスコア化し、適切に評価するというものである。


◆ 健康診断検査センター

 健康診断検査センターでは、外来1日人間ドック、心臓ドック、脳ドック、肺ドックを完備し、地域の健康増進をサポートしている。
 「ヘリカルCTも導入しましたし、肺がんを人間ドックで治療することも可能です。経営ビジョンの一つではありますし、力を入れたいのですが、今は病気の患者さんの方にパワーをシフトせざるをえない状況です。今後、リタイアした医師に声をかけ、2、3名体制に組み直していく予定になっています。」


◆ 地域連携

 地域医療支援病院の取得へ向け、プロジェクトチームが様々な取り組みを行っている。取り組みの前段階として、チームメンバーが各部署に説明を行い、患者さんや他の医療施設に対し、ポスター、地域医療マップなどを用いて広報したという。2007年からは患者さんからの相談や説明窓口としてサポートデスクを設置し、逆紹介の取り組みが本格化した。
 「私が診療部長時代に10%しかなかった紹介率も今や45%です。役割分担についての患者さんへの教育や開業医の先生方との研究会などの取り組みが功を奏したようですね。今後は60%を目標に、特定療養費を上げることなどの構想を練っています。最後の砦としての急性期病院の位置づけをさらに明確にしていきたいと考えています。」

  <今後の展開>

 新病棟を建設予定で、舞鶴市の「舞鶴地域医療あり方検討委員会」でコンセンサスを得られる努力をしています。現在の病棟は個室率が低いのですが、新病棟では個室が3分の1になります。そして50床を増床し、脳神経外科を充実させます。医局は海を見渡せるワンフロアで、秘書も常駐する予定です。こうして中核病院としての規模を整え、地域医療支援病院、がん診療連携拠点病院の認可の取得を目指したいですね。

  <メッセージ>

 福井大学で、循環器科の臨床講義を行っています。そこで「医師になって20年間は12時前に帰ったことがなかった。5時半に帰ろうと思うような人は医師になる資格はない」と言っています。私はそういう「熱い」気持ちを持っています。
  若い医師にとって魅力ある病院とは、適切な指導者がいることと指導者が指導しうる症例数の確保に尽きるのではないでしょうか。田舎だから医師不足というのはないはずです。私どもで修行した医師を「舞鶴育ちだから」とお招きくださる病院もあります。今後もそういう「舞鶴印」の証明書を発行できるような医師の教育にあたっていきたいと思っています。

  <病院の理念>

理念
「当院は患者様に良質で安心していただける医療を提供いたします。」
基本方針
1.良質で安全な医療
私達は安全で質の高い医療をめざし患者様の信頼を得るように全力を尽くします。
2.患者様を中心とした医療
私達は患者様の人格・権利を尊重し充分な説明を行うとともに患者様の了解のもとに医療を行います。
3.地域との積極的な連携
私達は地域の医療ニーズに応え地域と密接な連携を大切にいたします。

  <アクセス>


JR舞鶴線 東舞鶴駅 徒歩3分

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2008.08.01 掲載 (C)LinkStaff

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